7月30日(水) 横山、宮重(直)、松林
合宿前の夏休みなので、トレーニングの予定を取り付けて広島に戻ることにした。“梅雨明け後の10日間”だけあって天気は晴れ(猛暑ではあるが)、予定通り中の岳のノーマルルートに向かう。中の岳は一昨年前に岳連のクライミングスクールで一度登っているので、断片的ではあるが記憶はある。
取付のテラスに出ると防災ヘリが上空に現れ、「訓練により、騒音等でご迷惑をお掛けします」とアナウンスが流れる。騒音は困るのだが、「今日は何かあっても安心じゃね」とは直子さん。ロープやギアの準備をしていると、ヘリは上の岳か奥の方へ離れていった。
暗黙の了解で、リードは全て僕が務める。テラスから脚を伸ばして前の岩に渡り、クラックからスラブ、狭いチムニーへ。チムニーを越えると尾根の傾斜は緩くなり、歩いてロープを引っ張っていく。左に見易そうな緩いチムニーが見えたのでそちらに向かったが、ロープがいっぱいになって戻り、右へ進むと見覚えのあるクラックルートの手前のリングボルトに着いた。
直子さんと横山さんを上げて、クラックを登り始める。下部では慎重さを欠き、足の置き方が悪く肝を冷やす。右手のクラックに移る箇所は、場所が悪かったか股関節が硬くなったのか、脚の開きがいっぱいで、決まっていた左足がなかなか抜けない。ビレイをしながらこちらを見上げる横山さんは無言だ。
「3ピッチ目は人工で登るところがある」と直子さんが言う。記憶によると、一昨年に登ったときは人数が多くて右に逸れたルートを取ったので、そこは通っていない。ヌンチャクを掴んでスタンスの無い岩に足を着けるが、どうにもこうにも次の手足が出ないので下の2人にヘルプ視線を送ると、横山さんが「スリングに足を掛けて登るんよ」と。最近、形のあるアブミを使えるようになったのだが、形の無いスリングを使う脳が無かった。人工の箇所を2つ越えるとその先は鞍部になっているので、このピッチは終わり。
次はチムニーのあるピッチになるが、チムニーのルートを取るとピッチが1回多く、小さい松の下を右上に上がっていくルートでは少なく済む、とのことで後者へ。出出しは垂壁でホールドが悪く、こりゃ難しいなと思っていると、後ろに壁があることに気付き、脚を突っ張って登る。その先は角度の広いクラックが斜めに入った傾斜の強い壁。支点が2つ打ってあるが位置が低いため心許なく、いざクラックに足を入れると上にも進めず下にも戻れず、かろうじて頭上に引っ掛けたカムを掴んで休む。ここは上部に腕を掛けズリズリ体を上げていくと越えることができたが、後ろを振り返るとカムが落ちていた。
直子さんからは「行き止まりのような壁でリングボルトがあるところが終了点」と聞いていたが、それらしい場所に着いたときには「これ1個では終了点にしたくない」と思い、右下に少し下って先の岩に飛び移る。スラブ帯に近付くと、斜め上から「こんにちは」と登山者の方に声を掛けられ、「やっぱりこの先が頂上か。」だが良い支点がないためうろうろしていると、下でビレイをしていた直子さんに見つかって「良いカムを持っとったじゃろ」と言われ、先ほどの壁まで戻ってカムで終了点を作り2人を上げる。
直子さんは人工でこの壁を乗っ越すそうだが、僕は気持ちが右へ逃げているので、水平クラックに手を挟んで進めるところまで進み、右下へジャンプ。これを見て笑う直子さんには「これが僕なりの解決方法です。」と主張するが、直子さんには「だったらこんなところにリングボルト打たんじゃろ。」と言われる。頂上に着いたら鎖の支点にカラビナを掛け、ロープを折り返してテラスの端で固定して2人を上げる。
久々の三倉でいろいろな登り方ができ、良いトレーニングになった。まだまだ総合力が低いことに気付かされたが、スリングに足を掛ける、カムで終了点を作る、という引き出しも増えた。汗だくになる中、僕一人の相手をしてくれた先輩2人に感謝したい。次に広島に戻るときはきっと涼しいはずなので、またお願いします。
<コースタイム>
10:00中の岳取付テラス→13:00中の岳頂上