谷川岳 湯檜曽川本谷遡行(個人山行)


宮本博夫

日程:2009年8月13日~16日
参加者:菅野、坂口、宮本、吉田(会員外)
←写真:自称関東支部
<行動記録>
 今回夏休みは今まで一度も行ったことがない上越方面、谷川岳周辺に行くことにした。谷川岳周辺は沢の宝庫で、東京からも比較的近い山域なのだが、自分のところからだと奥秩父や南アルプスのほうが行きやすく、なかなか一歩を踏み出せないでいた。行き先は超人気の沢、湯檜曽川とした。人気の度合いは後述の通り。ここは1泊2日の沢だが現地までのアプローチの様子も分からないので、前後を移動日程として計画した。

 8月13日;埼玉県三郷から菅野さん、茨城県東海村から坂口さん、静岡県掛川から吉田君、神奈川県藤沢から宮本と、遠いところからよく集まったものだ。水上町で食料、ビールを仕入れて、手頃な東屋を見つけて宴会をした。アイダホに赴任していた坂口さんとは6年ぶり、藤沢から掛川へ転勤した吉田君(宮本の会社後輩)とは2年ぶり、菅野さん1カ月ぶりの再会を祝った。
 8月14日;車は谷川岳ロープウェー乗り場で通行止めとなり、そこの駐車場(なんと5階建て立体)にとめる。そこから川沿いに2時間近いアプローチで武能沢出合いより本流に入り、遡行開始する。我々の前後に各1パーティ、アプローチ時に更に先行パーティも見かけたので、今日は少なくとも4パーティが入谷していることになる。遡行ガイドを読むとお盆はテン場が大混雑するとあった。
 谷に入ると前日雨のためか、水量は多く、水面は白っぽく波立っている。滝は小滝や滑を交えながら次々と登場する。雪渓がきのこ状に残ったものが見られるのが面白い。雪が多い年や遡行時期が早いとスノーブリッジの通過に悩まされるそうだ。遡行ガイドでは十字峡が自然造形の妙で素晴らしい光景とされている。確かに直角に曲がる本流に2本の沢が流入する(1本は滝で流入)様は特徴あるのだが、他にはない特別なもの、とは私は思わなかった。強いて言えば十字峡手前の滑滝から続く連瀑構成が見事だった。本日目的地は上流部二俣まで行くことであったが全然無理で、もう1箇所の幕営適地がある中流部を目指した。適地といっても少し増水したらすぐに水没してしまう小さな河原であったが、この先はまた滝が続いて他に適当なところもないので、ここで泊ることにした。この日の夜はよく晴れて星空が美しかった。久々に天の川や流れ星を見た。
 8月15日;この日は10m前後の滝が多く出てきて、要所でロープを出したが、想定外に時間を食った。出発まもなくの10m滝高巻きで実は長いロープが必要だったのに短いのを出したり(後で気付いたが、ここはシャワーで登るところで高巻きが一番悪いと書いてあった。なお、この日は溺れそうな水量で高巻きやむを得ず)、40m大滝ではほんの数mでよかったのに長いロープを出したりと、結果論であるが効率の悪いロープ使いとなった。出発時点では二俣には2時間もあれば着くと思ったのが大間違いで6時間以上かかってしまい、当初目的の朝日岳まで詰め上がると本日の下山は完全に無理と判断された。仕方なく、清水峠付近に至るエスケープルートの小さな池窪沢を登り、最後のほうは根曲がり竹の深く堅い藪に苦しめられ、登山道へ出た。清水峠にはとても小さな避難小屋と、巨大な三角屋根のJRの送電線監視小屋なるものがある。(遠くからはこれが避難小屋で、避難小屋のほうはトイレに見えた)
 清水峠を過ぎてすぐのところで、なんとツキノワグマに遭遇。前方15mくらい。こちらは4人もいるのに、こっちにノシノシやってくる。時々座って休んではまたノシノシやってくる。仕方ないので我々も後ろに下がって距離を保つ。クマのほうは全く緊張感がなく、どうやらこちらに気付いていないようだった。エイトカンをガチャガチャ鳴らすと漸く気付いたようで笹藪に飛び込んでいった。その横を恐る恐る通過した。
 その後の登山道は山腹を巻く全くの水平道で、高度が下がらないのはもちろん、いつまでたってもさっぱり距離が稼げないことにがっかりした。実はこの登山道は国道291号で、その昔は馬車が通ったのだという。
 この日は多少遅くなっても下山するつもりであったが、膝が痛くなったメンバーもいてペースも上がらず、下山をあきらめ白樺避難小屋に泊まることにする。板張りの小屋を勝手に想像していたのだが、先の清水峠より更に小さな小屋で、4人泊まれるかビミョー。小屋の中を調べていると暖かいせいかヘビがいて、これを追い出そうとしていたら更にとぐろを巻いている別のヘビがいて、あきらめて小屋の外でツェルトを張って寝ることにした。寂しい感じで皆で非常食を分け合う。稜線上なのにこの日の夜は風がなく、小屋の外の草地はふかふかで寝心地もよく、場所も広く使えたので、ヘビに追い出されてかえって良かったと思う。
 8月16日;小屋からは一気に高度を下げ、一昨日の入谷地、武能沢出合いを経て下山した。この日も多くの遡行者とすれ違った。水上温泉で汗を流し、予想通り関越道の渋滞に突っ込んで、帰途についた。

 湯檜曽川の印象は、上越らしく明るくて美しい谷(豪雪のため樹林帯が上の方へ追いやられている)、大きな谷の割には登り易い滝が多く、だいたい水線通しに進める。逆に高巻きになると根曲がり竹の深い藪に苦しんだり、不安定な草付に緊張させられる。滝数は多かったが全般に似たような感じが多かった(特別な印象に残るハイライトなし)、予定より大幅に時間がかかり、エスケープルートをとったにもかかわらず結局、2泊3日山行となってしまい、何か今後に課題を残した感じとなったこと、めったにない顔ぶれが集まったこと、そして何よりもクマに会ったのが印象に残った。(私と菅野さんは7年前の奥秩父以来、2回目の遭遇)

<コースタイム>
8月14日;土合口出発6:50~武能沢出合い入谷10:00~赤淵11:40~十字峡上・赤滝14:00~七ツ小屋沢出合上部幕営地16:20
8月15日;出発7:00~大滝上11:40~二俣13:30~池窪沢経由・稜線15:00~白樺避難小屋18:40
8月15日;出発6:20~土合口帰着9:40

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