春合宿 黒部横断 (係)吉村(光)


吉村

月日:5月1日(金)夜~5日(火)
参加者:三谷、平本、保見、兼森、松林

<行動記録>
一昨年よりGWに黒部横断を企画構想していた。昨年は名越さんの捜索に集中し、今年に実施することになった。この山行の最後は剱岳に登るので、富山県条例により登山届を提出し、4月8日に受理返送されてきた。今回の予定コースは、遠見尾根~五竜岳~東谷尾根~黒部川S字峡~雲切新道~仙人山~北方稜線~剱岳~室堂であり、5日で踏破するものである。
5月1日昼、先発の吉村号に三谷君、松林君が合流して乗り、中央道駒ヶ岳SAの東屋に夕方テント泊。保見号は21時過ぎに、平本さん、兼森さんが乗り出発。翌2日4時半頃、駒ヶ岳SAに到着した。5時には先発組も起き出し、共同装備分けとパッキングをした。白馬村スキー場の駐車場に車を置く。多めに持ってきてしまったガス缶3個を車内では、熱で破裂する恐れがあるので、車の下に残置した。五竜テレキャビン(ゴンドラ)8時15分の始発便の列に並ぶ。スキーヤー優先で、登山者は乗るのを待たされる。
アルプス平駅から、いよいよ雪山登山が始まる。スキー場の中を歩き、地蔵の頭で少し休憩を取るが快晴で、暑い。小遠見、大遠見と順調に歩き、白岳直下のトラバースに入る。雪崩が心配されるところだが、雪は安定しており問題はない。
五竜岳山荘に着き、テント泊1人800円の受付をする。高くなったもんだ。テント場は雪がなく、一番下側に場所を取る。夕方まで時間がたっぷりあるので、水平になるように土木整地作業を念入りに行った。テント場は西斜面に位置するので、日没まで西日が照り付けて暑い。それでも、比較的暑くないテント内の入り口近くで、保見君と兼森さんが雪を溶かして水作りを行う。待ち遠しかった落日がやってきて、テントの中で夕食作りが始まる。所用でテントを出た保見君が「周りの人はテントから出て感激しながら、写真を撮っています。テントの中で馬鹿笑いをしているのは我々だけです」と報告。入山日の今日の夕食のみ、生物を使ったかつ丼だ。美味い。
5月3日、3時起き、五竜岳頂上に向けて4時50分出発。雪の斜面が出てきたところでアイゼン装着し、岩場や雪の急斜面を登っていくと五竜岳頂上に着いた。ここから東谷尾根だ。今までいた登山者は姿を消し、我々だけの世界だ。最初は浮石交じりの岩稜帯で慎重に下降していくと、ハイマツ帯が現れてくる。東谷山からは雪稜となり、針葉樹やダケカンバ日陰を提供してくれる。数日前であろうトレースがついている。今日も快晴で、暑い。
尾根が右に90度曲がる地点では、前方、左右とも切れ落ちている。右側の斜面へ下降地点を探す。ほどなく松林君が何とか降りられると地点を見つけた。保見君と二人はフリーで降りて行ったが、4人は大事を取って懸垂を1本入れた。あとは、谷底まで雪面を下降する。その後は尾根へ帰らなければならない。今度は急雪面を尾根上へ登りかえした。
尾根へ上がると、灌木が混じる雪尾根を西へ行く。小さなアップダウンを何度か越えていくと1771mのピークに着く。ここから尾根は、黒部川に向かって南西に急下降していく。時は13:40。あと3時間もあれば、今夜の泊予定地の仙人ダムにつけるとおもったが、ここから藪漕ぎの連続だった。前を行く松林君と保見君にはGPS・高度計・トランシーバーを持たせ、ルーファイをしていたが、3度も間違えて支尾根に入り込む。その都度、正規尾根に戻るため藪のトラバースを強いられる。標高が下がるとブヨが血を求めて、たかってくる。暑い。そのうち1?の行動水を飲み干してしまう。眼下には黒部川の流れが見えるのに、喉はカラカラ。やっと標高1000mにある送電線の鉄塔に着く。ここからは、鉄塔巡視路を辿って下れば、仙人ダムに着く。ダム湖に着いたが、周囲の道路は雪に覆われて平地はない。何としても今夜のテン場を探すため、保見君を偵察に行ってもらう。トランシーバーから、ダムの堰堤のすぐそばにテン場と流水を見つけたと連絡が入る。行ってみると1張分雪が解けて(先行者が除雪したかも)地面が出ており、流水もすぐそばに流れている。夜の帳が落ちて薄暗くなる中、流水をがぶ飲みした。今夜は雪を解かさなくていい。時間とガスが節約できた。天気予報では、明日の午後から雨。剱岳の稜線で雨に濡れるのは、低体温症になる可能性があり、考えるだけで憂欝である。
