夏山合宿 剱岳


吉村光俊

2012年8月10日~15日
参加者:三谷、元廣、平本、徳永、保見、兼森

 今回の合宿のテーマは、新人4人の参加もあり、「剱岳での登攀、縦走を通じて大きな山の厳しさと楽しさを体験し、連れてって登山からの脱却」とした。

 10日夜9時に横川駅北口で1台4名、大町駅でもう1台3名が合流し、広島ICから高速に乗る。名神の草津SAにて、テントで3時間の仮眠をとる。

 11日晴れのち霧 立山駅近くの駐車場に上手く2台の車を駐車でき、黒部アルペンルートを使い、室堂に着く。下界の暑さがうそのように、肌寒い。13時より登山開始。天気予報では、11日より雨の予報であったが、晴れている。雷鳥坂の登りでは、暑くなる。16時に剣沢キャンプ場に到着。
(3時間行動)

 12日晴れ 快晴の登攀日和。全員でⅥ峰C・Dフェースを登攀の予定で、5時前に出発する。30分ほど剱沢を下降すると雪渓となり、アイゼンを装着し長次郎出合を経て、長次郎雪渓を詰めていく。このあたりから真砂ベースのクライマーも加えて、Ⅵ峰フェースを登るパーティーとの競争になる。遅れだした兼森を私がサポートし、他の者には先に行き順番を確保してもらう。
 Cフェース剣稜会ルートに三谷・平本、吉村・兼森・徳永、Dフェース富山大ルートに元廣・保見と分かれて取り付く。人気の剣稜会ルートは、すでに数パーティーが登っており、取り付にも前に3パーティーが順番待ちである。今年は雪渓の雪が多く残っており、日陰の取り付は寒い。やっと登る番が来て三谷組が先行し、吉村組が続く。
 1Pバンド状を左上していく。岩は硬くてホールドもしっかりしていて快適だ。2P終了間際の浮石帯以外は。2P終了点は大きなテラスで、先行パーティーが3Pを手間取っており、このテラスに十数人が大渋滞。日当たりが良くなり暑い。隣のパーティーに可愛い女性がいるとかくだらないことをしゃべっていると、やっと三谷組が3Pへ動き出す。吉村組も続く。傾斜が有るが、スタンス、ホールドもしっかりしており、なんてことはない。4P目、このルートの花のナイフエッジに出る。足元は長次郎雪渓に切れ落ちて、高度感抜群。源次郎尾根を懸垂しているクライマーが見える。剱岳頂上には多くの登山者。日本離れした素晴らしい景色だ。このナイフエッジは右下にスタンスが続いており、エッジを手で押さえて簡単にトラバースできる。後続の兼森にそのことを伝え、ロープ曳きに精を出していて、ハッと後を見ると兼森がエッジに馬乗りになっている!人の言うことを気かんかい。徳永は最後を問題なく、フォローしてくる。三谷組の平本も順調に、登っている。5P簡単に終了点に着き登攀終了。行動食を摂りながら、隣のDフェースを登っている元廣組の話になる。彼らの姿を同じ剣稜会ルートの後方で見たとか。何でや?休憩をたっぷりとり、元廣組と合流する三谷を残し、5・6のコルへ向けて縦走路を下降する。この道が途中で崩れていて、悪かった。15mと50mの懸垂2回で5・6のコルに降り立つ。時間が押してきていたので、急いで長次郎雪渓を下り、剱沢雪渓を登ってテント場を目指す。最後はヘロヘロになりながら18時半ころ帰着。登攀組3人は、明日チンネ左稜線を登るため三ノ窓で、ツエルト泊。
(13時間行動、時間待ちを含む)

