可部線廃線後を歩く


ねこし

山行報告
可部線廃線跡 6月16日(土)~17日(日) 係 中島
参加者 武田 沖本 高田 奥原
<行動記録>
 夏草に埋もれた線路は錆びた陽射しを集めて
立ち止まる踵を知らない町に誘うよ

 枕木を踏んで歩きながら、何度も繰り返し思った。オレはテツなのか?(注 テツ・テッちゃん  鉄道マニアのこと) テツだとしたら何だ?乗りテツか?撮りテツか?(注 乗りテツ  いろんな車両に乗ることが趣味。 撮りテツ  車両の写真撮影が趣味。)違う、そんな趣味はない。まあ、乗るのは嫌いじゃないが、乗るためにどこかへ出かけたりはしない。じゃあ、何だ?何で、山岳会なのにこんな企画を出して歩いてる?あえて言えば徒歩テツか?なんだ、そりゃ。聞いたことねえ。だいたい、砂利ばかりで足の裏痛えよ。
 参加した酔狂者は、オレ以外に4人。沖本・高田 まあ、わかってないんだろう。ウルトラマン奥原 新人だし、完全にだまされてる。武田さん、これはすごい。山岳会の良心とも言うべき人がこんな企画に。感動の涙がこぼれそうになるが、同時にこれはお目付役に役員会が派遣した女工作員ではないか、とまで疑心を持ってしまう。
 さて、土曜の朝9時45分。可部駅3番線に5人が揃った。三段峡行きの汽車はこの番線から出ていたので、ここを集合場所に指定したのだ。なんか、オタクっぽいな、この行動。写真撮影の後、中心部のサンリブで買い出しをすませ、出発する。天気は良く、日射しが暑い。可部町内の線路はそのまま残っていて、またすぐにでも走らせることができそうだ。住宅街が切れるまでは、警戒して道路を歩くことにする。そう、この企画にはルールがあった。1.可能な限り廃線上を歩く。2.駅または駅跡では写真撮影をする。3.可部を出て三段峡まで21駅46キロ。よって、できれば二駅を歩いて休憩とする。 そんなとこだ。もちろん厳守すべきものでもない。ただ、遊びはルールに則った方が面白くなるだろ。
 可部市内の外れから、レールに乗り少し歩くと最初のトンネルだ。外の暑さがうそのようにトンネル内部はひんやりしている。わずか200m強のトンネルだが、進むにつれ足下は真っ暗になりヘッドライトが必須となる。トンネルの外は暑い。そして、廃線からわずか4年弱なのに、ヤブの繁茂が著しい。葛、ツタ類、タラ、謎の草々、果ては松まで生えてやがる。ヤブのひどい線路の脇を快適なアスファルト道が走っている場合など、何故このような過酷なジャングルをわざわざ歩いているのかと、可笑しくもなる。まあ、ルールだからな、仕方ない。安芸亀山、毛木と過ぎて安芸飯室で191号線と合流する。出合いだけあり、飯室の駅はまま大きい。ただ、ここから次の布までの間は路線随一のスーパーヤブ区間であった。山のヤブと違い、足下にツタがこんがらがってブービートラップのようになっている。がために、パーティーは、一歩一歩足を高くあげて前進しなければならない。まるで、どこかの国の偉大なる将軍様のための軍事パレードだぜ。結局、疲れた我々は布駅でなく、手前のポプラに滑り込み、めいめい水分やアイスなどの補給を受けた。この辺が、平地歩きの良いところだ。しかもポプラでは猫をさわれてラッキーだったしな。布の次は小河内。そこから次の安野の間はガード、鉄橋、長いトンネル、また鉄橋と盛り沢山だ。何が怖いかって、鉄橋は怖いよ。枕木は太いし、踏み外すわけはないのがわかっているんだけど、枕木を注視しながら歩いているつもりが、時々急に遥か下の河原や川面に目の焦点があっちゃうことがあるんだよね。すると足がすくむよね。まあ、半分以上の鉄橋には脇を人が安全に通れる通路みたいなのがあるんだけど、このパーティーときたら、特に初日は全員が男気を見せたがり、線路のまん中ばかり渡ってたよ。いかれてる。
