個人山行・八甲田山岳スキー


吉岡 好英

期間:2024年2月8日~12日
参加者:宮本 (会員外:奈須、岩田)
今回の八甲田、不安要素が二つあった。一つ目は左回りで右の板(谷足)にうまく乗れない(体重をかけられない)。何故か今年になってからのことで、インソールを再調整してもあまり改善が見られなく、インソールを作り替えてみる。しばらくは良かったが、やはりうまく乗れない。残るは兼用靴を変えてみるしかないのでスキーなどの発送3日前、ネットで使っているものと同じ兼用靴を見つけて注文。発送前日に届いたが、試用できないので古いインナーシューズも一緒に発送。ぶっつけ本番しかない。
もう一つは平衡感覚に不安。視界が悪い中で滑走をストップしても、まだ動いているような感覚で転びそうになる。高齢になると仕方ないのかも。
八甲田で山岳スキーをするためには周回道路に公共交通がないのでガイドツアーに限られる。また限られたコース(フォレストコース、ダイレクトコース)以外は滑走禁止となっている。酸ヶ湯温泉のガイドツアーに申し込むと、山岳スキーツアースタート地の八甲田ロープウェイ山麓駅までバスで送って貰え、またツアー終了地点の箒場、八甲田温泉、銅像茶屋などに滑り終えるとロープウェイ山麓駅や酸ヶ湯温泉までのバスが待っている。
他地域の山ではガイドをお願いすることはないが、広い八甲田ではルートを間違えると遭難に繋がりかねないので、ローカルガイドにお願いすることにしている。添乗員?として、ツアー中は見守る必要が無いのもいい。

2月8日、2014年からバックカントリーを始めた八甲田初参加の岩田さんと新大阪へ。伊丹空港で大学山岳部後輩の奈須と合流して、14時05分発のANA1853便で青森空港に向かう。座席はいつも右側をとるようにしている。「富士山が見える」とアナウンスがあり、しばらくすると右下に御嶽山や乗鞍岳、北アルプスが見えてくる。黒部ダム堰堤もよく見え、剱岳上空を飛行する。約2時間のフライトで例年ほど雪のない青森空港に着陸。羽田からの宮本くんはすでに到着していた。予約していたタクシーで酸ヶ湯温泉に向かうが、暖冬の影響で酸ヶ湯温泉に着くまで道路に雪がない。何度か行っているが、こんなに積雪が少ないことは初めて。酸ヶ湯温泉に着くとチェックイン前、宅配便で送っていたスキーなどが届いているか確認する。チェックイン後、ツアーカウンターに行くと、「吉岡さん、待っていました」と声をかけられるが知らない人だった。スキーツアーの申し込み用紙を貰って部屋に行こうとすると、酸ヶ湯温泉ツアーガイドリーダーの「隊長」に声をかけられる。部屋で落ち着いた後、すでにガイドはいない受付にツアー参加申込書を置いておく。温泉好きの3人は到着後と寝る前、ヒバ千人風呂に浸かりに行った。豪華な夕食後、明日の用意をして就寝。

             北アルプス上空

2月9日 薄曇りだが視界は良さそう。これなら箒場岱ルート?と思いつつ、今日のツアールートを聞きにガイドカウンターに行く。「歩いて山越えで仙人岱から小岳肩まで登って箒場」と言う。酸ヶ湯温泉のスキー置き場前でシールを装着し、仙人岱ヒュッテまでハイクアップして、さらに小岳肩まで登りノートラック斜面を滑降するルートとロープウェイで山頂駅から銅像ルート?の二つ。長時間の歩きとなるが、仙人岱へのハイクアップは是非行ってみたかったルートなので、即答で3名歩き組に参加と決める。
朝食はバイキング。楽しみは温泉卵でリンゴジュース、牛乳も美味しい。
9時前、スキー置き場前でシールを装着。ロープウェイ駅に向かうバスも出発した。ハイクアップ組の約30名はシールを着けた板を担いで、道路を歩いて酸ヶ湯薬師神社近くの大岳登山口へ行き、道路から一段登ったところで参加者の点呼とビーコンチェックをしてスタート。

