5月25日 (係)保見
参加者:安藤、吉村、三谷、元廣、平本、徳永、兼森、島本、桑田、松林、真栄、吉村(心得)
今年度第一回目のクラ技である。
テーマは「マルチピッチ」ということであったが参加者の多くは既に経験もあり、何をしようかなと考えた。「これでいいのかな?」と疑問を持ちながらやってる人もいるのでは思い、今回はそれぞれの知識・技術の再確認を行うことをテーマとした。
講習内容を考える中で自分自身「なぜこれが必要なのか」という根拠があいまいなものも多く、自分の頭の中を整理する意味でも今回の講師をやった意味があった。
当日は多くの方に集まっていただき、総勢13名での講習会となった。なめらに上がるとすでに他の会が岩に取り付いており、さあ我々も急いで岩へ!となるところだが、今回はまずは資料をもとに座学である。
「アルパインでは落ちてはいけない」と言われる。なぜだろう?支点が弱いから?ではどのくらいで壊れるのだろう?
衝撃荷重について調べているうちにある動画にたどりついた。それは60センチ程度の墜落で切れるダイニーマスリングのものであった。
これを見た時は唖然としてしまった。22KNに耐えるはずのものがいとも簡単に切れてしまう。アルパインだけでなくゲレンデにも危険が潜んでいる。登ることよりもまずは落ちないこと。落ちた時にいかに衝撃を吸収するかを考えることが重要である。
落下係数、衝撃荷重について説明し、墜落の危険性について解説した。ロープの流れ一つで衝撃荷重は大きく変わる。たいしたことがない墜落でも支点は容易に崩壊し、墜落の危険性があることを知ってもらった。
また、デイジーチェーンを例にあげ、使い方を誤ると非常に危険な状態になることなどについてもふれ、マニュアル等をしっかり読んで使うことが重要であることを伝えた。
次はクライミングの要点についての実演である。
普段何気なくやっていることでも「なぜそうしないといけないのか」を考えながらやることは少ない。いつものゲレンデでは簡単に出来ることでも場所が変わると意外に出来なくなるものである。
流動分散、メインロープでセルフをとる理由、トラバースでのランニングの取り方、各種ビレイデバイスの使い方、懸垂の流れなど30項目にわたって確認を行った。実演を指名された方も見る方も真剣である。
皆さん口には出さないが「これ、知らなかったな・・・」というものもあったのではないだろうか。
そして午後からは四つの班に分かれて午前中に行った内容を実践で再確認していただくこととした。
各班のリーダー兼トップには中堅を配置し、諸先輩方には安全管理の役をお願いした。
各班の編成は以下のとおりである。
1班(徳永L、安藤、吉村)、2班(平本L、島本、三谷)、3班(松林L、兼森、元廣)、4班(真栄L、桑田、保見)
私のパーティーは真栄君がトップ、私と桑田さんがフォローするという形の3人システムでアイゼン尾根横のスラブ帯(2ピッチ)での登攀訓練を行い、心得の吉村さんには取り付きで見学をしていただいた。
桑田さんの動きにリーダーの真栄君の目が光る。ここは何が起こるかわからないアルパインのルートである。決して難しいルートではないが気は抜けない。
順調にロープを伸ばしていたがテラスに上がったあたりで「ラク!」の声が。
大きな岩が跳ねながら落下してくる。落ちてくる方向を見据えて避ける方法を一瞬で考える。幸い、ルートを外れて我々の横を通り過ぎていった。
こんな優しいルートでも何が起こるかわからない。真栄君にはいい経験になったと思う。
歩きに近い2ピッチ目は桑田さんにもチャンスをということでトップを交代したが、いざ出発!という段階で自信がないとの言葉が。
「今やらないと、いつやるの?」と思いながらも自信が無い人にはトップは任せられない。再び真栄君にバトンタッチして2ピッチではあるが「マルチピッチ」は終了し、終了点で桑田さんへの特別講習をすることとなった。
何気なく桑田さんを見るとメインロープではなくPASでセルフを取っている!?
「セルフはメインでってさっき言ったばかりでしょ!」
そう簡単に技術は身に付くものではない。どれだけ現場を経験しているかがものをいう世界である。
下山後は各班の安全管理をしていただいた諸先輩方から気付いた点について講評をいただき無事に講習を修了した。
今回はマルチピッチに臨むために必要な最低限の「知識」について再確認を行った。
「自分はどこまでできたか」をあらためて考えてみてほしい。本チャンではできるのは当たり前であり、さらに確実性とスピードが要求される。
昨年の春合宿(鹿島槍)は人気ルートということもあり核心部で数パーティーが数珠つなぎとなった。我々が核心部を通過した後に天気は急変し、後続パーティーは大変な思いをしたことと思う。本チャンルートでの未熟な技術は自分達だけでなく他のパーティーをも危険にさらしてしまう。アルパインを目指す方は自己研鑽に励んでいただきたい。