 13日曇りのち雨 縦走組の予定は池の平から三ノ窓までの北方稜線。予報では雨で東海、近畿は大雨とか。一部を除いて登攀道具等不要な物は、ツエルトにくるんでデポした。朝から雨の場合は停滞と決めていたが、出発の5時15分では曇りだったので、剱沢の下降を始める。真砂の手前でザーザー降り始め小屋でトイレ雨宿り休憩。小止みになったので二股へ下降したが、降ったり止んだり。二股の岩小屋で行動食を摂った後、仙人池分岐までの急坂をヒーヒー言いながら2時間の登り。池の平小屋で北方稜線の状況を聞く。鉱山道は事故はあるものの使える、小窓の頭の先の雪渓がかなり残っており、動けなくなりビバークした登山者もいるとか。北方稜線は10年ほど前に大前さんとトレースしたことが有り、概念とポイントは頭に入っているはず。鉱山道は大正年間にモリブデンを採掘するために付けられたようで、池の平小屋も最初は鉱山の現場事務所、飯場だったらしい。小屋の前にもあったが、鉱山道を歩いているとモリブデンと思われる銀色に輝く柔らかい金属が、岩に付着していた。鉱山道から小窓雪渓に出て、アイゼンを付けて小窓まで一気に登る。
 いよいよ、北方稜線だ。ここから私が先頭で誘導していく。ルートは小窓の王手前まではすべて東側を行く。ガスが掛り展望が利かない。道が不明瞭なところもあり、行ったり来たり。小窓の頭の先の雪渓の横断は、普段は5m程度でアイゼンなしで行けるが、今回は山盛りの20mで迷わず、アイゼン装着して渡った。ここから150mほどの登りで、小窓の王手前のコルにやっと着く。あとは小窓の王西側のバンドを下降すれば、三ノ窓だ。到着予定時間から1時間遅れている。相変わらずの霧の中三ノ窓の一番下のテン場に着き、ドーテをコールするが返答なし。登攀組はこの雨でチンネは登らずにすでに撤収したのか?数度のコールの後、ドーテの返答。そして仲間の姿がぼんやり見えてきた。たった1日ぶりの再会だったが、グッときた。
 保見が雪を溶かして水を作り、元廣が温かい紅茶を差し出してくれる。美味い、有難う。小雨の中テントに入り全員で夕食を摂っていると、黄色い光が走りドカン。それからひどい雷雨となった。登攀組はやはりチンネの2Pで雨のため敗退していた。
(11時間半行動)

 14日曇りのち霧雨 昨晩はテントとツエルトに分かれて寝た。テントは夜来の大雨で、浸水&ウオーターベッド状態、ゴアのシュラフカバーの防水が効いて、体までは濡れなかった。今日も3時起き、5時出発で、天気は曇り。今日の予定は北方稜線を剱岳頂上経由して、剣沢テント場でデポ品を回収して室堂まで歩き、今日のうちに高速SA泊まり深夜割引を利用しようという目論見。ルートを知っている三谷・吉村が先頭で進む。池ノ谷ガーリーは相変わらず足元は浮石だらけで不安定だ。池ノ谷乗越からは岩稜登り。雨にぬれた岩は滑りやすい。稜線に出ると西側の崩壊が進んでおり、不安定なところもある。今日もガスで展望が効かず、先頭の二人がルートを確認しながら進む。長次郎の頭をバンドで回り込んだところに懸垂の支点が有る。普段ならクライミングダウンだが、岩が濡れているので、大事を取って15mの懸垂で抜けた。後は稜線沿いに本峰へ登るのみ。霧の中の頂上には一般登山客1名のみで、さみしい。記念撮影をして寒くなるので、すぐに下山にかかる。ここからは一般登山道なのだが、スタンスが登山靴でつるつるに磨かれて、更に雨に濡れて良く滑った。なんか、鎖場がえらい増えたような気がした。気の抜けない下山道は一服剱を越えてやっと安定した登山道となった頃ガスの中に、剣山荘が見えテン場まであと一息。予定より1時間遅れで到着。デポ品を回収し、遅れ気味の女子の荷を取り分け、一番遅い兼森を先頭に、別山乗越、雷鳥坂を下る。遅れたら教育的指導をしながら雷鳥平を過ぎる。そして最後の室堂までの登りは、4日間の疲れが重なり、牛歩のごとく進む。室堂バスターミナル前に着いて、合宿登山行動終了を告げ、全員と握手。4日間お疲れ様でした。
(10時間半行動) 
 バス乗場に行くと、ジャストタイムで、我々7人が乗り込んだ途端にバスが発車した。立山駅下で車に乗り、亀谷温泉の国民宿舎白樺ハイツで汗を流す。立山ICで高速に乗り、東海北陸道に入る。今晩の宿、ひるがの高原SAに近づくと、今回の合宿のフィナーレにふさわしく、土砂降りの雨となった。

 新人4人を連れての雨の剱岳夏合宿、全員無事に下山、帰広出来て良かった。特に新人達の本チャン岩登りは、本人達の立っての希望で計画に取り入れた。しかし、7月の大山プレ合宿で、マルチピッチのシステム練習をしたが、間違いはする、時間は掛る。土クラで何を習ってきたのか?本チャンじゃ、誰も教えてくれんぞ。覚悟を決めて、技術を身に着けよ。8/5の合宿前最後の天応で、システムの仕上げがやっとできた。
 合宿では檄を飛ばして厳しい事を言ったが、安全登山の為、君たちのこれからの為と思ってのことだ。体力、技術、精神力、仲間の力等、大きな山に登るにはこれらの総合力が必要なことを感じたであろうか?自分に足りないものを反省し、更に精進してください。そして、楽しい山行を共にしましょう。

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