日程:2014年9月20日(土)
参加者:元廣、島本、桑田
石鎚北壁に行くことを決めてから何度か三段ハングに来ているが一度もトップアウトできていない。
「今度こそは!」との思いで2日連続でトライすることに決めた。
土日あればなんとかなるでしょと思っていたがそうは問屋が卸さなかった。
島本さんの「上からじゃダメなんですか?」の言葉に「ハイ、ダメです」「下から突破したいんです」の私。
よく分かっていない桑田さん、なんか楽しそうという顔の元廣さんの4人でのアタックである。
先発パーティは桑田-保見。「心の準備はできた?」の問いかけに「なんとなく・・・」の答え。今回は例会でも講習会でもない。誰もロープは垂らしてくれません。さあ行くぞということで桑田さんがリードで取り付く。アブミを掛け替えながらジリジリと登っていく。
前回はフォローで登っているので様子は分かっているはずである。見ていても不安感は特にない。2ピッチ目、トップを交代する。前回もこの後がよく分からなかった所である。新しげなペツルのハンガー沿いに行くとフリーのルートに行ってしまう。
やっぱりこっちだよなと古いハーケン沿いにルートを取るが微妙なトラバースで見た目以上に怖い。落ちると1ピッチ目の取り付きまで真っ逆さまである。どこかを持っていないと岩から体が剥がされてしまう。途中「アゴ」でなんとかもっているハーケンがあるがこれもいつ抜けるか分からない。A0しながらトラバースを終えてホッとする。
次は直登していくのであるが、どう考えても上に抜けるにはギアが足らない。
ルートが屈曲していることとダブルロープためにかなりのギアをこのトラバースで使ってしまっていたのである。
「とりあえず」ピッチが切れそうな支点を探しながら少し登ってみることにする。数m登ると前回引き返した場所である。前回もそうだった。ここでギアが無くなったのだ。学習能力が無いとはこのことだ。既に元廣-島本パーティーは1ピッチ目に取り付いている。急がないと。
さあ、どうしよう。さっさとセカンドを上げるか、固定して登り返すか。少ないギアと頼りない支点を見ながらしばらく考える。痩せたリングはどの程度の力に耐えるのだろう。中には元の1/3程度まで痩せ細り、力が掛かったのか楕円に伸びてしまっているものもある。腹を決め、リングボルト4本で支点を作り、ハンギングビレイの体制を作る。宙ぶらりんでのビレイは気持ちのいいものではない。おまけにセカンドが上がってきたら2人分の体重がここに掛かるわけである。
桑田さんはそんなこともつゆ知らず上がってくる。怖いもの知らずとはこのことだ。
3ピッチ目、再び私がリード。ここからは未知の世界である。並行に2本打たれたリングボルトが上に続いている。
片方が少し痩せているということは太い方は後から打ち足されたものだろうか。
太いといっても錆びてかなり細くなっているのにはかわりがない。いくらか「マシ」といったところである。
ジリジリと高度を上げ、目の前に最後のハングが近づいてくる。左の岩峰の頂上は既に越えている。目の前からリングボルトが無くなり、ハーケンが現れはじめる。ここからどうやってハングに取り付くのだろう。ハングの下面に錆びた2本のリングボルトが垂れ下がっており、ハングを越えたところにも2本のリングボルトがある。いずれもかなり細い。
「あー、うー」と声にならない声が出る。こりゃ厳しいな。そこに頂上は見えてるのに。周りには乱打されたボロボロのハーケンしかない。先輩方もここで行くか戻るか悩んでいたのだろうか。
ハンマーで叩いてみるがどれも鈍い音である。これ以上進むのは時間的に無理だと判断し、ここから下降することに決める。またまたハンギングビレイである。
ここから落ちたらまず助からない。
グラグラの古いハーケンを飛ばし、新しいハーケンを打つ。カム二つと新しいハーケン、さらに残置ハーケンを使って4点で支点を作る。焦らずに、確実に。
時折なぜかテンションを掛けながら登ってくる桑田さんに「楽しい?」と上から声を掛けると「アブミ、楽しいです!」とのこと。「上の支点を見たらそんなこと言えんよ」と返す。
後続パーティーが登ってくるため、ラッペルの支点を少し左に作り直す。左下に頑丈な終了点が見えたため、そこまで下降することにする。ペツルのハンガーとハーケンで支点を作り桑田さんに先に降りてもらう。
不確実なリングボルトやハーケンばかり見ていたので頑丈な終了点でセルフを取ってやっと一息つけた。後続はまだ3ピッチ目が始まったばかりである。元廣さんがリードしているがきっと上で腐ったハーケン達を見てがっかりされることだろう。
予定時間を大幅に過ぎ、全員無事に取り付きに降りてくることができた。残念ながら今回も上に抜けることはできなかった。きっと昔の先輩方は「ちゃちゃちゃっと」登られていたに違いない。毎度のことであるが自分の力の無さを痛感する。
真っ赤な夕日が登山道を赤く染めていた。今日も無事に終わった。これだけでもいいことにしよう。