2月19~20日
参加者:名越、川崎
<行動記録>
当初は神庭さんも参加予定だったので、登攀組(名越・神庭)と歩き組(元廣・川崎)に分かれて行動するつもりでした。歩き組のルートはどうしようか? 夏道ピストンじゃ、芸がないかぁ~ 七号尾根を登って、天気と雪の状態がよかったら、縦走しようかしらん。ロープ要るよね、確保できるかなぁ、なぞと悩ましく(も楽しく?)悶々していると、家族から「こやつ、またよからぬことを考えとるな」と冷たい視線が…
出発前夜、神庭さんより負傷でキャンセルの報せあり。あぁ、このメンバーならば、名越さんにリードしてもらえると思うと、(情けないが)一挙に気がぬけた。名越さんから「やさしいルートを案内するから、登攀の準備をしてこい」とメールあり。我々にとっては、やさしくないルートであることはこれまでの経験からわかりきったことなので、また緊張感が甦る。
神庭さんによると、木~金にかけて米子市内ではかなり雨が降ったので、おそらく大山では雪のはず。金曜夜からぐっと冷えこんできたので、雪のコンディションは期待できそう。
19日(土)
12:40広島市内発。天気よし。車内から臨む、大山の雄姿はいつ観ても心がときめくなぁ。枡水から大山寺の区間が通行禁止のため、少々の迂回、17:20仁王茶屋着。
毎冬、シーズン初めに、元谷小屋に向けて20kg超の荷をかついで、ヘッドランプ点けて歩くと、いつも「何でこんなしんどいことしてるんだろう」と嘆き、次に「よし、無雪期に歩荷訓練するぞー」と決意するのだが… 今年もまた同じ感慨にとらわれ、進歩なし。元谷にいたると、北壁の稜線が白く輝いていた。
19時、元谷小屋着。のぞいてみるが、予想通り満員。しかも皆すでに睡眠体勢。ボーダーって、お酒飲まないの? 小屋そばの、どなたかが整地してくださったテントスペースをありがたく使わしてもらう。1月の烏ヶ山山行で、横山さんが食料係をされて、「やっぱ冬山テント泊は皆で鍋だ!」といたく感動した係は、今回も真似してみました。しかしコッフェルで炊いた無洗米は焦げた芯飯に、しかも神庭さん仕様で準備した鍋は量が多すぎた。ごはんは明朝に雑炊しても、あまってしまいました。(結局、川崎さんが持って帰って、焼鯖と一緒に食べたよね?) お酒もすすみ、中年新人2人の見当違いな質問に、ヒマラヤニストはあきれかえっていたような気が…
20日(日)
5時起床。6時出発の予定だったが、よく考えると(考えなくとも)、1時間で準備できるはずがない。出発できたのは、6:50であった。時間意識なさすぎで、係失格でございます、反省。
今日のルートは別山バットレス。取り付きまでトレースがついているので、1時間ほどで到着。ラッセルがないと、高速道路を走っている気分。名越さんは神庭さんと「幻のカンテ」を登るつもりだったらしく、「こんなよいコンディションはめったにないのに~」と悔しがってはった。ご両人には申し訳ないが、係としては、待ちこがれた別山登攀。喜びをかくしきれませぬ。
別山バットレス、末端から取り付けることはなかなかないそう。今冬の大雪でぺったりと雪がついたようだ。
名越さんリード、元廣・川崎フォローで登攀スタート。支点がないときは、これで確保しろということで、デッドマンを渡される。頼りない細引きがついているなと思っていたら、ケブラーだそうで、ワイヤー並の強度だそうな。
1~2P目:ブッシュ混じりの雪稜を快適に登る。ブッシュにスリングで支点をとってはった。雲ひとつない青空、雪も締まり、アイゼンとアックスがよく決まる。撮影時、いい気になってポーズをとっていると、「こりゃー、緊張感もってやれー」と叱られた中年ボーイズでした。
3P目:1ヶ所、垂壁気味の岩稜。フォローなので、巻かずに正面突破を図るが、アックスが決まらない。パンプしてくると、手先が急激に冷えてくる。アックスはほうって、手で登った。名越さんから、リードはアックスで保険をかけるが、フォローはスピード勝負。手で登れるところは、さっさと登ってしまえとアドバイスを受ける。岩角で支点をとってはった。分散支点がとれぬ場合の、バックアップのとり方を教わる。傾斜がきつくなり、高度感がすごい。
4P目:リードはすぐに姿が見えなくなる。けっこう時間がかかるなぁ~、ちょっと風が出てきて冷えてきた、と思っていたら、ロープがくいくいと引かれる。ビレイ解除かと思い、呼んでも、笛を鳴らしても通じない。風で聞こえなかったようだ。
5P目:核心かな? 垂壁、岩と氷と雪とブッシュを、アックスと手とアイゼンを駆使して、何でもありで登る。どれも効きそうで、効かない。恐怖感で(いつものように)声がでてしまうけど、これはめちゃ楽しいかも。登りきると、名越さんが「どうやぁー、ちょっとは面白いやろぅ」アルパインの初歩とのことですが、いやぁ~ 堪能させていただきました。
6P目:雪稜を登りきると、別山山頂12:15到着。ひぇー、ナイフです、とんがっています。
以前から、別山って、将棋の駒 or ぬりかべ or 翼を休めた鷹? さまざまな連想が浮かびますが、何であんな形状なんでしょうか。地質に詳しい偉い人、教えてください。
山頂から西稜までナイフリッジを歩くと(ほとんど平均台)、ラッペル支点があり確保。最後の難関、吊尾根をそろりそろりと歩いて降りる。普段はまたいでずりずりとはいずり降りるそうなので、今回はまだましだそうです。少し平坦なコルに出て、1本とる。
「うーん、気持ちいい。きれい。すごい。(他に言い様がない)」中年新人2人は子どものようにはしゃいでしまいました。名越さんが「川崎君、弥山山頂にいったことある」「ないです」「じゃ、行こうか。いつもは右の沢(別山沢)を降りるんじゃが」(←私はこの意味がよくわかっていなかった。)
ロープを外したが、我々は実はもう1Pロープが欲しかった。だってナイフリッジだもの。夏道に向かう斜面は完全にクラストしていて、アックスとアイゼンが面白いように決まった。「バチ効き」とはこういうことなのね。
夏道は強風が吹き荒れていたが、弥山山頂はおだやかであった。珍しく記念撮影しまくった。
さて、夏道を降りるんですよね。えっ、どこへ行くの?というわけで、心優しき名ガイドは、山岳会の鬼に豹変していたのであった。「七号沢、ここ下りて」「前向きですか?」「当たり前じゃー」と何度目かのダメ出しをくらう。こんなところを下りるなんて「どうかしてるぜっ」とつぶやく余裕もなく、前向きで下りてはみるが、あきません。ジェットコースターもバンジージャンプも嫌いな僕です。家族のためにも無理はいけないと言い訳して、バックステップに切替えます。アックスが決まると、ちょっと安心。のどがからからなんですけど。ようやくなだらかな斜面に至り、前向きで下りてみる。恐怖感からへっぴり腰になると滑るんやなとわかってきた。少しはこつがつかめたかな。15:15、元谷小屋着。
冬山しかも大山の係は初めてだったので、えらく緊張しましたが、無事に事故怪我なく終了できました。皆さん、ありがとうございました。いつの日か、こうゆうルートをつるべでさくさく登れたら、と夢想するこの頃です♪
<コースタイム>
6:50 元谷小屋~8:00 末端取付~12:15 別山山頂~13:15 弥山山頂~15:15 元谷小屋