熊野古道(中辺路)


三谷

熊野古道(中辺路)
月日:11月2日(木・夜)~11月5日(日)
参加者:横山、吉村、松林

高野山と並んで日本の聖地とされる熊野三山を巡礼した。今回は、熊野参詣道の一つ中辺路(那智~熊野本宮大社約42km)を歩いた。この参詣道は、ユネスコ世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」に指定されている。

11/2夜、吉村号にて広島を出発し、福石PAで仮眠をとる。翌朝、三木SAで明石へ出向中の松林くんと合流して和歌山方面に向う。
出発点が本州最南端とあって、ほぼ信州に行くくらいの距離感である。しかし、紀伊の海岸沿いの景色は変化に富んでいておもしろい。瀬戸内の穏やかな海岸線と違い、起伏があり荒々しいリアス式海岸である。せり出した奇岩(橋杭岩)が立ち並ぶ。水平線も見渡せる。
クジラの伝統的な追い込み漁が行なわれる太地(たいじ)を過ぎて、那智勝浦へ入る。
無事参拝が終わったら、クジラとマグロを食べることを誓う。
那智道の駅に車を停めさせてもらい、出発の準備を進める。長距離を歩くために、極力無駄を省いて軽量化した。
那智道の駅を起点として、まずは補陀洛山寺へ向かう。その後、道端のお地蔵さんを見ながらしばらく車道を歩く。神社、王子、歴史的人物の供養塔が点在する。
それにしても11月とは思えない暑さである。いつの間にか、みんなTシャツで歩いている。
続く那智大社へ続く大門坂は、昔の参詣道の姿を残す石畳。大門坂入口まで車の乗り入れができ、観光客も多い。しかし、散歩感覚で歩くには厳しい坂だ。夫婦杉を通り過ぎて、巨木の立ち並ぶ石畳の道を歩く。
坂を登りきると、ご神体である那智の大滝(落差133m)が見えて来た。三重塔の奥にしめ縄のかかった大滝、ここから先が聖域となる。滝の奥には手付かずの自然が残されている。もっと大滝に近づきたかったが、時間の都合上、三重塔からご神体を眺めるにとどめた。
いよいよ人里離れて、熊野参詣道最大の難所とされる大取雲越へと入っていく。ミシュラン・グリーンガイド★★★「わざわざ旅行する価値がある」とあって、外国人のトレッカーが多い。今回は、ドイツからの来訪者が多かったように思う。早朝小口を出発すると、一日で那智にたどり着くはずである。静かな針葉樹の森の中、苔に覆われた石畳の坂が続く。
舟見峠では遠く那智の海を一望できる。間もなく日没となる。まだ先は長いが、ここまでよく歩いたものだ。
所々石畳が崩れてガレた道になるが、おおむね足に優しく、さほど疲れは感じない。

大雲取越
大雲取越

舗装された林道に出たところで日が暮れる。ヘッドライトの明かりを頼りに、しばらく林道を歩く。程なくして自動販売機の明かりが見えてきた。
ほぼ予定通り、地蔵茶屋跡に到着。ここで一夜を過ごすことにする。トイレ、東屋、自動販売機が設置されている。水はトイレの水道があるが、沢から汲むことができる。
さらに立派な休憩所があり、土間に無垢材のテーブルが据えてあり、床の間のある小上がりがある。炊事場もある。若い男女が東屋で炊事していた。ドイツから来たそうだ。出発点は同じく那智。
今回は精進の旅なので、晩ごはんは、わかめご飯、きんぴら、豆ひじき、高野豆腐(高野山で製造される凍り豆腐(こおりどうふ)が、精進料理の1つとして全国に広まったものとされる)の精進料理。薄味だったが、美味しくいただいた。たまには質素な料理も良い。寝不足なので、早めに就寝する。

