2017年5月2日(火)~5日(金・祝) 係:松林
参加者:吉村、三谷、川本
<アルバム>
<行動記録>
2日の8時に広島を出発し、10時間掛けて猿倉の駐車場に到着。砂利の駐車場は山側からの雪溶け水で湿っていたが、目ぼしい場所を見つけ、テントを張って夜を明かす。
4時に起きて各自朝食を食べて装備を準備し、前日確認した山荘の脇から入山する。足元は最初から雪面。川本くんをトップにして緩い尾根を登って行く。40分ほど進むと、猿倉台地と呼ばれる平坦な場所に出る。「あれが白馬岳主稜、あれが小蓮華山の尾根か」などと景色を見ながら進む。
猿倉台地よりそのまま尾根を登って行くと小日向(おびなた)のコルには着かないので、沢の緩い箇所を横断して急斜面に取付く。登山者が思い思いのルートで登るためか、トレースは無く、とは言ってもアイゼン無しでも問題無く登れる。
小日向のコルに着くと南側の展望が開ける。コルから数十メートル南に黒い岩が2つ並んであり、それが双子岩。この名前を取って杓子岳双子尾根という名前が付いており、山頂から白馬尻へ向けて下っている杓子尾根を従えて登山ルートとして知られている。また、我々の後から着た2人組の年配のパーティーに、「あの雪が融けて黒く見えるところが鑓温泉ですよ」と教えてもらった。
コルから丘を一登りすると、急に痩せ尾根となり、トレースに従って進む。まだ雪は固いが、滑らないように踏ん張る必要が出てきたため、休憩時にアイゼンを装着する。尾根の途中で唯一の大きなギャップ、樺平は窪地になっており、地図を見ると池があるようだ。真ん中に1本大きなダケカンバが立っており、それで樺平か。一張、ベースのテントがあった。
ここから徐々に急斜面に吸い込まれて行く。標高2284m辺りだったか。1ヶ所、岩が露出してガレていた場所があり、微妙なバランスで木を掴みながら時間を掛けて抜ける。また小一時間進み、小岩を右に巻いた箇所で休憩していると、3日前に御在所岳で会った中年の男女パーティーと再会する。樺平のテントはこのパーティーのものだったようだ。
杓子尾根と合流して左に折れ、30分ほど登ると杓子岳山頂に到着する。傾斜の緩い主稜線の西側に腰を下ろし、黒部川を取り巻く山々を眺める。前後して進んでいた2人組のパーティーと写真を撮り合い、鑓ヶ岳へ出発する。鑓ヶ岳の下りは岩礫、砂礫だらけでほとんど夏道が出ていたため、アイゼンを外して進む。振り返ったときの灰色の鑓ヶ岳が印象的である。
鑓温泉の分岐には数パーティー、単独行者数人が留まっており、そのほとんどは鑓温泉へ向けて下るようだ。我々はさらに南へ進む。「そろそろ天狗山荘が現れてほしい」と思っていたころ、左手に見えた窪地が気になったので覗いてみたところ、山荘を発見する。三方を斜面に囲まれた恵まれた場所で、西寄りの風は完全にシャットアウト。東側も少し進むと下界が見える。という好条件の場所を泊地にした。たまたまそこがライチョウの縄張りのようで、「ガー、ガー」という鳴き声が時折聞こえた。
翌日は少し出遅れたが、5時前に荷物を纏めて泊地を出る。風も弱く、穏やかな朝だ。前方に赤い服の単独行者の姿があり、少し離れて我々が続く。天狗の頭より岩場、ガレ場をキレットに向けて下って行く。一峰は傾斜が緩く、稜線の富山側に付けられた夏道、トレースを難なく辿り、核心の二峰と対峙する。前方の単独行者を見ていると、富山側の岩場をジグザグと登った後、信州側に出て、雪斜面と岩の際を登っている。我々も鎖に導かれて信州側にひょこっと飛び出る。雪面の斜度がきつく、落ちたら痛いのでロープを出して川本くんに延ばしてもらう。灌木や残置ハーケン等で中間支点を取って進んで行く。シュルントがブリッジ状になっているところを踏むのが怖い。そして最後に小ピークへ向けて2m半程度の垂直の雪壁を登る。単独行者も川本くんも、怖いのに良く登ったもんだ。
我々が4人で時間を掛けているうちに、単独行者は次の核心部を進んでいた。尾根通し、尾根に近いところをジグザグ登り、夏道に出た模様。我々も基部に取付き、信州側から少し雪斜面を登って稜線に出る。そこから富山側にトラバースして岩の積み重なったルンゼの下に出る。三谷さんが言うには、8年前と同じルートを取っているようだ。ある程度はノーロープで進めると思っていたが、途中からガレ場で足元が安定しなくなる。左にトラバース気味に登って単独行者が登っていた、“稜線通し”のルートに乗れないか?とも考えていたが、それも難しい。川本くんをストップさせた、雪のバンドの前の岩に残置ハーケンが3枚ほどあったので、これを使ってルンゼを登ることにした。稜線の夏道が出ているところまで20mちょっと。進み易いところを進んでくれれば良かったのだが、進み易いところが無かったのか、なかなかテクニカルな登りを強いられた。
ここから先は鎖やハシゴ等の人工物が見えて安心できる。二峰の北峰からハイマツ伝いに南峰へ歩いてホッと一息付く。川本くんは、三峰のC尾根を登るクライマーを見てワクワクしている。三峰は、遠くから見た限りではルートが判然としないが、進んで行くとトレースに導かれて富山側を大きく巻いた。
唐松岳の頂上から先は、多数の登山者が行き交う。唐松山荘で休憩してからは、早く下りたい一心で下る。例年より雪が多いようで、雪の繋がった区間が長いように感じた。八方池山荘からの最終リフト、ゴンドラには充分間に合い、八方口に下山。タクシーで猿倉まで車を取りに行き、入浴、買い出し後、大町市内の某地にて打ち上げ。好天とメンバーの力量が揃い、短くとも内容の濃い2日間の山行だった。
今回は、踏み入れたことの無かった白馬岳のエリアの雪稜を対象とし、さらに不帰ノ嶮を縦走すれば充実する。ということで行程を決めたが、やや日数が少なかった。日数を増やし、充実させるには、長い尾根、登攀的な尾根を選ぶ。縦走距離を延ばす。など、策はいろいろと考えられる。来年はもっと悩んで、悩むことを愉しんで行程を練りたい。
(記:松林)
<コースタイム>
5月3日 猿倉(5:00)→小日向コル(6:50)→杓子岳(11:06)→白馬鑓ケ岳(12:54)→天狗平(13:30)
5月4日 天狗平(4:50)→天狗の頭(5:17)→不帰キレット(6:36)→不帰1峰(7:15)→不帰2峰北峰(10:30)→不帰2峰南峰(10:50)→不帰3峰(11:40)→唐松岳(12:10)→唐松山荘(12:30)→八方池山荘(15:00)
(記:川本)