月日:9月20日(土)~23日(火)
参加者:吉村、徳永
<山行記録>
「来年行きたい山のリクエストを出してください」と昨年年末に企画よりお話しがありました。
基本的には行ったことのない山には行きたいし、季節やルート、縦走、登攀、出来ることや行ける所はどこでも行きたい欲張りな性分…
なかなか決め切れなかったのですが、取りあえず日本1綺麗だと言われる「赤木沢」と「北岳バッドレス第四尾根」をリクエストしていました。
赤木沢の例会が決まった頃、北岳はいつ頃になる予定でしょう?と伺ったら今年は計画(例会)にならないとのこと…行けないと思うと行きたい気持ちが強まり、無謀にも自分が係りで例会にすることにしてしまいました。
技量、経験とも未熟な状況でのチャレンジです。
取りあえず、交通の問題やリスクの軽減を考え、3名以上で実行するとのボーダーラインを引きました。結果、申込期限を過ぎた時点で2人…例会は不成立。
個人山行にて実行するか思案を始めた最中、恐羅漢でこじんまりと合宿の打ち上げがありました。その時、鍋をつつきながらの会話でそんな状況を知った吉村さんが突然「わしがフォローしちゃる!」と力強く言ってくださり、内心あきらめかけていた中での言葉で大変嬉しく思いました。
(少々お酒が入っていたので、ホントに良いのなのだろうか?としばらく心配しておりましたが…。)
とにかく行くと決まったからには練習あるのみ。例会の合間にて窓ヶ山や天応にてマルチピッチの練習を行いましたが、僅かな練習日程でそんなに上達するわけもなく、練習量で不安な気持ちをカバーすることは出来ませんでした。
残された時間は無く、バッドレスに関する記録を見たり、本から情報を調べたりすることで、気持ちを上げていくしか自分が出来る手段はありませんでした。
直前の連休は赤木沢でしたので計画書を作成する時間も僅かで、バスの乗り継ぎを調べたり、装備調整を行ったりと慌しく準備を進めてましたが、どうにも天気が悪い。
1時間おきに4つの天気サイトで予報を見る毎日…2つのサイトで曇りに変わったが、他2つが70%の降水確率。しかも登攀前日、当日共に雨が降る予報で、これはもうダメだろう…と諦め違う山域での代替計画書も作りました。
出発の前日になって4つの天気サイトから雨マークが消え、ギリギリで予定通り決行する判断に至りました。
<20日>
市内を出発し、渋滞になることもなく順調に現地到着し、道の駅で車中泊
<21日>
早朝、バス停駐車場に移動し、バスを乗り継いで広河原へ
ロープやギヤ類でザックがずっしりと重く、前半の急な登りはなかなか堪えました。
それでも順調にコースタイム3時間を2時間かからず白根御池に到着、テントを設営して身軽になって取り付き場所の下見に向かいました。中間尾根はすぐ特定できたものの、早々に尾根に上がろうとして踏み跡を見過ごし、結局ゴロゴロ岩の沢を詰め上げて下部岩壁に到着しました。目の前で見るバッドレスは大きく威圧感があり登れるだろうか?と不安ばかりが沸いてきます。崩落以前の取り付きはbガリーが一般的だったようですが、大崩落の後、C沢を横切るのは落石等のリスクが高いことで避けられる傾向にあるらしい情報から今回はdガリーか若しくは第5尾根からと考えていました。dガリー側に幾つかハーケンを見つけ、多めにハーケンが打たれている場所からと判断して岩場を下ろうとしますが、下りが怖い…。トラバース気味に下ろうとするとザレで足が滑る…結局トラバースでなく登った側の岩場から下ったのですが、我ながら先が思いやられる。上からだと尾根伝いの踏み跡が容易に分かり踏み跡を下りましたが、これがザレザレの急斜面で神経使いました。
到着が早く時間に余裕が出来たため、本日の予定をこなしても時間がたっぷり。この日は昼寝をしたりとのんびりと過ごしました。夜は徳永さんが準備してくれた健康的で美味しい夕食をお腹いっぱい食べしっかりエネルギー補給して就寝。
<22日>
暗い内に出発し、中間尾根近くで朝食。その頃、この日唯一(と思われる)の後続パーティが追いついてきました。そのチームもバッドレスは初めてのようで、取り付きまでの道を聞いてこられました。先に行ってもらって良かった(行って欲しかった)のですが、後ろから行くとのこと。(仕方なく)先行し、昨日の下見のお陰で踏み跡もすぐに発見し迷うことなくスムーズに下部岩壁に到着。
朝陽に照らされたバッドレスはまた素晴らしい景観でした。ホントに絶好のコンディション、しかも小さなオコジョにも1m以内で遭遇し可愛い様子を見ることが出来ました。
いよいよ取り付き、平本リード。ハーケンが多めに見えるルートを選択して登り始めたものの…難しい。ハーケンもなくカムをセット出来るようなところもない…怖くて思うように進めず時間がドンドン過ぎて焦る。どうしょうもないので「後続パーティに他のルートで行けるなら先に行ってください」と上から声をかけた。しばらく見守っていた後続は「たぶん、こっちだと思いますよ」と地図を示しながら左側のルートを指した。「出だしで沢山ハーケンが打ってあるのは厳しいからかも…?」と思い直しながらも取り付いた以上ゲレンデではないので易々とは下りれない。
