レスキュー講習会(窓ヶ山)

レスキュー講習会(窓ヶ山) (係)三谷
月日 7月7日(日)
参加者 横山、吉村、武田、元廣、田野、堀内、藤岡
内容 窓ヶ山にてレスキュー講習会を実施した。年一度のレスキュー講習会は、定期的な防災訓練と同様に会として必要な訓練である。
広島地方では早々に梅雨明けは宣言され、連日猛暑が続いている。この暑さが懸念されたが、駐車場で25℃程度なのでうだるような暑さはない。
道中は樹林帯で強烈な日射を遮り、わずかだか谷から冷風が吹き上がる。さらに、講習会場であるキレットは風が通り快適である。
第一部は、新入会員向けに基本的なロープの結び方と平行して、参加者全員にレスキューに必要な結びを確認してもらった。
フリクションノットはレスキュー、ロープを使った登高に必要な技術である。
・フリクションノット(プルージック、クレムヘイスト、マッシャー、バッチマン)を順に効果を確認しながら進める。
セルフレスキューにおいて欠かせない技術である。ロープ径が細くなる傾向があり、スリングによってはフリクションが効きにくい場合がある。または、プルージックコードという専用スリング、アッセンダー(Peztlベーシックなど)などを使用する。
・インラインエイトノット
メインロープの途中に支点を作る場合に用いる。片方向のみの荷重に有効な結び。また、FIXロープ上に手がかり・足がかりを作る場合に用いる。
・バタフライノット
ロープ中間にループを作る。両方向の荷重に対応可能。FIXロープの中間支点への固定などに用いる。ループがほどける場合があるので、カラビナを介する必要がある。
・ムンターヒッチ(半マスト)+ミュールノット
ムンターヒッチとミュールノットの組み合わせで、セルフレスキューには必須の技術。カラビナのみでロープの制動を行うことができる。ムンターヒッチはHMSタイプのカラビナを利用する。
ミュールノットはムンターヒッチによる制動中にロープを固定する方法。

<訓練の様子>

これらの基本技術を使用して、以降の応用技術を実践する。
今回は、最小限の道具でレスキューのシステムを構築することがテーマである。
その想定にあるのは、トラブルは登攀中だけでなく、登山中でも発生する可能性があるからからである。最近の山行形態からすると、むしろ後者の方が発生率が高くなる。
事故の発生から救助者本隊への引き継ぎまで、要救助者の安全側に誘導するのがセルフレスキューのリーダーの役割である。パーティー内で発生したインシデントへの対応だけでなく、他の登山者が要救助状態だった場合や他の救助者との共同作業となる場合もある。
補助ロープ、スリング、カラビナのみを使用して以下のシステムを構築する。
・トラバース
トラバース中にロープを固定し、カラビナまたはフリクションノットを利用して安全に移動する。雪渓、濡れた岩場、ルート外のトラバース通過などのケースが想定される。
元廣さんと田野さんにデモンストレーションをお願いした。トラバース中のルート工作は、通常のリード-フォローのシステムの手順と同様である。
お互い簡易ハーネスに対してロープを結び合う。ムンターヒッチで確保しながらロープを伸ばし、終了点でループを固定する。中間支点をバタフライノットで固定し、後続者はカラビナスルーで通過する。
・懸垂下降
ムンターヒッチによって懸垂下降を試みる。斜面中で作業を行うための仮固定をミュールノットで行う。
・引き上げ・ロワーダウン
上下に張ったロープを使い、要救助者をムンターヒッチ+1/3システムで引き上げを行う。体重がある方の引き上げは難しいが、登高のアシストにはなる。
今度は、ムンターヒッチの制動によりロワーダウンする。仮固定の手順はレスキュー時に限らず、同行メンバーがクライミング中や下降中に実施できるようにしておく。

<トラバース中のルート工作>

午後からの第二部は、応急処置法を中心に確認した。こむら返り、熱中症、擦り傷・切り傷、靴擦れ、ねんざ、腰・膝の痛み、虫刺されなど、登山中のトラブルは多様である。

行動中にトラブルに遭遇したり、不調者が出た場合にはメンバーが処置できるようにしておく必要がある。既往歴のあるメンバーがいる場合は、パーティーで情報を共有し、万が一に備えておく。
まず、応急処置に必要なファーストエイドキットの確認。
ファーストエイドキットには以下のような医療品をパーティーに一つ携行する。ファーストエイドキットとわかるポーチに入れておくと、万が一自身がトラブルが遭ったときに他者が取り出しやすい。

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<ファーストエイドキット>
エマージェンシーシート、三角巾、絆創膏(大・中)、靴擦れパッド、滅菌ガーゼ、かゆみ止め、鎮痛剤、胃腸薬、下痢止め、風邪薬、テーピングテープ、湿布薬、毛抜き、安全ピン、ハサミ、綿棒、消毒薬・ジェル、ポイズンリムーバなど。エマージェンシーシートはツェルトの代用となり、軽量なので常時携帯したい。
以下はメンバーの体質・体調によって準備する。
漢方(猪苓湯(ちょれいとう)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう):頻尿・排尿障害、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう):こむら返り、足のつり)、塩分・ミネラルパウダー、アミノバイタル、目薬、リップクリーム、日焼け止めなど。

三角巾で足首の固定と、簡単に応急処置が可能であることを確認した。プレカットのテーピングテープ・キネシオテープ、靴擦れ専用のパッド携行しても良い。伸縮性のあるキネシオテープは膝の障害や筋肉疲労の予防に有効である。
患部出血時は基本的には患部を圧迫することにより圧迫止血法を採用する。
熱中症や低体温症、脳疾患、心疾患など、重篤な症状の場合、山中でできることは限られるが、二次救命につなぐためにできる限りの対処を行えるようにしておきたい。メンバーの既往歴やどんな予兆があるか把握しておく必要がある。
蘇生法は、意識チェック、保温・回復体位、気道確保(頭部後屈あご先挙上法)、人工呼吸・心臓マッサージ(胸骨圧迫法)の流れであるが、救命講習を受けるのが望ましいと考える。
搬送法については、ザックとストックを利用した簡易背負子を利用することによって、搬送者、救助者双方の負担を和らぐことができることを確認した。


<ザックを使った搬送>
急斜面を搬送者が登るために2名体制で引き上げるシステムで方法を実践した。人を背負って斜面を登るのは困難であるが、この方法を用いれば幾らか楽になることがわかった。
セルフレスキューはパーティーあるいはメンバーに対して行う救助活動だが、対応可能な範囲を超えていると判断した場合は安全地帯で待機するとともに速やかに救助を要請する。
しかし、限られた方法でも有事の際には役に立つことがあるので、定期的に確認・評価していくことが大切であること感じる。

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