日時:平成27年1月25日(日)
参加者:平本、兼森
<行動記録>
今回の山行は初めての行者尾根ルートを歩く。また、リーダーは私で大先輩は誰もいない。平本さんからは「任せたよ!」と活を頂くが、前夜のテントでは寝付けない夜を過ごした。朝テントを出てまず迷ったのがワカンを装着するかしないかだ。放射冷却が予想されていたが、思ったほど雪質は固くない。暫くテン場周辺を上り下りして、始めからワカンを装着することにした。テン場からトレースが何本かついていた。先週、行者谷で雪崩があったと聞いていたので、谷をトラバースするのは気持ちが良くない。勾配の緩やかなところで早めにトラバースし行者尾根に取り付くことにした。別山隊より先に出発したが、我々が尾根に上がるまで心配だったのだろう。なかなか出発されていないようだった。支尾根の奥にある長く延びた尾根が行者尾根のようだ。尾根が少し細くなる地点まであっという間に上がって来た。左側がひらけて北壁が良く見渡せるスポットである。辺りも明るくなりヘッデンを納める。青白く見える北壁は迫力がありとても恐ろしく見えた。別山バッドレスに向かっている皆が見えた。7合尾根や7合沢、8合尾根、弥山尾根も見渡せたので地図と地形をゆっくりと見ることが出来た。しかし、木の下側斜面の雪には亀裂が入っている箇所があり、雪崩れるのかと不安になる。弱層テストをしてみると、両腕で引っ張ると20cm下に弱層があった。雪は安定しているようだったので先へ進む。尾根が無くなり一面水平に見える斜面の樹林帯を上がって行く。これまでトレースがあり大幅に道迷いしていないことで気持ち的にも楽に進んでいることに気がつく。雪が少し深くなり始めてきたので、トレースのない道を歩き始めるが、一発でワカンを決める事が出来ず体力を消耗する。蹴り込み方を平本さんにアドバイスしてもらいながら上がる。右側から尾根が延びて来たのが見え始めると、まもなく夏道へと合流した。
6合目小屋に到着してアイゼンを装着する。初めて冬の大山に入ったのは、数年前に岳連登山教室の坂本さんに連れてきて頂いた夏道だった。8合目より上はホワイトアウトで山頂小屋に辿り着くまで下から打ち付けるブリザード、どこをどう歩いているのかも分からずただただ前についていくとしか出来なかったことを懐かしく思う。こうして山行の機会を作ってくださった先輩方に感謝したい。
8合目から上の雪景色を見るのは今回が初めてである。木道は雪の下に埋まっていて、柱はエビの尻尾で覆われて真っ白である。赤旗のテープは風で吹き飛ばされ、青い棒は雪で凍りつき更に細く僅かに見える状態だった。急斜面を上がると、石室分岐から右上側はだだっ広い右下がりの緩斜の広場となっていた。吹雪だと迷いそうである。緩やかな尾根を上がると山頂小屋へと到着、沢山のエビの尻尾に覆われて雪と小屋の境が分からない状況だった。弥山山頂を見上げると沢山の人で賑わっていた。近づいて行くと、「わー!」2人して歓声が湧く。剣ヶ峰へ続く稜線や雲海に見え隠れする烏ヶ山が目の前に広がりとても美しかった。今まで歩いた事のあるキリン峠から槍ヶ峰、文殊峠へ延びる長い尾根、三ノ沢もよく良く見渡せた。こんな景色を今度はいつ見ることが出来るだろう。平本さんと2人時間を忘れてしまうほどうっとりと眺めていた。
景色に後ろ髪を引かれながら下山を開始する。開放感ある急斜面はヘッピリ腰の私には丁度良い練習用の斜面となった。視界が良いこともあり思い切って身体を投げ出しながら下りる。7合沢にはスキーヤーやボーダーの人達が順番待ちをしていた。私もいつかここを滑りたいと思っていたので、斜面のイメトレも出来た。傍から「7合尾根を下りちゃだめかしら」と声が聞こえてきたが、またの機会に7合尾根をチャレンジしよう。今回は6合目小屋下から行者尾根のヤセ尾根目がけて下ることとした。誰も歩いていない斜面、樹氷の下を歩くのは気持ちが良かった。しかし、尾根に合流する少し手前に面発生表層雪崩の破断面があった。ここが先週雪崩た爪跡だと思われる。周りの雪を見てみると発泡スチロールのようなアラレ雪だった。ピッケルで筋をつけてみると、隙間からサラサラ流れ落ちてしまった。50m下の斜面には、7合沢と合流した人達が横並びに座って休憩していたが、予定通り尾根を歩くこととした。昼前になると春の気候のように暖かく気温も10度くらいになっていた。傾斜は太陽の光をしっかり浴びているためか、湿った雪となりアイゼン団子を落としながら歩く。別山隊の姿が見えた。ぬり壁のようなバッドレスは陽をまったく浴びている様子がなくて、きっと皆は寒い中を頑張っているのだろう。トレースの付いていない支尾根を下りながらテン場へと戻ってきた。
無線機をONにして別山隊を待つ。時間があったので雪洞を作る練習をした。斜面を利用して2人が入れるスペースを30分くらいかけて完成させた。天候の悪化した状況だともっと早く作れる雪洞作りも考えておかないといけないのかもしれない。テントを撤収し、雪洞でお湯を沸かし終えた頃に別山隊が戻ってきた。お互いの姿、声を聞いて安心する。
今回の行者尾根は、ルート取りなどを考えながら歩くことが出来たこと、北壁の概念を覚えるにはとても良い山行となりました。しかし、少しでも天気が悪かったら、少しでもガスが出ていたら。どこでどんな判断をしていただろう。天候によって美しく見える山はとても魅力的だけど、山はやっぱり危険が一杯で、先輩方と一緒に歩いて学ぶ時間はとても貴重な時間だと改めて感じました。山に入る1週間前から不安で仕方がなかった。事前に先週の行者尾根情報をメールで教えて下さった吉村さん、雪崩の状況なども教えて下さった保見さん有り難うございました。
<コースタイム>
06:30元谷小屋付近→07:47六合目非難小屋→08:42八合目→09:15大山頂上→10:16下山開始→10:47八合目→11:00六合目非難小屋→12:00元谷小屋付近