相当の時間をかけ、かなり疲労して1Pを上がりきった。1P目からこれでは先が思いやられる…撤退?の二文字が頭を過ぎる。
2P目は草付を左手へトラバース、3P目は沢を詰める。先に行くかと思われた後続パーティも意外と時間がかかって結局後ろについた。4P目でザレを右手へトラバースし、ロープを仕舞ってC沢のガレを右岸沿いに登り「4」の印のついたスラブを左手に上がる。2人は元気良く上がって行くが私は1P目の疲労と暑さにやられて早くもバテバテ…。2人に遅れてようやっと第四尾根についたが、余りの疲労具合に徳永さんにリードを交代。
四尾根1P、核心部の一つと言われる場所だけど、徳永さんは「え?えー?」とか言いながらも無難にこなす、さすがバランスが良いです。四尾根2P、やさしめのフェース。四尾根3Pはピラミッドフェースの頭を右手へ。
四尾根4Pはピラミッドフェースの頭の影から、第二の核心、ツルツルの白いフェースを通過。徳永さんのここの登りは見ていないが白いフェースもA0とはいえ、そんなに時間をかけていない。私だったらもう少し時間がかかっていたと思うので、時間を考えたらリードを変わって良かったなと思いました。
(自身のレベルアップをもっとしなければと反省しながらですが…)
4Pの終了はマッチ箱のピーク、ここでロープを解除しコルへラッペル。
マッチ箱のコルで「リードをする?」と声がかかる。
しばらくセカンド&フォローで休めた分、疲労も多少回復していたし、肝心の第四尾根でリードしないと後悔すると思い有難く交代させてもらう。
四尾根5P、フェース。続いて四尾根6P、尾根伝いにはいくつかハーケンがあるが結構シビアなので、尾根を巻いて左手を行くルートを進むが、こちらはハーケンが1箇所のみで上部まで支点はない。それほど難しくはないけど、ホールドは薄めなので慎重に進み、枯れ木のテラスへ。
テラスまで来ると大崩落の跡が目の前に現れた。大きな岩に亀裂が入り、今にも剥がれ落ちそうな様子。この辺りからガスがかかり始め、崩落の跡とリッジの亀裂、そびえる城塞が異様な雰囲気をかもし出す…。城塞までリッジ沿いに進むが、ハーケンが2箇所あり、途中、パックリ足下がない箇所があったが事前調べで知っていたので、さほど躊躇せず通過することが出来た。
城塞は深い亀裂(チムニー)があり、見た目はホールドが多そうな感じでしたが、ザックを背負ってチムニーに入ることは出来ないし足場がない。実際に取り付くと岩はかぶり気味…迷うことなくアブミを出しましたがアブミの上段でもチビの私は良いホールドまで届きません。「これは登れないかも知れない…」と気持ちが負けそうになりましたが、何とか岩角に立ちこみ、抜けることが出来ました。
城塞を抜けると緩やかな岩稜帯となり、ロープ一杯まで進み、ハイマツで支点を取りました。少し登った平坦な場所で装備を解除して靴を履き替え、食べ物を口に放り込む。辺りはガスで岩場がぼんやり見える。陽が落ちるのも時間の問題なので、ヘルメットにヘッドライトを付けて移動開始…ですが、今までに無いくらいの疲労具合で足が上がらない。景色のない誰もいない北岳山頂で記念写真を撮り、肩ノ小屋を経由して一揆に白根御池まで下山。
白根御池はすっかり暗闇で、小屋も本日の営業は終了となってました。この日の行動時間は14時間40分…思った以上の残業でした。テントに入り込み、軽く打ち上げ、身体に優しい栄養バランスの良いメニューで締めくくり。寝る前に空を見ると沢山の星が輝いていました。
<23日>
翌朝も好天、下山するのがもったいない感じのお天気です。朝食を食べてテントを撤収し5時に下山を開始。
丁度良い時間にて広河原到着、予定通りに始発のバスに乗り込みました。
バスを乗り継いで戸台に戻ったのが8時過ぎ…すぐ目の前の温泉に入れれば一番ベストだったのですが、この地域の日帰り入浴はどこも10時からとのこと。少々温泉難民になりましたが、お土産を買って駒ヶ根まで移動することで時間を調整。予定より少し遅れての現地出発となりましたが、ほとんど渋滞にもかからずほぼ予定通りに帰広できました。
行きの車内で先週バッドレスに行った方の情報を聞くと、寒波でかなり寒かったらしいこと、20パーティ位が取り付き、恐らく半分位は完登出来なかったと思われること、数パーティが22時過ぎての下山となったとのことでした。
そんな情報を聞き、どうなるやら…と思っていました。出発を決めてからは全てが順調すぎて(登攀以外は…)最後に事故でもしなきゃいいが…と逆に不安に思ったりもしましたが、メンバー全員で無事に戻ることが出来て今はホッとしています。
頼りないリーダーの下、参加して頂いた徳永さん、膝の状態が悪いのにフォローを買って出てくれた吉村さん、お2人のお陰で希望通りにバッドレスを登攀することが出来ました。本当に有難うございました。