 で、安野の駅だ。鉄橋を渡り、ヤブを少し抜けると景色が一変した。これまでの放置された駅と違い、駅舎とその周辺がきれいに整備されている。しかも、ホームには黄色い可部線が往事のままにオレたちを出迎えてくれている。うれしいなー、車両に出会えるとは思っていなかったから、なおさらだよなー。サプライズ!って言葉には、驚きと喜びが混じり合ったニュアンスがあると独断しているが、まさにサプライズ!って気持ちで車両にまとわりついてしまった。しかも、案内板を見ると、駅員は猫だったらしいし。もう夕方なのに、ここで大休止。おかげで、初日の目標に仮決めしていた田之尻駅には届かず、本日の列車は坪野駅止まりとなってしまった。しかし、予定など有って無きが如し。オレたちは田んぼが眼前に広がる快適な坪野駅ホームで一夜を過ごした。オッキーに食事を任せ、武田さんまでいると、たいがい良いもんが食える。この日も具沢山の豚汁に手羽煮、ポテトサラダにご飯で、大満腹だった。ありがとね。 この駅は、ホーム正面には民家がないものの、駅のすぐ裏は隣接して民家である。向こうも気になるらしく、ご近所の方が時々散歩がてらにオレらの観察をして行く。ネイティヴとの無用なトラブルは避けるのが鉄則なので、ばか騒ぎはせずすみやかに就寝。しかし、翌朝5時に起床する前に、もう散歩している人がいた。早すぎだろ、ネイティヴ。朝は、そばなどかきこんで、6時15分には出発。田之尻、津浪と過ぎると加計の町が近づいてくる。今日の行程は線路と枕木が撤去されているため残された砂利を踏んでのものとなり、これがなかなか足にこたえる。昨日から、足のマメを気にしていた高田君は、マメの拡大と破壊に苦しんでいる。マメに暮らせと言うことか。
 さて、加計駅跡に着いてみると、ここはホームの一部を残して公園化工事の最中であった。敷地に建つ太田川交流館のおじさんが、オレらに興味を持って話し掛けてきてくれる。車で走っているときに線路跡を歩くのを見かけたとのことである。うーん、結構目立つものなのね。交流館のトイレはとてもきれいで、オレや武田さんはここで水の補給を受けるが、ウルトラマン奥原君はおじさんに頼んで、バックヤードの水を汲ましてもらっている。そっかー、世間一般の人たちって、トイレの水飲まないもんなんだー。自分たちが、世間とずれているにもかかわらず、新鮮な驚きを感じてしまった。ところで、おじさんの話だと、この先に可部線車両が保存してあって、イベントのときなどまだ動くとのこと。行ってみると、いました、黄色の可部線。車庫におさまっています。その手前にはポイントが。しかもしっかり油が引いてあって、奥原君と二人でポイント切り替えして遊んでしまった。うーん、楽しい。すいません、ホントすいません。どうのこうの言って、隠れテッちゃんかも知れません。でも、好きなんです。男の子はみんな、こういう機械系と女の子が好きなんですよ。しょうがないんです。あ、脱線しましたね。さてさて、加計の町からは鉄橋で脱出、汽車は木坂、殿賀と進んで参りいます。一度に二駅歩けるのは昨日も今日も最初だけで、砂利に苦しめられるオレたちは、各駅停車で休んで行くのだった。続く上殿付近で一時的な降雨に見舞われたものの、雨は一区間分も続かなかった。上殿は戸河内インターからすぐだ。思えばずいぶん来たもんだなと、ちょっと感慨。ここで、可部線は少し遠回りをして筒賀へと向かう。筒賀駅の回りは見事な棚田が広がっており、こういうとき日本人で良かったと思ってしまう。自分で棚田の世話するわけでもないのに、勝手なもんだよな、ゴメン。