個人山行:薮歩きシリーズⅤー広高谷で薮歩き周回―(小川林道~後冠山~広高山~広高谷~小川林道)


亀井且博

<月日>12月13日(日)曇り

<参加者>会員外(JAC広島会員6名)

吉和冠山の北西で小川源流部のホン谷を挟んで対峙する1,271mの広高山は廿日市20名山になってはいるが、訪れる登山者は少ない。一般的な登路は小川林道の終点からボーギのキビレに登って県境稜線を辿る道、吉和冠山~寂地山の縦走路の途中で土浦山とのコル(源流の碑近く)からホン谷を少し下って小川林道からの道に合流する道、後冠山から県境稜線を辿る道の3ルートがある。いずれの道も薮気味の道で、途中の道からも頂上からの眺望もほとんど無い。地味な山であるが故に、静かな山を楽しむには良い山である。

広高谷に薮歩きに行こうとDr. Yさんに誘われて、JAC広島メンバーの山行に同行した。

今回のルートは、小川林道終点~ホン谷~太田川源流~後冠山~ボーギのキビレ~広高山~広高谷上流(オサカエノエキ)~ボーギノキビレ~小川林道終点と周回した。広高山から広高谷への下りと広高谷上流(オサカエノエキ)は踏み跡も判然とせず、全くの薮の中。下草が枯れた今の季節だから歩けるルートだ。一日中曇って寒い日だったが、雪が来る前の県北の薮歩きを楽しんだ。

<行動記録>

7:30八幡クリニックに集合して2台の車で出発。小川林道入口ゲートの鍵を借りるため、途中で廿日市市役所吉和支所に寄った後、林道終点まで車で入った。林道は初め少しの間は舗装されているがほとんどは砂利道で、車高の低い乗用車では腹を擦りそうである。

林道終点の手前の道路から吉和冠山が指呼の間で、あの特徴的な山姿をきれいに大きく見上げる。林道終点が広くなっていてそこに駐車して出発。山道の入り口には古くはなっているが、冠山登山道と書かれた立派な標識が立っている。

ホン谷沿いの左岸の傾斜の緩い登山道を登ると、吉和冠山と寂地山の縦走路のコルから沼ケ原経由でボーギのキビレに続く広高山の登山道に合流した。ここは直接広高山には向かわず、左にホン谷に下りて谷沿いの道を太田川の源流に向かう。ホン谷には今の時期にはほとんど水の流れは無く、右に左に渡渉を繰り返すが全く問題がない。薮化している踏み跡道を赤テープに導かれて登る。

ホン谷の薮道を登る

沼ケ原の太田川源流の木碑は古くなって、朽ちた、ただの木棒になっていて知る人ぞ知るの状態である。この辺りにはあちこちにクマ棚があり、クマのテリトリーの中を邪魔しているのがよく分かる。

小川谷の太田川源流の木碑(朽ちてただの木棒になっている。)

源流の木碑を過ぎると程なくして冠山・寂地山の縦走路のコルに着いた。縦走路を寂地山方面に辿り、1282mの小ピークを越えて後冠山に登る。後冠山の取付きは縦走路から分れて右に向かう踏み跡道で、入り口にはテープが巻かれた木がある。後冠山は三角点も頂上を示す標識も無く、ただの笹薮の中で、頂上が何処か判然としない。笹薮を赤テープに従って進んでボーギのキビレに向かって下る。ボーギのキビレへの下りは赤テープに沿った踏み跡道で笹は頂上付近のみでそれからは小灌木の薮道となる。ボーギのキビレは十字路で昔は峠道だったのかもしれない。ボーギのキビレから広高山に向かう。登り始めて最初の小ピークでナラの大木に出会う。安蔵寺山のナラ太郎にも匹敵しそうな大木である。数本の蔓葛が巻き付いて苦しそうなので、小さな鋸を持ち歩いているメンバーの発案で、蔓の縛りから解放してやるため蔓葛を切ることにした。ここは山奥育ちで子供の頃、裏山で薪を集めたり植林のため伐採したりの山仕事を経験して、鋸を使い慣れている私の出番であった。しばらくの間木こりの真似事をした後、薮気味の踏み跡道を辿って広高山頂上に到着した。

ナラの大木

広高山頂上には真新しい頂上の標識が付けられている。廿日市20名山の1座で第3位の高さであるが、三角点は設置されておらず、葉を落とした今の時期には木の間から冠山や額々山が見えるものの、眺望はほとんどない地味な頂上である。時間も丁度正午過ぎで、少し広くなっているのでここで昼食にした。広高山からは県境尾根を北に辿り、上イリコノエキか下イリコノエキを下って額々山に登り返す予定であったが、時間的に厳しいので直接広高谷源流部に下ってオサカエノエキを登ってボーギのキビレに帰ることにする。

広高山頂上

ゆっくりと昼食を済ませ額々山へ向かって広高谷に下る。広高山の頂上台地を少し引き返して尾根を県境から右に外れて南西方向に向かって下る。この下りは全く踏み跡も無い背の高い笹薮で、木の間から見える額々山を目指して方向を定める。薮漕ぎが大好きでこのルートを何回か歩いたことがあるメンバーの一人が先頭で下り、目標としていた広高谷の源流でオサカエノエキ沿いの1160mの小ピークとのコルにピッタリと下り着いた。さすがである。コルにはテープが巻かれた木があり広高山~額々山のルートであることを示している。

広高谷源流オサカエノエキ沿いの薮道

オサカエノエキをボーギのキビレに向かって遡行する。沢には水の流れは無く今の時期には涸沢になっている。沢沿いに所々付けられた赤テープの標識に沿って踏み跡道を辿る。今は冬枯れで木は葉を落とし夏草も枯れて歩き易いが、夏の木の葉や草が茂る時期には相当な薮歩きになることは間違いない場所である。沢詰めの最後に少し登るとボーギのキビレに着いた。あとは林道終点に向けて下るのみである。ホン谷から登ってくる道を下り、沼ケ原との三叉路を左に折れて登ってきた道を逆に辿って駐車地に下った。時間的に余裕があるので途中で2本の大きなブナに巻き付いた蔓葛を切って縛りから解放した。ここでも私の出番があったのは言うまでもない。皆さん曰く「鋸の使い方にリズムがあり、無駄な力を使っていない。」そうである。

今日の行程は時間的にも距離的にも短かく少し物足りない感はあるが、未踏地の広高谷を歩いて薮歩きに満足した山行を終えた。

ぶなの大木に巻き付いた蔦葛を切る。

<歩行距離>

5.6Km

<コースタイム>

小川林道終点9:40→10:20吉和冠山・寂地山縦走路コル→10:55後冠山→11:15ボーギのキビレ→12:10広高山12:50→13:15広高谷(オサカエノエキ)→13:40ボーギのキビレ→13:48ボーギのキビレ・ホン谷分岐→14:20小川林道終点

<コース図>

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