       点呼とビーコンチェック後スタート

仙人岱ヒュッテまで標高差430m、2時間30分くらいの行程。緩い斜面をゆっくりのペースで歩いて行くが、ペースが合わず前を歩いている人の板を踏みそうになる。一瞬立ち止まるが、すぐに追いついてしまう。1時間くらいで1回目の休憩。ガイドリーダーの「隊長」が「吉岡さん大丈夫?」と気遣って声をかけてくれる。昨年は最高齢だったが、たぶん今日も最高齢なのだろう。「大丈夫、楽しいばかり!」と答えておく。ブナの樹林帯を歩くが視界があり南八甲田も見えている。2回目の休憩は樹氷群の中、3回目の休憩をとる頃は視界が悪くなってきた。視界は30mくらいで青森椴松の樹氷の間からうっすらと仙人岱ヒュッテ(避難小屋)が見えてきた。ヒュッテ1階は雪で埋もれており、2階の窓?からハシゴを使って1階に下りるのだが、注意しないと落ちそうになる。ヒュッテ内は広いが30名ともなると2階も使うことになる。椅子も数脚用意してあり、これに座ることができた。屋内には二つの石油ストーブが常備してあり、ひとつは火がついていた。ここで昼食。カップ麺を食べる人、おむすびを食べる人など様々だ。椅子に座って行動食を食べていると、「隊長」が前にいた人に「邪魔だから避けろ」と言って写真を撮ってくれた。
昼食後、ヒュッテの外に出るのも大変で、ハシゴ最上段と壁の間に足が挟まって動けない。いったん中に入り、何とか外に出られた。今回のツアーの核心部かも。ヒュッテ外に置いていた板を履いてドロップポイントの小岳肩に向かって歩く。小岳肩まで標高差120m、40分くらい歩いただろうか、ドロップポイントに到着するころは視界が良くなってきた。シールを剥がして滑降準備。まずガイドがノートラックの広い斜面を滑降して雪面の確認をする。OKの合図でツアー客が一斉に滑降開始。これを何度か繰り返して谷越えをする。雪庇気味の場所を踏み抜いて急な谷底へ滑り下り、反対斜面に上がる。谷越えを数回繰り返してブナ林の緩斜面のツリーランとなる。やがて箒場の建物が見えてくると今日のツアーは終了。
迎えのバスは待っており、板を積んで酸ヶ湯温泉に帰りました。
一度は経験したいと思っていたルートだったので宮本、吉岡は「もう明日帰ってもいい!」と大満足。
コースタイム (11km)
八甲田大岳登山口(9:16)~(11:32)仙人岱ヒュッテ(12:40)~(13:20)小岳肩(13:40)~滑降~(14:25)箒場

2月10日 朝食に行くとき、外を見ると青空が見え風は吹いてなさそう。8時頃、部屋にガイドから「今日も仙人岱から小岳へ登り、高田大岳のコルまで滑降して箒場まで滑るコース、もう一つはロープウェイで山頂駅へ行く組に分けますが、どうしますか?」と電話がかかってきた。躊躇なく広島メンバーの3名は歩きで申し込む。体力に自信のない奈須は今日もスキー場で遊ぶという。ロビーに行くと岩田さんはロープウェイ組に変更すると言って9時出発のバスで山麓駅に向かった。
歩き組は昨日と同じようにシールを貼った板を担いで大岳登山口へ。
点呼をとり、ビーコンチェックをして昨日と同じコースで仙人岱ヒュッテを目指す。ロープウェイ組は乗車までかなりの時間待ちと思っていたが、意外にも10時過ぎ山頂駅に着いていた。ほとんど待つことなく乗れたようだ。
青空が広がっており、ブナの樹林帯を抜けると硫黄岳麓の樹氷の間を縫うように高度を稼いでいく。大岳山麓の樹氷群がキレイで、多くの登山者が大岳から下ってくるのが見える。硫黄岳頂上からのシュプールも見える。やがて仙人岱ヒュッテに到着。穏やかな天気で気持ちいいので、昼食はヒュッテの外で摂ることになった。

           八甲田大岳と樹氷

         ガイドリーダー「隊長」

しばらくノンビリした後、再び小岳肩を目指して行動開始。小岳肩のドロップポイントは昨日より少し先でシールを剥がして滑降準備。この頃には視界が悪くなってきた。兼用靴を滑走モードに切り替えてスキーを履く。今日もノートラックの斜面をガイドのシュプールを大きく外れないよう滑降していく。高田大岳北面にある二つの尾根に挟まれた沢に、小さな雪庇を踏み抜いて断崖斜面を滑り降りる。沢底の右岸沿いに少し滑ると右手の広い樹林帯に回り込んでツリーランとなる。長いツリーランはしだいに傾斜が緩くなり、箒場の小さな神社の屋根や箒場の建物が見えてくると終了。
酸ヶ湯温泉まで約20km、迎えのバスで帰ります。

             迎えのバス

2日連続でハイクアップの仙人岱ヒュッテ、小岳から箒場岱ルートは予想していなかっただけに大満足でした。
コースタイム (11km)
大岳登山口(9:20)~(11:40)仙人岱ヒュッテ(12:20)~(13:00)小岳肩(13:20)~滑走~(13:33)高田大岳ドロップポイント~滑走~(14:05)箒場

ロープウェイを選んだ岩田さん、午前、午後とも銅像ルート。午後は前嶽頂上から広いノートラック斜面を滑降で「素晴らしいノートラック斜面だった」と満足のようでした。
今回も最高齢かもと思っていたら、新潟から八甲田に通って50年になるという82歳の人がいました。その方は銅像ルートに参加されたようだが、体調不良で出発早々諦めたようで、岩田さんが「広島からの79歳が、二日連続の歩きで箒場岱ルートに参加している」と言ったら、「是非紹介して欲しい」と言われたそうで、ツアー後、酸ヶ湯温泉に帰ると話しに来られました。もう3年、続けられればいいけど・・・・。

