南アルプス・石空川南沢(下半部)遡行


宮本 博夫

日程:2008年9月14日~15日
参加者:菅野、宮本
←精進ヶ滝120m

念願の南アルプス・石空川(いしうとろかわ)に行ってきました。(但し、下半部のみ)
 ここは今までに10回近く児島さんに計画書を送って、その度に中止連絡、或いは行き先変更連絡をした。(児島さんも呆れたことでしょう)
 石空川は鳳凰三山の北面にあり、甲斐駒ヶ岳・大武川の一大支流である。我々関東支部?からするとそう遠い山ではなく、2泊3日の日程さえ確保できればいつでも行けるはずのところだ。このいつでも行けると思えるのが落とし穴で、天気予報がよくないといつも見送って、最初に計画した時から既に4年も経過してしまった。(実際、毎回天気は悪く、雨男組の名を不動のものにした!?)
 今年も既に夏休みは見送っており、今回の9月3連休を逃すと、また来年チャンスをうかがわねばならなかった。今回こそ行けると思っていたが、出発当日(13日)またもや天気予報は悪化し、1日目、2日目とも雨模様、しかも大気不安定による雷雨を予想しており、仕方なく入山を見合わせたのだった。しかし、最近は天候が本当に不安定で天気予報も毎日変わる状態で、翌日になると雨予報が晴れに変わり、当初予定より入山を1日遅らせて1泊2日で下半部だけでも遡行することにしたのだった。(今まではそんな中途半端は考えずに行き先を変えていたが、南沢はエスケープルートがあるので、その気があれば下半部のみ遡行可能)

 初日14日、アプローチの精進ヶ滝林道が崩れて通行止めになっており、遠回りして出発地の駐車場に着く。精進ヶ滝を見物するための遊歩道があり、初め40分程これを進む。実は2年前の夏、我々はこの道を滝見台まで2回往復した(その時は入谷直後に激しい雷雨になって、結局引き返した)ので、すっかり馴染みの道だ。滝見台からは手前に九段ノ滝40m、遠くに精進ヶ滝120mが見える。
 そこから入谷し、さっそく九段ノ滝を大巻きする。やがて精進ヶ滝の直下に着くが、この滝はとんでもないスケール。滝は120mをほぼ真っ直ぐに落ち、これだけでも相当なスケールだが、屏風状に大きく横に広がった側壁が滝の高さより何倍も広くて、今までの沢登りでも五指に入るビックスケール。特に横の大きさは一番かもしれない。残念ながら文章でいくら書いても表現できないし、大き過ぎて写真にも収まりません。菅野さんの話では東日本一の滝なのだそうだ。
 こんなの巻けるのかなと思われたが、側壁の上まで斜面を登って落口付近に無事降りることが出来た。(落口を目指さないと崖になって、懸垂数回になる)この先、高さはせいぜい5mくらいだが、谷幅一杯の岩床を持つ滝をいくつか越す。山全体が花崗岩の塊で、巨大な摂理に沿って谷が形成されているようだった。
 やがて南沢・北沢を分ける二俣に着く。南沢に進むのだが入り口の滝は登れず、右岸側手前に2本ある枝沢の内、下流側に入り、更に隣り上流側のルンゼ状枝沢の中に懸垂下降で下り(ルンゼ状枝沢も出合いが滝で、こうしないと入れない)、更に対岸斜面を登って南沢出合いから続く滝場を巻いていかねばならない。まず、ルンゼに懸垂で降りる所で、沢登りは小さく巻くのが基本なのでそうしようと思ったら、高過ぎてとても下まではザイルが届かない。もう少し登ってから降りるのかなと思うが、こうなってくるとどこが降りるべきポイントかよくわからない。判断に迷いながらももう一段登った所から降りて、懸垂しながら対岸を見るが、物凄い急峻で果たしてそこを登れるのか不安になってくる。ルンゼの上も下も滝になっていて袋小路のようなところで心細い。案の定、対岸は途中でスラブが顕著になって登ることは出来なかった。ルンゼ下流側はチョックストン滝で、滝を懸垂すると下に降りられるが、下流側は更に側壁が高く、とてもその側壁を登れるとは思えない。降りてしまうと完全に袋小路になってアウトだ。結局、ルンゼ上流側の滝は容易に登ることが出来て、この袋小路を抜け出すことが出来た。
 滝の上からは岩壁の基部を伝って、ルンゼと南沢の間の支尾根に取り付いて尾根上を延々と巻く。下の南沢には途中3~4個の滝があることになっているが、全く見ることは出来なかった。ゴルジュ出口の12mくらいの滝の上に出て無事巻き終える。時刻は既に夕闇が迫る17:40分。高巻きの途中も真っ暗になる前に谷に降りられるのか、谷に降りてから泊り場が見つけられるのか心配していたが、ありがたいことに谷に降りたその場に絶好の幕場があって、大助かりだった。しかも目の前に手頃な倒木があって、焚き火の薪探しの必要もなかった。流木も付近に豊富。すぐに暗くなったが盛大な焚き火と快適な寝床を得ることが出来て嬉しかった。

 翌15日、この先も10~20mの滝がいくつも続く。岩質は花崗岩でどれもこれも絵になる滝ばかりだ。どれも登れないが、昨日のような大高巻きを強いられることはなく、小さく巻ける。それでも谷のスケールは相変わらず大きく、所々側壁がとんでもなく発達している。途中に遡行者がトンガリ岩と呼んでいる高さ8m位の大きな岩が谷の真ん中にデンとあり、一見に値するものだった。
 やがて左右から3~4本の沢が流入する開けた所、通称「広河原」に着き、この内の1本の沢を登って登山道にエスケープする。今までの本流の豪壮さに比べるとほんとに貧弱な小沢で、入り口から既にボサッていて、すぐに水が枯れて藪になりそうに思えたが、意外に水流は粘り、薮らしきものもなく稜線登山道まで達した。燕頭山(2105m)を経て、急な登山道を下り、最後は車道歩きで出発地点に戻った。

 結局、今回も天気予報に翻弄されて入山決心がつかずに、下半部だけという中途半端な山行となったが、それでも十分に遡行価値がある谷だった。圧倒的な精進ヶ滝、数々の花崗岩の美しい滝、かつ、大高巻きとルートファインディングの厳しさを味わう険谷と、魅力満載で満足した。最近は奥秩父のポピュラーな谷ばかりで、あまり苦労はない内容が多かったように思うが、久々に充実した山行であったと思う。次は是非全工程を遡行したい。それに北沢にも行かなくちゃ。ちなみに滝はほとんど登らせてはくれないので、滝登りが目的の人だと欲求不満になってしまうかも。

<コースタイム>
9月14日;石空川遊歩道駐車場出発9:50~入谷10:30~精進ヶ滝下12:00~南沢ゴルジュ帯大高巻き終了(幕場)17:40
9月15日;出発7:50~広河原10:10-11:00~燕頭山付近稜線13:30~出発地帰着17:30

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