日程:2013年10月12日~16日
参加者:宮本、(会員外)宇田
←離山の奇岩
<行動記録>
皆様ご無沙汰してます。今回、大失敗がありましたので反省の意味も含め投稿いたします。
再び石空川(いしうとろかわ)を訪れる。前回は2008年9月に南沢下半部を遡行(log17-2 #87)。今回の北沢は南沢ほど急峻ではないものの流程が長くかつ下山路も長い。標準で2泊3日山行となり私の最近の遡行ペースでは時間が足りない可能性がある。そこで遡行&下山距離を短くしようと思い、バリエーションルートである離山ルートを下山路にとったのが大誤算だった。離山岩峰群の通過と踏み跡希薄なルート探しに要する時間の読みの甘さから2日間も下山が延びる異常事態となり、同行の宇田さんにも迷惑かけて不安にさせてしまい、家族にも大いに心配をかけてしまい、猛省すべき山行となった。
12日(1日目)、精進ヶ滝~二俣を北沢へ。
アプローチの遊歩道は過去何度かのトライや撤退ですっかりおなじみの道。九段ノ滝&精進ヶ滝を望める滝見台で遊歩道は終わり、沢に入る。二俣までは南沢遡行で経験済み。精進ヶ滝120mは高さもさることながら、側壁が屏風状に滝の高さ以上に幅広で圧倒的大空間を形成している。ただ、石空川は規模の割に水量が少なく、もう少し水量があるともっと迫力が増すだろう。(その大迫力は帰り道に体験することになった)精進ヶ滝高巻きは前回通りでなく、壁の途中に入るルンゼを登ってショートカットしようと思ったが終盤でボロボロのザレ土壁になってしまい、危なくて登れずに引き返してタイムロス。その後前回と同じく左岸を大きく巻く。
やがて南沢北沢を分ける二股に着く。前回南沢の核心部がこの部分の厳しい高巻きだった。北沢の出合の滝は南と違って楽に巻ける。懸垂で沢に下りた後は散漫な感じで滝が現れるが、つるっとした花崗岩で手も足も出ず、全て巻いていく。夕刻となった頃に何張りでもテントが張れる広々とした実に素晴らしいテン場が現れ、一番いい場所はどこか、選ぶのに迷ってしまうくらい。今日は大前さんの命日。昔一緒に行った沢のことを思い出しながら焚火を眺めていた。
13日(2日目)、2000m付近二股まで遡行。
この日も数えきれないくらい滝が現れるがほぼ全て高巻き。ポイントは50mと35mの大滝の高巻きで、厳しい部分がある。北沢は水量乏しく、これらの大滝も水流が細いのが惜しい。水量乏しいものの渓魚は豊富。自分に釣りの技術がないのが残念だった。そのうち手掴みできないかと思い始め、岩の下に手を差し入れると魚に触れる。触ると逃げてしまうが、不思議なことに何度逃げても同じ場所に戻って隠れており、こちらも頑張って何度も手を突っ込む。ぬるぬるで何度も取り逃がすがついには1匹捕まえてしまった。27~28㎝くらい。岩魚?かと思うが特有の斑が見られない。ともかく晩に焚火で焼いておいしくいただいた。この日は2000m付近の上部二股に泊まる。
14日(3日目)、沢を詰めた後、離山第2高点でルートミスの末、日暮れ
上部でも20m位の滝が続いて相変わらず巻いていく。2160m付近で高原状の広々とした最後の二俣を右俣(本流は左俣)に入り、更に枝沢を登ると15分で離山直下のコルに出た。ここまでは順調と思え、この日は下山できると勘違いしていた。この後の選択は計画通りに標高2300m前後のピークが連なる離山と第1~第5高点を通過し、概ね北沢に沿う尾根を経て入山地に戻るルート、または北沢と反対側の大武川ミツクチ沢の源流に降り、そこから高度差450m登って地蔵岳を経て一般登山道で降りるルートが考えられたが、予定通り離山ルートへ。