2月11日 8時50分、宮本くんは帰るため酸ヶ湯温泉の送迎バスで青森駅へ行き、青森空港から羽田へ。奈須は今日もゲレンデスキーと温泉。
今日がツアー最終日。9時、バスでロープウェイ山麓駅に向かう。バスの中で「隊長」に「長時間並ぶようなら歩いて登りたいですね」と言っておく。中国の春節で混雑するだろうと思っていたが的中で、スキー場近くまで並んでいる。急いで長蛇の列の最後尾に並んでいると、「今日、ロープウェイは長時間の待ちとなるので希望者は火箱沢林道コースに変更、歩いて登りたい人は隊長のところへ」とガイドが言ってきた。急いで行ってみると、すでに何人かはシールを装着している。
3日連続の歩きとなる。標高差は350m。準備を済ませ点呼とビーコンチェック後、ロープウェイ下をくぐり、しばらく道路沿いを歩いているとボーダーがフォレストコースを滑り降りてくる。林間に入りフォレストコース沿いに登り高度を稼いでいく。薄曇りで雪は降ったり止んだりだが視界はある。

滑降準備

高度が上がるにつれ雪桜がキレイだ。ブナ林の斜面を前嶽西斜面、標高1000m付近まで登りドロップポイントに到着。シールを剥がし、靴を滑走モードにして滑降準備。緩い斜面はノートラック。ガイドに続いてツリーランの始まり。斜面が緩くスピードは出ないが、木々の間を抜けながら滑るのは楽しく、雰囲気は恐羅漢・ダイドコロ原のようだ。道路が見える場所まで滑ると、しばらく道路沿いに滑り降りて終了地点に到着。
コースタイム (5.7km)
山麓駅(9:32)~(11:50)前嶽西面・標高1000m(12:15)~滑走~(12:35)道路

バスに乗ると車内の時計は12時40分。これならもう1本滑れるかも?と思っていたらロープウェイ山麓駅に到着。午前のように混雑していない。スキー場近くまで長蛇の列だが最後尾に並ぶ。90分待ちで昨年の使い残しのチケットを使ってロープウェイに乗り、山頂駅に上がることが出来た。
山頂駅内で、朝食のとき、岩田さんが作っていたおむすびを1個貰って軽い昼食を取っていると「午後は銅像ルート」と告げられる。外に出ると視界は20mくらい。田茂萢岳頂上まで数分、板を担いでガイドについて行く。滑走開始!ガイドを見失わないよう滑っていくが、いつものように滑れない。ほとんど見えない斜面をツリーホールに落ちないようゆっくり滑り、前嶽との鞍部手前の急斜面にでる。過去、ここは問題なく滑降できたが、不安的中で転んでしまった。沢でシールを装着して、前嶽東斜面を巻くようにドロップポイントまでシールハイク。ドロップポイントで滑降準備。ここの斜面もノートラック。皆さん、ガイドに続いて気持ちよさそうに滑り降りて行く。転ばないよう大回りで滑降する。初参加の岩田さん、かなりのスピードで気持ちよさそうに滑り降りてきた。沢筋から樹林帯に入り、しばらく滑ると最後の沢を越える。ここを越えるとツリーランで木々の間を抜けながら滑ると、やがて銅像茶屋に到着。
待っていたバスで酸ヶ湯温泉に帰り、今年の八甲田は終えました。
コースタイム (5.0km)
山頂駅(15:50)~(15:54)田茂萢岳~滑走~(15:13)前嶽南鞍部(15:25)~(15:47)前嶽頂上東(16:00)~滑走~(16:44)銅像茶屋

冬期は行くことが出来ないが、銅像茶屋から少し入った所に1902年1月、日本陸軍第8師団の歩兵第5連隊が青森市街から八甲田山の田代新湯に向かう雪中行軍の途中で登山史上最大の遭難事故(210名中199名が死亡)があり、直立したまま仮死状態で発見された後藤房之助伍長の銅像がある。
酸ヶ湯温泉は1年前から予約受付なので、空きがあるか聞いてみると奇跡的に二部屋予約できたので山岳スキーツアーに参加できるよう、滑りは自信が持てなくなったが来シーズンまで体力が落ちないよう歩こう!

2月12日 9時30分、酸ヶ湯温泉を予約していたタクシーで出発し、青森空港へ。14時05分、ANA1854便で伊丹空港へ。
帰りも視界が良ければ右側の席に座ると北アルプスが見えてくる。2016年GW、滑降した大喰岳カールや槍ヶ岳などが見えていました。追い風で20分早く伊丹空港へ着陸。18時ころ、家に帰りました。

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