11/4、暗いうちに出発する。土石流により石倉峠手前の石畳道の一部が崩壊している。台風21号による影響である。支沢から土石流が発生したようだ。倒木があるが、なんとか通ることができる。
昨日からの最大の難所は越えたものの、今日は長丁場である。いくつかの峠を越えて、途中唯一の集落である小口に降りる。廃校となった建物やグランドを宿泊用に開放されている。海外からの来訪者に配慮して英語の案内が見られる。
再び古道へ。次は小雲取越に入る。峠には茶屋や宿場跡が見られておもしろい。百間ぐらでは、山、山、山、見渡す限り山である。
いくつもの峠を越えて請川に降り立つと、熊野川の広大な河原を目にする。ここが神が降臨する場所とされる。請川からしばらく国道沿いを歩く。
本宮大社へ近づくにつれ、疲れを感じるどころか、力がみなぎってくる。パワースポットというのは、旅の過程においてパワーを実感できるように思う。
本宮跡大斎原の大鳥居に圧倒されながら、現在の本宮大社へと参拝する。もともと熊野川の中州にあった本宮は、明治の水害でほとんどが流出してしまったということである。
那智大社とは違う古式の檜皮葺きの社殿は荘厳。長かった旅の終わりに喜びをかみしめる。
<熊野本宮大社>
参拝を終えて、バスの時間まで、世界遺産センターの展示物を見学する。新宮行きのバスに1時間揺られ、さらに那智勝浦行きに乗り換えて、無事道の駅に到着。
まずは晩ごはんの買い出しに最寄りのAコープへ。熊野牛、クジラ、マグロなどを調達する。
道の駅のお風呂に入って、海浜公園に向う。寒気が入って風が冷たい。那智の海に浮かぶ満月がきれいだった。
自転車のイベント前夜にあちこちで宴会が始まっていた。われわれもその中にテントを張って打ち上げをする。ささやかな贅沢、ご当地グルメを味わう。疲れた体に酔いが回って、早々の就寝となる。

11/5、神倉神社を参拝することにする。鳥居をくぐると、とんでもなく急な階段が続いている。どうやら、山頂付近に目的の神社があるようだ。しばし筋肉痛に耐えて登る。神倉神社のごとびき岩の前で朝日を浴びる。ご神体は神々しい輝きを放っていた。新宮の海が黄金色に輝く。早朝の参拝は気持ちが良い。熊野三山最後の速谷大社の参拝で熊野巡礼を締めくくった。

ごとびき岩
ごとびき岩

道の駅や物産館でお土産を買いながら、再び長い長い帰路につく。
熊野は聖地、浄土である。人生の終わりであり、始まりの場所。長年、多くの人々が聖地目指し険しい道を乗り越えて悟りを開き、祈ることによって救われるとされと信じられてきた。
自然への畏怖の念や独特の感性が日本人の心の原点。
無心になれる旅、熊野巡礼しかない。次は中辺路の残りと、小辺路を歩くのも良いだろう。
(記:三谷)

大斎原の大鳥居
大斎原の大鳥居

<コースタイム>
11/2 21:30広島東IC→23:30福石PA
11/3 福石PA5:30→6:10三木SA→9:40すさみ南IC→橋杭岩→11:00道の駅那智11:30→補陀洛山寺→12:20尼将軍供養塔→13:10大門坂入口→13:45熊野那智大社(青岸渡寺)14:25→14:55那智高原公園(→15:30登立茶屋跡→16:20舟見峠展望所→16:55色川辻→17:25林道合流→17:45地蔵茶屋跡
11/4 地蔵茶屋跡5:15→5:35石倉峠→6:15越前峠→7:30楠の久保旅籠跡→8:30小口→9:05小和瀬→10:25桜茶屋跡→11:15石堂茶屋跡→11:45林道交差→12:00百間ぐら→12:20万才峠分岐→13:30請川13:45→14:30大斎原→14:50熊野本宮大社本殿→15:10世界遺産センター16:10-(バス)→17:15JR新宮駅17:30-(バス)→18:10道の駅那智
11/5 道の駅那智→神倉神社→熊野速玉大社→広島
(記:松林)