月日:2016年10月15日~16日
参加者:吉村、松林、川本
石鎚山に初めて登ったのは、今から18年前。天狗岳で山本(登)さんから、北壁にある登攀ルートの存在を教わった。石鎚山を登りに来るたびに、北壁を見上げながら、いつかあそこから頂上を目指そうという意思が芽生えていった。
マウント・レーニアから帰ってきて計画を実行に移す。9月に入り、天応、大鉢山(小方ロックガーデン)のゲレンデで人工登攀のトレーニングとルート整備などを行った。
そして当日、初日、トイルートを登って、取り付きと壁の概念を把握して、翌日、北壁の正面を登るダイレクトルートか中央ルートを登る計画だった。日曜日の天気は下り坂、時間的に厳しいが、やはり北壁登るならメインのルートを押さえておこうと、ダイレクトルートを登ることにした。
早朝、しまなみ海道のSAを出発し、石鎚山の土小屋の駐車場に到着する。
松林くん先頭に早歩きで、1時間で二ノ鎖の下にたどり着いた。
三ノ鎖の取り付きで登攀道具を装着して、北壁の各登攀ルートに通じる踏み跡に入る。一部滑りやすい草付き、ザレ場があるが、しっかりとした踏み跡が付いている。ニノ鎖からの見た目とは異なり、覆い被さるような壁が迫っている。
いくつかのパーティーがすでに先行している。トイルートでは姿は見えないが声が聞こえる。その奥には2人がワシオルートを登っていた。2ピッチ目に大きく張り出したハング帯があり厳しそうだ。
ラストが登り始めてから取り付き点に入り、準備を進める。いくつかのルートのビレー点が共通になっている。ダイレクトルートは、フェイスを数十メートル登った後、顕著な凹角に入っていく。見た目、上部に行くほど傾斜が強まるが、登攀距離はさほどでもなさそうだ(日本登山体系ではは90m)。
トップを松林くんが務める。12:00前登攀開始。残置支点に導かれながら直上して、左上気味に凹角に入っていく。しばらく凹角を詰めていくと、ペツルのアンカーを見つけたようである。ここでピッチを切る。川本くん、三谷と続く。かぶり気味になっている終了点への乗越が1ピッチ目の核心部である。アブミを使って乗り越す。ビレー点は、つま先が乗るくらいの狭いテラスである。3人立つと身動きがとれない。2ピッチ目に取り付いて場所を空けてもらう。ラストの確保体勢が整ったので、ラストを引き上げる。三ノ鎖からは登山者がこちらの方に向かって手を振っている。
2ピッチ目は、高度感のあるすっきりとしたスラブである。足がかりはほとんどなく、アブミの掛け替えになる。凹角のリスに打たれたハーケンや古いボルトが多数。支点の場所によっては、体勢が非常に窮屈になる。凹角を抜けると階段状の岩場となり、稜線が見えてくる。稜線に抜けると、天狗岳頂上の祠がすぐ近くに見える。15:00登攀終了。先ほどの三ノ鎖の登山者と交流して、各ルートを見下ろしながら下山する。石鎚山頂の神社にお参りして、無事に行を終えた。
日没直前土小屋に戻り、快適なしらさ小屋で一泊する。夜半から雨が激しく降り始めた。
初見でありながらも比較的明瞭なルートだったため、ヘッドランプのお世話にならずに済んだ。なお、要所にペツルのハンガーも設置されていて、フリー化されているようだ。
たった一本だが、メンバーも充実してくれたようで、満足している。何より、西日本最高という素晴らしいロケーションに、普段の登山では味わうことができない高度感、一度は登っておきたいエリアの一つである。