個人山行:サバノ頭は魚の鯖の頭ではない(柴木~三段峡~サバノ頭~内黒峠~内黒山~柴木周回)


亀井且博

日時:12月2日(水)快晴

山域:内黒山周辺

形態:周回縦走

メンバー:単独

三段峡の西に聳える標高1,072.8mの四等三角点(点名:鯖ノ頭)は通称サバノ頭である。 面白い山名で、国土地理院の三角点の点名も鯖ノ頭となっている。 しかし、サバノ頭は魚の鯖の頭の意味ではない。桑原良敏氏著「西中国山地」によると『<サバ>は<砂礫土>の意と思う。この山の三段峡側にはかなり大きな露岩、懸崖があり、これが良く崩壊するらしく<ヌケ谷>という呼称が付けられている。<サバ>は山ヌケして押出された崩壊土の意であり、崩壊を起こす地点が<サバノ頭>ということではなかろうか。』と書かれている。なるほど、そうだろう。山深い中で魚の鯖であるはずがない。

サバノ頭には三段峡の南峰橋近くから尾根が続いており、少ないながらトレースされている。しかしながら近年の会の山行記録には個人山行も含めて見当たらない。マムシの心配もなく、夏草も枯れて、冬枯れで見通しも良くなって薮歩きには最適な季節になったので、ようやくサバノ頭に登る気になって出かけた。

<行動記録>

天気予報は今日一日中快晴で温かいとの事。暗いうちに自宅を出て7時頃には三段峡入口の柴木に着いた。早朝のため人気は無い。紅葉シーズンが終わっているので駐車場も無料だろう。そそくさと準備して出発。三段峡の遊歩道はようやく明るくなってきた感じで、林の中はまだ少し暗い。黒淵でトイレ休憩をしたのち約1時間で蛇杉橋と南峰橋の間の取付き点に到着した。取付き点と言っても他の人の記録によるもので、標識も登行路も何もない。遊歩道から見上げると30度以上の相当の急斜面で木登りをしながらルートを選んで登らなければならない状況である。尾根上に出るまで相当なアルバイトを強いられそうである。

取付き点近くの案内

気合を入れて取付いたがアイゼンとピッケルが欲しくなるほどの思った以上の急斜面で、スリップして滑落しそうである。足元のステップを確認しながら注意深くルートファインディングして木の幹と根をホールドにしながら何とか登った。主稜線の689mピークに登り着くとようやく傾斜も落ちて安全圏になった。なんとたかだか標高差240mほどを登るのに喘ぎまくって1時間近くかかった。

698mピークの状況

689mピークからは傾斜も緩やかになり、踏み跡もしっかりとした笹の低い尾根を登る。799.9m三角点ピークを過ぎると大小の岩峰が現れ始めた。時にはルンゼを直登し時には右あるいは左を巻き、ルートファインディングをしっかりとしながら高度を稼ぐ。標高930m辺りで古い森林作業道に出た。作業道は薮に覆われて歩ける状況ではなく自然帰りしている。古い作業道を2回横切り尾根を忠実に登る。登るほどに笹の背丈は高くなり、踏み跡もはっきりしなくなって薮漕ぎがキツイ。1,050mを越えると傾斜も緩くなり、笹薮の中を歩いているとやがて何本かのテープが巻かれた木が目についた。テープが巻かれた木の近くの笹の中に三角点の石柱がありサバノ頭の頂上に着いた。頂上は広い平坦な場所で頂上の標識もなくテープが巻かれた木以外には目安になるものは無い。眺望も全くない場所で、地味な頂上であるが、今日の主目的の頂上に薮を漕いで立ち、スリップの危険を押して登って来たのでそれなりの満足感に浸った。

サバノ頭頂上の笹薮原

樹上にはクマ棚があちこちに散見されてクマの生息域であることを再認識する。クマが出そうであるし、気持ちが良い場所でもないので早々に立ち去って内黒峠に向かう。テープと何となくある踏み跡を辿って尾根沿いに下るときれいに笹刈りされた作業道に出た。少し作業道を歩いたのち、忠実に尾根を辿って1,068mピークを越えるため、適当な場所から再度尾根の笹薮の中に突入した。このピークには全く踏み跡もなくテープもなく人が通った痕跡はなくて本格的な笹薮漕ぎを強いられた。

クマ棚

ピークを越えると草刈りされた作業道に合流した。作業道は尾根と並行しているのでほとんどの人は作業道を歩くのだろう。それからは高速道路並みによく整備された作業道を落葉を踏みながら歩いた。オオキビレで内黒峠から登って来ている林道に合流してからは内黒峠まで林道を歩いた。丁度昼になったので内黒峠の道路脇の陽だまりに腰を下ろし昼食にした。

温かい陽射しの中で昼食を済ませ、内黒山に登り返し柴木に向けて出発した。この道は先日開催された恐羅漢トレランのコースの一部にもなっているのできれいに草刈りがされており、よく整備されて歩き易い。

内黒山への登山道

内黒山の頂上は登山道から少し外れているので、少し笹の中を歩いて頂上へ寄り道した。内黒山頂上はヒノキの植林の中で、眺望は無く三角点も置かれていない地味な頂上である。

1,050.2mの薮ヶ迫山(宮里山)を通って少し下るとサバノ頭から続いている作業道と合流した。この道を通ればサバノ頭から内黒山を通らずにショートカットできる。そこからは下り道の傾斜も増したが、よく整備された道を柴木に向けて下った。

<歩行距離>

13.7㎞

<コースタイム>

柴木・三段峡正面口7:15→8:15蛇杉橋→8:20取付→9:22 689mピーク→11:08サバノ頭→12:05内黒峠12:30→12:47内黒山→13:00薮ヶ迫山(宮里山)→14:00柴木

<コース図>

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