コルから離山への登りは風化した花崗岩の岩場を登るが部分的に急でロープを付ける。初っ端から随分厳しいルートだと思った。離山と第1高点の間のコルには通称モアイ岩と呼ばれている特徴ある風化花崗岩地形が見られる。第1高点への登りは緩く楽に登れ、ピークからの下りは岩場を縫うように急な石楠花斜面を下り、第1第2高点間のコルに降りたつ。第2高点は急な岩峰で正面は登れずにコルより少しミツクチ沢側に下って巻くことになる。ここで下り過ぎて大きく巻き過ぎ、その後迷い道へ引き込まれていくのだった。
急斜面をかすかな踏み跡を頼りに巻いていくが絶壁行き止まりに。仕方なくミツクチ沢方面に伸びる派生尾根をさらに下っていき、どうにか歩行可能な傾斜になったあたりから元の方向へ急斜面をトラバース。途中から草付きになり条件悪化。第2高点岩壁中間部のバンドをトラバースする恐ろしいルートを通り、第2第3高点間のコルに続くと思われるルンゼに取り付く。しかしすぐにチョックストンに阻まれて登れないのでルートを探すと超急傾斜の草付きを登っているようである。もはや沢での高巻きより遥かに悪い草付き登攀となり、登ってみるものの次は全く登れないチョックストンが構えておりアウト。戻ってトラバースして別ルートを探すが急すぎて無理。あまりに悪いので違うような気もしていたが自分同様に迷った先行者が付けた間違いルートだった。引き返すしかない。
先の派生尾根基部に戻ったあたりで日暮れ、この間違いで約3時間のロス。正しいルートがわからず地形も険しいので夜間行動は危険。今日の下山は不可能となりここでビバークするしかなかった。この日は朝出発が遅れ、これも時間不足の要因になったと思う。予定通り降りられないので家に携帯で連絡し、会社にも休む旨伝えてもらう。電話がつながる場所だったのが不幸中の幸いだった。
15日(4日目)、第2~第5高点を通過、P1897.7mからの下りでルートわからずに、日暮れ、またもやビバーク
出発して前日の第1第2高点間のコルに戻る。コル手前で本来のルートを発見。昨日途中まで確認にきたところだったが、なぜわからなかったのか悔やまれた。第2高点を小さく巻いてあっという間に第2第3高点間のコルに着いた。第3高点も巻いて第3第4高点間の高差のあるコルには2度の懸垂下降。第4高点あたりで雨が降りだす。台風が接近していたためだ。第5高点を過ぎてもやせた岩稜が所々現れ、相変わらず厳しいルートだった。
1914mピークを過ぎるとやっと穏やかな山稜となり短い笹原の尾根を進む。このあたりからは作業路があるとの情報だったが、迷走気味の獣道と交錯しまくり、さっぱりわからない。1897.7m通称熊小屋ピークは三角点だがこれが見つけられず、現在地特定に多少の不安を抱いた。この時点では今日こそは下山できると思っていた。
P1897.7mからは東に下るが、広い尾根で非常にわかりにくいところ。作業路か獣道か判然としない踏み跡をあてにして尾根を降りていくが、だんだん様子がおかしくなる。間違っていた場合は急傾斜の沢に下りてしまうが全般に地形が険しい山なので沢の下降は危険と考えられた。樹林の間にぼんやりと見える隣りの尾根がどうも地図との一致性が高いと思われた。やはり間違ったと考え引き返す。ここで日暮れとなってしまい、正しいルートを探せないため夜間行動は無理、本日も下山不可能となる。
雨が強く振っている中、ツェルトを広げ、中に入ったものの水の通り道だったようで床上浸水している有様。シュラフカバーの防水性だけが頼りだった。苦労して寝る支度をし、家に再び電話。かろうじてつながる状態だった。明日の朝には台風が最接近するため、家族をひどく心配させることになった。会社は2日間も急に休む羽目になってしまい、本当に大変なことになってしまった。予備食は昨晩食べてしまったので、行動食の残りだけが頼り。それよりも水不足が心配だったが、これは大雨の中コッヘルを並べておくことで確保され、ずぶ濡れで惨めな思いと不自由を強いられた代わりに、まさに天の恵み。
