【赤いクラック】


三谷

 拇岳で最もポピュラーなルートである赤いクラックを登ることになる。取り付きに行くと、ガイドが初心者?2人を連れて登っている。しかも、リードをさせているみたいだ。これは時間がかかりそう。はやる気持ちを抑えて準備をする。ラストが出発したので取り付く。
1P 登攀開始10:00。ルート名の象徴となる赤いクラックは、節理が斜めのスタンスなので少々戸惑うが、オポジションとガバを掴んでバランス、いや、力任せで突破する。支点は、ハーケンとブッシュを使う。中間テラスで一旦ピッチを切り、小此木さんに登ってもらう。そして、先行パーティが出払ったようなので、ついでに1P終了のテラスまでザイルを伸ばしてもらう。二つのテラスの残置シュリンゲは基部からも確認できる。
2P 先行パーティは左に回り込んでクラックを上がっていった。左のクラックは残置物は見あたらずカムが必要だ。我々は直上するが、出だしの垂壁が難しくアブミを使用した。しかし、フリーでも登れると思う。2P終了点の灌木のあるテラスは、二段になっていて我々は下の段で待機する。
3P ラストの女の子が登り始めたので、3P目の取り付きに移動する。難しいらしく何度もテンションをかけている。腕がパンプして泣きそうになっているので、笑顔で励ます(気持ちは分かる)。景色もいいし、天気もいいし、何より暖かいので順番待ちも苦にならない。ホールドの乏しい凹角を登っていく。確かに難しく、思わずヌンチャクを掴んだ。出だしの核心部を越えても微妙な登攀が続く。右上気味に上がり、最後は左上して広いテラスに出る。待っている間、先行パーティの方と話しをした。大阪から来て、この前は三倉岳に登ったらしい。
4P 正面に見える垂壁には無数のボルトやハーケンが打ってあり、どこがルートか解らない。先行パーティは、そのフェースを登らず、右のスラブを登っていった。我々もそれに従った。支点がなく、あったとしても腐ったハーケンだけなので、カムを使用する。最後、濡れて苔の付いた箇所を木登りで強引に上がると安定した岩棚に出る。ここでも通過待ち単線列車のように、停車(小此木さんは一服)する。
 先行パーティの二人は登る前にクロスチェックをしたり、コールもしっかりして基本に忠実であるが・・。しかし、最近私も基本がいい加減になっていないか見直しが必要である。
5P 先行のラストにくっついて登る。左にトラバースして中央ルートに合流する。階段状のカンテを登ると頂上に到着する。遮る物は何もなく360°見渡すことができる。水平線が見える岩登りは初めてだ。登攀終了14:10。
 コルへの下降は、懸垂25mあるいは、FIXロープを使用する。コルからはルンゼを歩いて岩場基部まで戻ることができる。
 うまく登れたとは思わないし、先行パーティがいたからこそ迷わなかったと言えるが、このように明るく開放的な岩場は初めてなので気持ちの良い一日だった。時間はかかったものの、無事頂上に抜けることができて満足した。

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