2011年7月30日~31日
安藤、武田、(夜:宮重夫妻)
<行動記録>
雨上がりで湿度100パーセント、ブヨの大群、藪漕ぎ。何でこんなところにいるんだろう。今週は甲川じゃなかったっけ?土曜の午後、参加者は少なからずそう思ったことと思う。そう、ここは阿弥陀川上部。吉村さんが直前に足の故障で参加できなくなり、メンバーと日程を勘案すると上の廊下の突破はリスクが高いと判断、中の廊下までの日帰りに計画変更した。よって土曜は阿弥陀川の二つの滝を見学することになったのだ。
土曜昼、丸合で合流して大山まで上がってみると、まさかの豪雨。山行中止にしようかとも思ったが、どうせ明日は濡れるのだから、濡れる装備で滝見学に向かうことに決定。川床で準備していると雨は上がった。沢装備で阿弥陀川入渓。普段は踏み跡をたどる所だが、今回は沢通しに溯行する。雨上がりの沢も静かで気持ちいい。上流から夫婦らしき二人が下りて来た。地元の林業クライマー、岩﨑夫妻だった。同じく滝見学をしていたようだが、あの豪雨にやられて大変だったそうだ。東谷を過ぎてしばらく行くと、阿弥陀滝の手前で左から支沢が入っている。これへ入って10分、名前はわからないが20mくらいの滝にあたる。下部は落ちてきた流木ですっきりしないが、硬そうな岩の荒々しい滝だった。記念撮影してから引き返し、本流に戻って3分で阿弥陀滝へ到着。こちらは三滝寺のように静かな滝で雰囲気が良い。
さて見学は終わった。ここから宝珠尾根の縦走路へ巻き道があるのだが、我々はまだ行ったことがなかった。どこにあるか判らない巻き道を探しに滝の左岸にあるルンゼを詰めてみたが、泥の急斜面に突き当たり引き返す。ルートはそのルンゼの右手にある尾根上だった。木登り状態で高度を稼ぎ、あっという間に眼下遠くへ阿弥陀川が離れていった。登りきると宝珠尾根へのトラバースになる。徐々にルートがわかり難くなるが、注意を払っていれば踏み跡とテープを見つけることができる。冒頭で紹介のとおり、快適という言葉とは無縁の世界。みなさん無口だ。あの武田さんも体調が悪くなったころ、宝珠山と下宝珠越の間の縦走路へ抜けた。滝から約1時間。宝珠山山頂で休憩してから中の原スキー場を経由して川床へ戻った。今晩は香取の展望駐車場でキャンプする。暑い広島を逃れて、宮重夫妻もキャンプのみ参加された。
翌朝テントから出てみると、安藤さんが「今日は無理じゃ、足が腫れて痛い。」と言われている。見れば引きずりながら痛そうに歩いていて、山行どころでは無いようだった。昨日の長いトラバースと、スキー場の長い下りを沢靴で通したため、足首へ負担が集中して症状が出たのだろう。やはり登山靴も用意するべきだった。安藤さんは待っていてくれるということで、武田さんと二人で溯行することになった。
香取林道の分岐へ車をデポし、安藤さんにウグイス橋へ送ってもらう。入渓するとすぐに釣り師がルアーで淵を狙っていた。三度のキャスティングで見事に岩魚を釣り上げていた。釣り師には悪いが先行させてもらう。下段の滝と上段の淵からなるF2に25分で到着。下段の滝は立て掛けてある立木で乗り越し、上段の淵はビレイして左岸から小さく巻く。その上にも滝と釜があるので、右岸を微妙にへつって越える。10分進むと右岸から落ちてくる25mの立派な滝を見る。
そのすぐ先に1mのF3が見える。1mの滝なんて、ほかの沢では滝に数えないかもしれないが、この滝は難易度が高いのだ。泳いでいって取り付き、水中ショルダーで越えるか、昨年左の窪みに打っておいたハーケンを使って人工で越える。しかし今年は左岸から巻いてパスした。長い淵を泳ぐところで、武田さんが流されそうだったのでロープを投げて引いた。ダメですよ、流心にまともに向かっちゃ。
F3から50分で核心のF4。長い淵を泳いだ先に斜滝があり、左岸に取り付いて、スリングを持ちながら斜滝をまたぐ。続く武田さんをロープで引き、二人が揃うと身体がガタガタ震えて止まらない。続く流れの速い淵と滝は、人工で右岸を巻くこともできるのだが、淵へ飛び込んで必死に泳ぎ、滝直下を左岸の壁を蹴って右岸へ渡り、流されながら側壁へ手を伸ばしてしがみつき、水から上がったときには全身の力を吸い取られたようだった。溺れたときにはロープを引くように武田さんに頼んでおいたのだが、溺れているのかと思って引こうかと悩んだそうだ。ともくかく突破。次回はザック置いてフリーで泳ごう。下の廊下が終わり、日当たりの良いところで休憩する。
中の滝、中の廊下と続くのだが、どこからどこまでか良くわからない。F6は元気があれば右の本流沿いに登るのだが、寒くてたまらないので左の枯れ滝っぽいところを登った。続くF7は広く明るい滝で、3箇所から水が落ちている。正面の滝をシャワークライミングして越える。谷はここから穏やかになり、20分ほど進み、そろそろ右手に小さなテープがあると思って探すが見当たらないので、ちょっとオシッコしてたら、足元にマムシがとぐろを巻いていた、危ない危ない。そこでふと見ると赤いテープを発見した。今回も楽しかった。溯行終了である。
ここからジグザグに斜面を上がり、尾根を越えると笹やぶをトラバースして、最後にもうひとつ尾根を越えて香取の牧草地へ出た。甲川から香取牧草地までの抜け道はもう一本あり、もう少し上流側、上の廊下の手前あたりにあったと思う。そちらは斜面でなく尾根を登る道で、距離も短い。
香取の展望駐車場へ戻ると、東屋のテーブルに大きな荷物が置いてあった。近くまで行くと動き出し、よく見れば安藤さんだった。足はますます腫れて、オートマチック車でなければ広島へ帰れないくらいになっていた。後日聞いたら、重症の捻挫で、20年前の古傷が原因ではないかとのことであった。
<コースタイム>
30日
12:40川床 → 13:50支流の滝 → 14:10阿弥陀滝14:40 → 15:40宝珠山 → 16:50川床
31日
8:40ウグイス橋 → 9:05F2 → 9:45F3 → 10:45F4 → 12:40F7 → 13:40溯行終了 → 14:45香取牧草地