6月7日(土) 松林
参加者:吉村(光)
前週は天気が良く沢に入れたので、この日は岩登りのトレーニングを出そうと思っていた。しかし僕がしばらく広島を離れる可能性があることを吉村さんに伝えたところ、「じゃあ、沢をやろうか」と二週連続の沢登りとなった。
瀬戸の滝登山口に着くと、山口ナンバーの車で来ていた若いパーティーがちょうど出発するところだった。彼らは瀬戸谷を遡行するそうだ。我々も支度をして遊歩道の脇から入渓する。
前日は良く雨が降っており水の勢いが強い。初っ端から深い淵が連続して現れてやねこいへつりを強いられるが、淵を過ぎると沢の幅が広くなり、浅瀬や石伝いで容易に進めた。瀬戸の滝の少し手前、沢が倒木で詰まって遊歩道に出た先で、小滝の釜に差し掛かる。この釜のへつりが難しく、滑落して水に浸かる。「探せば(ホールド、スタンスが)あるよ」と言っていた後続の吉村さんも、「こりゃ無理じゃ」と釜に入った。
瀬戸の滝に着くと、山口のパーティーがロープを出して右岸側を登っていた。我々は一本の太い倒木の上を慎重に進んで右手のアライ谷へ入る。アライ谷は見るからに急峻で、倒木が多く荒れている。序盤は棚になっていて登り易いが、F2だろうか、傾斜のきつい滝が出てきて右手の草付きを巻くことになる。草付きといっても、流れてきた土砂が岩盤の斜面の狭い段差に散らばって乗っていて、そこに草が生えているだけ、という状態。足は上から押さえつけるので不安はないが、手で草を引っ張るように持つと崩壊しそうだ。草付きを登って行くと木も出てきて足元が安定し、この沢で一番大きなF3も序でに巻いて行く。
F3の先で沢に戻り、長いトユ状のF4を登る。幅が狭く倒木が多いが、倒木を踏み台にして棚を越えたり、と難しくはない。F5,6,7はどれがどれか記憶にないが、左寄りに水飛沫の上がる滝が現れる。少し登って偵察したところさほど難しくなさそうだが、支点が欲しいのと先が見えないのでロープを出すことにする。流れの左側から取り付き、右側へ渡ってカムを1つセットする。そのまま真っ直ぐ登ってもう一つの(最後の)カムを奥のリスにセットしようとするが、これでは右上の張り出し岩を避けて登るラインと離れていて、スリングで長めに取ると墜落距離が長くなるではないか。あれこれ悩んで時間が掛かったが、張り出し岩の下の隙間にカムを挟めば良いという回答に辿り着く。右上のテラスに出るとスリングを掛けられるチョックストーンがあり、その先は難しくなさそう。またロープも屈曲していたのでここでピッチを切って吉村さんを上げた。
ロープを抱えたまま遡行図にある「岩のトンネル(?)」を登ると、沢は急に平坦になった。少し進むと岩盤もほとんど見えなくなって両脇は笹や樹木の緩い斜面となり、吉村さんも「終わった感があるの」と。滑滝が1つか2つあった以外は平坦な川底歩きでスタスタと足が進むが、ところどころにワサビが生えていて吉村さんの説明が始まる。「こういうところにワサビは自然には生えないので、恐らくこの上流にワサビ田があったのだろう。ワサビの葉は丸く光沢があるので他のと間違えないように」と。
標高800m手前の二俣分れまで来て、ここで片付け。本流の左俣へ進んでも山頂へ行く訳でもないし、「もう(滝などの難しい部分は)終わっている」ので右俣を詰める。上部のヤブは激しくなく、斜度も急ではなく、すんなりと登山道のやせ尾根部分に到達する。少し休憩して馴染みの登山道を下って終了。
駐車場で片付けを済ませて出ようとすると、山口のパーティーが登山道を勢いよく下って来て、僕が下山途中に落とした地図を渡してくれた。彼らはアライ谷よりも大分長い瀬戸谷を遡行していたのでその速さに驚いたが、吉村さんは「彼らはワサビだとか炭焼き窯だとか気に留めずに、登ることばかりに集中しとるんじゃろ。ワシも若いころはそうじゃった。」と。
後で聞いてみると、今回のアライ谷も吉村さんには初めての沢だったらしい。先頭を譲って考えさせてくれる吉村さんに感謝だ。
<コースタイム>
9:05瀬戸の滝登山口→9:46瀬戸の滝→10:15 F7(?)10:38→11:14二俣分れ11:40→12:06尾根出合→13:00瀬戸の滝登山口