シュラフに入ってからもどこでルートミスしたのか、明日はルートを見出して無事下山できるのかとず~っと考えていてなかなか寝つけなかった。雨は一晩中激しく降ったが、心配した台風の強風は不思議と吹かなかった。山でちょっと荒れた時に吹くレベルでこれも不幸中の幸いだった。
16日(5日目)、P1897.7mに一旦戻り、地図・コンパス頼りに無事下山
雨は明け方まで強く降り続いたが、幸いにも出発の頃に止んでくる。見失いかけていた現在地の再確認と高度計再設定のためにP1897.7mまで登り返す。昨日14時過ぎの状態に戻ることは少々精神的ダメージを受けた。方向を何度も確認する。隣りの尾根といってもだだっ広くて単なる斜面。こちらは踏み跡が全くなく、本当にこれでいいのか不安だった。やはり昨日降りていた尾根が正解ではとも思い、2回も確認に戻ってしまうが、昨日見えた地形の特徴を信じて斜面を下りていく。やがて1499m地点に。ピークではなく少しフラットになったところであるが、地形図と照らし合わせて、こちらが正解だったとやっと確信が持てた。曖昧地形で判断が難しいルートだった。
天候はすっかり回復し晴れてくる。このあたりから増水でド迫力に成長した精進ヶ滝が見えた。自分達が通ったルートなど今行こうものならたちまち溺れてしまうだろう。この先もいくつかの小沢の派生で複雑なルートとなり、相変わらず踏み跡は希薄で曖昧だが尾根が明瞭になってきて多少わかりやすくなる。地図とコンパスをにらめっこの末、無事下山する。期待したような作業路、踏み跡は最後まで見当たらなかった。
P1897.7mからの下山を振り返ってみて、初めから正解ルートを下った場合、踏み跡がないので正解とは思わなかったろう。隣りの尾根を下ってよそから地形観察することであちらが正解ルートと判断ができた。よってここでのルート探し試行錯誤は必ずあったと思う。
下山後、今回台風で伊豆大島が大きな被害を受けたことを知る。家の方でも電車運転見合わせが相次ぎ、家族の心配は当然だったろう。4日目も下山できず下山ルートもよくわからない状態となったことは同行の宇田さんを著しく不安にさせたに違いない。それに会社を急に2日も休むことは大変な影響があったに違いなく、本当に申し訳ないことをした。
今回の大きな問題はまず、離山と熊小屋ピークでルートミスが無かったとしても4日かかっており、必要日数見積りが誤っていた。下山の時間と距離を短くしようと選んだルートだったが離山岩峰群での険しいルートの通過とその後緩やかな山容になってもあてにしていた踏み跡がなく、想定よりはるかに時間がかかってしまった。むしろミツクチ沢源流より地蔵岳に登ったほうが遠回りでも一般道に出られるので夜間残業して3日目に強行下山は可能だったかもしれない。少なくとも4日目には下りていた。急がば回れということです。
<参考コースタイム>
12日;遊歩道駐車場出発8:40~精進ヶ滝上13:50~北沢(泊)16:20
13日;出発6:50~50m滝下8:30~1780m巨岩帯13:10~2000m二股(泊)16:20
14日;出発7:30~2160m二股10:00-10:30~稜線10:45~離山12時~第2高点巻き途中(泊)17時
15日;出発6時半~第4高点9時~P1897.7m14時~1800m付近(泊)17時
16日;出発7時~遊歩道下山10時半