12月30日~1月2日 冬合宿南アルプス 甲斐駒ヶ岳~鋸岳縦走(甲斐駒、仙丈往復) (係)吉村


三谷 和臣

<参加者>
横山、多賀谷(重)、高田、中島、三谷

行動記録に入る前に今回のルートのポイントをみんなにも説明しておこう。我々は、甲斐駒→六合目石室→中の川乗越→第二高点→第一高点→角兵衛のコル下降と進むのだが、ルートのポイントは2か所。まず、第二高点からの複雑なルートファインディングと鹿窓ルンゼの登攀。そして小ギャップからの登攀だ。事前に入手している情報では鹿窓ルンゼの方が難しいらしい。2年ほど前に死人が出ており、去年鎖がついたとの話もあった。ここ鋸岳は我々と逆方向に縦走するのが一般的である。しかしその場合、上記核心部は共に下りであたることとなり懸垂で処理できてしまう。それではつまんないじゃんってので我々は甲斐駒からの逆縦走を計画したのだった。
<行動記録>
大晦日、定着隊とは北沢峠で別れたはずだったが、こっちのペースがあがらないため結局甲斐駒山頂で見送ってもらう形になった。いくら空身とは言え、向こうは新人連れであり、甲斐駒山頂までついて来られるとは屈辱である。三谷さんともども唇を噛み締めながら山頂を後にした。ここ数日は鋸に向かった人もないようで、トレースも見当たらないが、もとより岩が露出している地帯のため特に困らない。途中、六合石室の少し上で岩場の下降があったが、真新しい鎖がついていて懸垂をしなくて済んだ。六合石室から先は樹林帯になり俄然雪が多くなる。先行者がいないため必然的にラッセルとなり、なかなか体力を要することだ。こりは目的地の中の川乗越に着かんかもよと三谷さんが話しながら休憩していると、おっと神の助け。前からラッセルしながら二人連れが来たではないか。アポロンの使いと思われ、あがめていると、向こうも我々をゼウスの使いと思ったらしく感謝している。互いにラッセルの労をねぎらい、情報を交換した。これで意気があがったため、どうあっても乗越までは行くことにする。ペースはあがらなかったが、日没直後になんとか到着した。乗越には既に2パーティーが幕営していたが、皆逆向きのようだ。晩ご飯、唐辛子たっぷりカレーと牛乳抜きマンゴープリン。夜半から少し風が出て寒い夜だったが、翌朝も薄曇り程度で天候は大崩れしなかった。
元旦、新年の挨拶も忘れ棒ラーメンときな粉餅を食べて第二高点に出発。ガラ場のルンゼを詰めて稜線に出て、少しあがると鉄剣の立つ第二高点である。このまま進むと大ギャップにはまって地獄行きらしいので、10m戻り南西にのびる尾根を下る。赤テープ/赤ペンキとも異常に多い。多分、鎖をつけたときに整備を進めたのだろう。おかげで迷うことなく鹿窓ルンゼに入ることができた。ルートとしては、南西稜の尾根上を道のり約300m下り、そこから北西に道のり約100m斜面を下り、大ギャップからのガレ沢に降り立つ。ガレ沢を20m横断し、向い側の尾根についたトラバース道で尾根を50m巻くと鹿窓ルンゼに入ることができるってわけだ。どう?数年後に行く人よ、わかった?
さて、鹿窓ルンゼ上部50mには鎖が垂れ下がっている。誤解の無いように言うと、鎖がついているのではなく、垂れているのだ。ルート取りに関係なく重力に従って垂れているため、意外に鎖が使いにくい。ただ、支点としては無敵なので、上部のワンポイントは念のためロープを出して鎖で支点を取りつつの突破とした。抜けきった鹿窓は、茫漠と風の吹き抜けるトンネルであった。
よくも、こんな山の稜線に直径2mのトンネルができるものだ。おっと、ここで中島は重要なことを思い出して実行した。三谷さんと新年の挨拶を交わしたのである。重要よねー、こういうことって。さて、この先少し進み、小ギャップの底へは懸垂で降り立った。目の前の小ギャップの壁には例によってルートにそわない鎖が垂れている。ここは7-8mの壁で、ロープは出したが、ホールドスタンスは豊富であり、快適な登攀が楽しめる。壁を抜けて稜線を少し登ると第一高点すなわち鋸の山頂に着いた。早朝に出ていた雲も消え、今日も快晴である。三谷さんと握手を交わす。2年前の春に二人で行った明神の東稜を思い出す。ああ、あのときも天気は良かったな。そうか、もう一人の男が混ざると天候が崩れるのか。わかったよ鳥取県。ところで、ここで問題が発生した。朝の出発時に寒いからと延期処理していた用便が、阻止限界点に達したのである。どうにもピーク上でピークを迎えてしまったが、幸い鋸岳はあなたに静かな山旅を約束してくれるところ。どこからも誰も来る気配がないので岩陰でことをなす。登頂時よりも達成感がさらに増してしまい、思わずそのまま立ち上がり山頂を彷徨したら尻が寒かった。隣の甲斐駒山頂から望遠で鋸岳を撮っている人がいたら、数カ月後の岳人や山渓に困った写真が載ることになるな。責任は取れない。
さて、山頂からは角兵衛のコルに進み、そこから角兵衛沢を下る。山頂から下の角兵衛沢出合いまで1400m近い標高差のため2時間以上下るとこになり、結構うんざりするが、まあ、雪がもっと多ければ30分で下れるんだろう。滑落なら3分とかからないな。角兵衛沢出合いには午後1時半頃着いたが、定着隊は行けるなら5時
までにそこに行くからとの話であった。3~4時間もあるではないか。昼に時間があったらすることは昼寝である。三谷さんとテントを設営し、ちょっとお茶を飲んでからシュラフに入った。あー、気持ち良い。めくるめく夢が広がって行く。と、そこに「どーてー」の遠吠えが。なんとまだ3時前なのに定着隊が来たではないか。彼らは我々より2時間も早く午前3時から起きて行動していたとのこと。待たせない気遣い大変にありがたかったが、欲を言えばもう1時間待たせて欲しかったな。
<コースタイム>
12/31 10:20甲斐駒山頂着10:45→14:00三ツ頭の最初のピーク→17:00中の川乗越
1/1 中の川乗越7:10→9:15鹿窓→10:30第一高点→13:35角兵衛沢出合い
(記:中島)
(写真:鹿窓ルンゼ)
#BBSの特性上、報告が時系列でなくてすみませんが、やっと掲載です。

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