三倉岳クライミング(上ノ岳右ルート)


松林

2022年11月6日(日) 係:松林

参加者:横山、吉村、堀田

<アルバム>

<行動記録>

この3日前に頼みの元廣さんを擁して上ノ岳で惨敗を喫した(詳細は11月3日の個人山行の記録を御覧ください)が、この日は5年前に元廣さんが登った際にフォロー(案内)していたはずの横山さんが頼みの綱だ。往路の車中でそのことを話すと「リードしてないけー、全く覚えとらん!」と、不安を増長させるような発言を喰らったが、取付きに着いて数分経って、「元廣さんが脚をプルプルさせながら登りよーったところじゃ。」とようやく思い出してくれた様子。

この日は4人でリードが1人なので、2ndに案内役の横山さん、3rdには堀田さんを配置して、4thの吉村さんをビレイしてもらう。持参ギアの説明が面倒だったので、とりあえず各自カム一式を持って来てもらい、#1サイズを中心に絞って持ち出す。

10時過ぎにスタート。取付きのスラブは寝ているようにも見えるのだが、最初の高さ3m程は急傾斜で支点が取れないこともあり、厳しい。グレードは5.5だが、5.7弱くらいに感じる(正しいルートを取れば5.5なのかもしれないが、正しいルートが不明)。直上後、右手にトラバースして細い立ち木にスリングを掛け、再び直上。巨大なブロック岩の左を登り、その先の立ち木を目指す。

この立ち木の先で支点が取り難いトラバースとなるので、立ち木でピッチを切って2ピッチ目とすべきらしいのだが、その案が頭に無く、10mも登ってないので切るのが惜しく、先へ延ばす。少し上方の細い立ち木にスリングを掛けてトラバース開始。手を右上クラックに掛けながら、カムをセットできたのは1ヶ所のみ。バランスを意識しながら慎重に進み、小突出し岩の下に入る。ここから小ハングなので、カムで支点を作ってピッチを切る。3rdの堀田さんはフォロワーでありながら、4thから見るとリードなので、バックロープにロープを掛けながら登ってくる。そして終了点に着くと休む間も無く4thのビレイ。ただ、4thの吉村さんが登るよりもリードの係が登るほうが遅いので、ゆっくり登ってもらっても構わなかったが。

2ピッチ目。小ハングにはハンガーボルトとハーケンがあり、恐らくここが5.10aの核心。だが全くもってフリーでは厳しく感じ、スリングアブミで越えようとするも、なかなか型が決まらず、工夫するのに時間が掛かった。しかししかし、一難去ってまた一難。今度は垂直に近い乗越しが現れ、ハイステップでカムを使っての慎重な登りを強いられる。棚の出っ張りに太腿を引っ掛けた後に慎重に立ち上がり、何とか核心を通過。

その後は階段状のカンテを登り、太い立ち木へ到着。次は薄被りのボルダチックな離陸で始まり、支点にヌンチャクを掛けた先はスラブのトラバース。ここが3ピッチ目の核心(5.10a)なのだろう。ホールド無しでこの斜面に足を乗せんにゃいけんのか?というところで、恐怖心とギア(ヌンチャク)が減って来ており先が読めないのを理由に、ロワーダウンして前述の立ち木まで戻りピッチを切る(結果10mちょっと)。

出直して3ピッチ目。先ほどのムーブを繰り返し、A0ではあるが、スラブのトラバースに成功。その先はすっきりしたフェースとなっており、直上後、後半は縦クラックから左の怪しいルンゼへor横クラックを伝って右手の終了点へ行くか?というところで後者を選び、強固な支点で一安心する(25m程度か?)。このフェースの途中で左のリッジを登って来る“前途洋々”と合流後、“前途洋々”は右へ、“右ルート”は左へ。と分かれるように描いてあるが、合流部も分岐部も全く分からず、そして正規ルートに沿っているかも分からなかった。

4ピッチ目。左上の斜度の強いフェースにハンガーボルトが1つ見えるが、無視して右手の見易い階段を登り、テラスに出る。下部を覗くと“三倉スピリッツ”や“岩ひば”沿いの顕著なリッジが見え、尾根が合わさる位置が近いことを把握する。が、未だ前述の分岐に辿り着いていないのでは?という疑念から左手の岩の更に左を覗いてみるが、ややこしそうだったので、直上する。次のテラスから細木の生えた緩いクラック沿いに登ると、右下からせり上がってくるリッジ上にボルトがあり、そこからリッジに乗り込んで中間ピークに到達。頼りない立ち木と浮いているように見える小岩しかなかったので、更に先でピッチを切りたかったが、ロープがあと5mだったので、太い木を求め、リッジを越してクライムダウンしてピッチを切る。

しかし低い地点からのビレイは厳しいので、ロープ末端を一度解除し、前述の中間ピークまで移動してビレイ。良く見ると足元にハーケンがあり、「これを使えば良かったのに」と残念。横山さんは登って来ると、前述の“浮いているように見える小岩”にスリングをかけてセルフビレイ。この中間ピークから南西側の岩稜に終了点が見えていたので、そちらが正規ルートでは?とも一度は考えたが、後で5年前の元廣さんの記録を読むと、今回のルートがほぼ合っていたのでは?とも思えた。

5ピッチ目。緩いリッジを伝ってギャップを越えた後、緩傾斜の広い一枚岩をペタペタ歩き、樹林帯の入口まで50m弱。「いよいよ頂上へ抜けるなー」という期待と、稜線沿いの花崗岩の造形美が合わさって爽快な気分になる。そして肩はカムの激重荷から解放(テープスリングの肩掛けには工夫が必要だ)。13:20ごろ4thの吉村さんが登り終え、登攀終了。堀田さんも、吉村さんの回収ギアを上に供給することを忘れず、役割を全うしてくれた。

装備解除後、頂上部の岩を包んだ樹林帯を進み、取り付きへ。青白ハング周辺ではJAC広島支部ユースクラブが大勢、と思ったら、「全国から支部メンバーを集めて4日間の集中クライミングをしている」とのことだった。

吉村さんは家の用事で帰宅。残り3人で、3日前に登った源助崩Ⅱ峰エリアへ。元廣さんおススメの“色は匂へと”(5.9)にトライする。源助東面だが上部で、Ⅱ峰前のテラスから近い。1~2ピン目辺りが下部の核心。リッジを登り、ドン突きの棚が上部の核心なのだが、「左手に見える終了点へ行く」との(係・堀田さんともに)勘違いから左の終了点を覗き、「難しそうだしクラックルート“暗夜行路”の終了点では?」との問いから、「上部の立ち木が終了点であると判明。」無駄に腕力を使い、更に棚に上がるムーブで悩み、ヌンチャクレストを2回喫した。結局、覚悟を決めて「このホールドとスタンスで登らんにゃいけんのか?」というムーブをすれば登れたのだが、「そういったムーブを強いられるのが5.9なので、僕は5.9をリードしないんですよ。」というのが堀田さんの見解とポリシーだった。

“色は匂へと”を3人登り終えると良い時間になったのでクライミングを終了し、源助崩東面側を偵察してみる。“ジェードルクラック”や“水晶クラック”など、見ごたえのあるクラックを初めて見て、三倉岳がクラックの殿堂である。と理解するに至った。クライミング11年目にして、自分は一体何者なのだろう?という疑問が湧いてしまった。

文:松林

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