筒賀からは遠回りをした分を取り戻すように、山を容赦なく貫いて線路跡は戸河内方向へと進んで行く。次の土居までの区間は、三分の二がトンネル内だ。しかし、ここで問題が。なんと、トンネル直前の線路脇に建物があり、その二階が線路と同じ高さで大浴場ではないか。遠目にも湯煙の中で裸体がうろうろしているのが見える。ヤバい。企画最大の通報ピンチだ。しかし、ここを突破しなければトンネルには入れないし、トンネルを迂回すれば倍行程だ。第一、ここで逃げたら男がすたる。しかし、テツではあっても、断固変態ではない。ってなわけで、風呂側に背を向けつつ、身をかがめて走って突破とすることにした。一人ずつ、「ひえぃー」と叫びながら突破し、何かに追われるように漆黒のトンネルへと転がり込む。普通、逆だよな。服着た側が逃げないよな、とか思ってたらオッキーが、「男湯でしたね。」テメーッ、見てんじゃねー。 ここのトンネルは長い。しかし、真っ直ぐ1キロ以上先の出口の明かりが小さく見える。光に導かれるように、暗闇を歩くと上も下もないような、誰もいないような、誰かいるような不思議な感覚に捕われる。まさに非日常空間である。トンネルを抜け、子供達に後ろ指を指されながら土居を過ぎればそこは戸河内だ。しかし、砂利も線路も駅舎も全撤去されている。最低だよ、戸河内。他の駅を見習えよな。お前らには風流ってのがわかんねえのか、悔い改めよ。とか、つぶやきながらバス時刻表を見ると、三段峡からのバスが1時間後に来る。その後は、3時間後だ。ってことは、三段峡まで50分で駆け抜けろってことかい。武田さんが、みんなに発破をかけ、拍車もかけ、ムチも入れる。そうそう、道中、武田さんが、三段峡に着いたらソフトクリームとか食べても良いかも、とか言うもんだから、オレを始めとしてみんなの頭の中はソフトクリームで一杯だ。もう、耳からクリームが垂れ流れそうだぜ。それだけを頼りに、最後の一区間をかつてないスピードで歩き続ける。バスは、3時半だが、ソフトタイムを見込んで、3時20分には着きたい。ほうれ急げ、そうれ歩けと激を飛ばしながら、ガードを越え、トンネルを抜け、鉄橋を渡り、フェンスはもんどうり打って転がり越え、最後のトンネルを越えると、ほら、終着点の建物が見えて来た。もう20分だよ、小走りに行け。  22分、三段峡駅跡着。ザックを置いて記念撮影。まだバスは来ていない。ソフトクリーム買い出しにしゅっぱーっつ。って、武田さん、売ってないじゃないですか、どこの売店にもソフトないじゃないっすか。ウルトラマン、セブンティーンアイスを自販機で買って不満そうじゃないですか、オレとオッキー、なぜかかき氷持ってるじゃないですか。宇治を頼んで舌が真緑っすよ。というわけで、6月20日の山嶺の集いでは、ソフトクリーム食べてました、はい。三段峡の仇をたむらで討つ。  まあ、みんな良く付いて来てくれた。ありがとね。可部線バンザイ。

このまま気づかずに通り過ぎてしまえなくて
何処まで歩いても終わりのない夏の線路
いつでもまなざしは眩しすぎる空を越えて
どんなに離れても遠く君に続く線路
(遊佐未森  夏草の線路  歌詞は工藤順子による) 

主要駅到着時間  今井田6月16日11:50  毛木13:40  布(ポプラ)15:10  安野17:20  水之内19:00  坪野19:40  田之尻6月17日7:20  香草8:35  加計9:30  木坂10:18  殿賀11:05  上殿11:50  筒賀13:10  戸河内14:30  三段峡15:22

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