大菩薩嶺 丹波川・小室川谷遡行(個人山行)


宮本 博夫

日程:2008年8月14日~15日
参加者:菅野、宮本
←写真:大滑滝

今年夏休みの沢登り山行の本来の行き先は南アルプスの石空川だった。ここは数年前からもう数え切れないほどに計画を出してきたのだが、ちょっと厳しそうな谷なので条件が悪いと見送っていて、今回も最近流行のゲリラ雷雨等の天気予報にびびらされて、標記の小室川谷に変更してしまったのであった。(結果的には予報も変わって、石空川にチャレンジしてもよい天気だった・・・)
小室川谷は6月に行った小常木谷のすぐ近くだが、丹波川本流を境に概ね対岸にあたり、山域も大菩薩嶺と変わる。大菩薩嶺は2000m級の山だが、かなり上のほうまで林道が伸びていて、ハイキングでよく登られている山。しかし小室川谷は長い流程を持ち、流域に平行する山道や林道もなく、サワノボラーと釣師だけの世界である。私は93年に当時の会社上司と遡ったことがあるが、良い谷だったと記憶していたので、今回のバックアップ山行に選んだ。

初日、入谷地点の林道に車を停めて、谷底まで作業道を下って小室川谷に入る。5~8mくらいの滝がポツポツ現れる。初めは土石の堆積が多く、それがだんだん顕著になり、しまいには段丘が続くようになった。その先に大きな崩壊地が出来ていて、これが原因だった。
2時間くらい進んだところで「S字峡」と呼ばれるゴルジュと小滝があるが、ちょっと釜に入って簡単に通過。S字峡を出たところで休憩していたら、突然雨が降り出した。今日は大気の状態がかなり不安定との天気予報だったが、その通りのようだった。
暫く進むと「小室ノ淵」と呼ばれる淵と小滝があって、ここは泳がねばならない。流れも強そうでちょっと緊張する。結局流れに逆らっては泳げずにほとんど流されてしまうのだが、側壁には手がかり、スタンスもあって適当に落口に近づけて、思ったより楽に突破できる。
小室ノ淵を抜けたあたりでいい時間になってきたので、幕場を探しながら進む。この谷は傾斜が緩いので幕営適地は豊富にあって、すぐに幕場あり。一応もう少し様子を見ようと先に進むと滝場が出てきて、突入すると面倒だと思って、さっきの幕場まで引き返してそこに泊ることにした。(ところが翌日小滝を越したところで素晴らしい幕場があって、縁がなくて残念だった)
焚き火をしようと薪を集めている最中にポツポツッときたと思ったら、あっという間に土砂降りとなり、ツェルトとフライを貼り終えた頃には完全にずぶ濡れとなってしまった。当然焚き火どころではなく、雨が収まるのを待つがなかなか止まず、強い雨が暫く降り続いた。少しずつ水嵩も増えてきて、これはやばいかも?と思い出した頃に小雨となった。ほっとして食事の支度を始める。ずぶ濡れで食事中も寒かったが、シュラフカバーに入る時に濡れたものを脱いで着替えると、後は寒さを感じることもなく寝坊するまでぐっすり寝てしまった。

2日目、進歩なく、いつもと同じ遅い出発。5m前後の小滝群や見栄えのよい12m滝を越していくと、4段になった素晴らしい大滑滝が現れる。中間部には大きな釜もあり、見事な構成。この谷のクライマックスと言えるだろう。右側を登っていくがツルツルで、油断すると前述の釜まで行ってしまいそうだ。その後の2段20mも幅が広くて見ごたえあり。
この先で二俣となって、左の本流に進むが、この辺りかなり荒れていて倒木だらけであった。以前来たときはもっと苔むした雰囲気のある源流域だったと思うのだが。この先10m前後の滝がいくつもあるはずなのだが、ほとんどどれだかわからない状態のまま最源流まで来てしまった。詰めも傾斜は緩くて藪は全くなく、猛烈な笹薮漕ぎに苦しめられた前回小常木谷に比べたら1/10以下の労力のはずだが、疲れてきて足取りは重たい。お昼には稜線に出たかったのだが、3時にやっと着いた。
稜線は気持ちのよい笹原が続いていた。しかし大菩薩嶺(2057m)は樹林帯の中にある地味な頂上で展望はない。それからはツガの原生林の中の道を緩やかに下って、丸川峠(丸川荘という今時珍しい非常に素朴な山小屋があって、ちょっと泊りたい気分になる)を経由して相変わらず緩い山道を下って、やがて長い林道に出る。ほとんど暗くなった頃に停めてあった車にたどり着いた。

小室川谷はほとんど水線沿いに進めて、ほとんどの滝を登れるのが楽しい。ただし、泳がないで巻こうと思うと大巻きのところもあるので、夏向きの谷である。近年の豪雨の影響か、以前より荒れている感じなのが少し残念だった。

<コースタイム>
8月14日;小室川谷入谷地出発11:20~S字峡上・松尾谷出合13:30~小室ノ淵15:20~中ノ沢上幕場16:20
8月15日;出発7:50~大滑滝上9:40~ジャヌケ沢出合二俣11:00~稜線15:00~丸川峠16:40~帰着19:00

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