4日、朝のパッキングをしていると、もうパラパラと落ちてくるではないか。その雨は直ぐに止んだ。仙人ダムで黒部川を渡り、雲切新道に取付く。この道は一昨年の秋に来ている(6人中5人も)ので、ポイントや概念は頭に入っているはず。雪の詰まった仙人谷を渡って雲切尾根へと道は続くのだが、ルートは雪に隠れて判然としない。ここは歩いたことがあるので覚えていますか、皆さん!「・・・・・・??」なんとか道を見つけ、「これより急登」の標識からハシゴを登っていく。登山道は分厚い残雪の下か藪で、ルーファイしながらで時間が掛る。左右が切れ落ちた浮石とザレの崩壊地帯は、ナイフリッジと化していて緊張する。
このあたりから雨が降り出し、1629mのピークでカッパを着る。このピークから南へ折れ南仙人山を目指して登っていく。後続に5人パーティーが見える。雨が強くなってくる中、南仙人山手前で台地状地形を見つけ本日の行動を中止し、幕営体制に入る。ずぶ濡れで尾根に上がって風にさらされると、低体温の可能性も有る。更に雷の予報も出ている。雪面を切ってテントサイトを切り出し、周りを雪のブロック壁を作り防風する。今冬の毎週の大山通いで雪のテントサイト作りは、みんな素早く出来るようになった。5人パーティーが追い付いてきて、行けるとこまで行くらしい。テントの中では、ガスコンロを点けて濡れたものを乾かすが、湿度100%のテントの中では、上手くいかない。私の靴はプラブーツで靴下まで濡れないが、他の者は最近の冬靴で、湿雪により靴下まで濡れ、足の汚れと相まって熟成した匂いを放っている。
明日以降の行程の変更を伝える。北方稜線~剱岳~室堂を断念し、仙人尾根~剱沢~室堂とする。そもそも日程が詰まっていて、今日が半日行動になったことで時間的に無理だ。まして疲労が溜まった我々パーティーが核心部の剱岳を行くことは事故につながる可能性が大きい。
5日、朝テントを出ると、昨日の雨で濡れた湿雪は氷化してツルツルである。南仙人山への登りは30分で終わった。仙人池ヒュッテは屋根の一部だけ見えて雪の下だ。仙人峠先で一息入れながら、我々だけの絶景を楽しみ、写真を撮っていると、仙人新道からカメラを提げたおじさんが一人上がってきた。剱沢の二股にテントを張っていると言う。仙人新道の下降に入る。最初は急な上にクラストした雪面は滑り台の様である。慎重にアイゼン、ピッケルを駆使する。下山後に知ったのだが、丁度この日のこの時間に涸沢の上のザイテングラードで滑落事故があり、2名の方が亡くなっている。下るにつれて、藪になったり、雪がナイフリッジ状になったりと、気を遣うし時間も使う。近藤岩のある二股に出ると緑色のテントが1張、あのおじさんの物だろう。
カール状の剱沢に降りると太陽の照り付けと照り返しで暑い。別山乗越まで一本調子の体力勝負だ。長次郎谷出合の頃より、兼森さんの歩みが遅くなる。「今日は雷鳥平で温泉なしのテント泊か、頑張って最終16:30のアルペンルートに乗って大町温泉に入るか、どっちがええか?」と問うと「大町温泉に入りたい」と言う。それなら頑張ろう!剱沢小屋は開いていない。数張のテントがある。5時間半の雪渓登りで別山乗越に着いたが、最終のバス便まで2時間。ぎりぎりだ。休憩は水分補給の3分だけにして、雷鳥平へ下っていく。雪面の下りは速い速い。最後の室堂ターミナルまでの登りは、時間との戦いだ。残雪の残る遊歩道を若い女性観光客が、スニーカーを履いてはしゃいでいる中を、ヒーヒー言いながら登る。やっと、室堂ターミナル前に着いて、皆と握手。すぐに改札口になだれ込んだ。何とか間に合った。3年前の剱岳夏合宿と同じだ。
今回、北方稜線~剱岳は行けなかったが、雨が降らずに時間があれば行けたかというと、無理だったと思う。3日間の疲労が蓄積したなかで一番の核心部に入ったら事故を起こしかねない状況だった。雪面、岩場のアイゼンでの下降が不安定な様では、剱岳は優しく迎えてくれない。今後の宿題である。
<コースタイム>
5/2 08:00 五竜スキー場駐車場着→08:53 テレキャビン・アルプス平駅→09:20 地蔵の頭→10:47 小遠見山→12:30 大遠見山→14:15 五竜山荘→19:30 就寝
5/3 03:00 起床→04:45 五竜山荘テン場発→06:15 五竜岳→08:37 東谷山→13:40 1771m→17:40鉄塔→18:30仙人谷ダム→21:00就寝
5/4 03:00 起床→05:00 仙人ダムテン場発→06:37 急登の標識→10:23 雲切新道最高点→12:00 2173mピーク手前→19:00 就寝
5/5 03:00 起床→05:10 2173mピーク手前テン場発→06:20 仙人池ヒュッテ→06:47 仙人峠→08:44 二股→10:08 真砂沢ロッジ→13:15 剱沢キャンプ→14:20 剱御前小舎→15:25 雷鳥平→16:20 室堂ターミナル

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