大山(雪崩講習会)


三谷

月日:2017年1月28日~29日 (係)三谷、(講師)神庭
参加者:横山、吉村、神庭、松林、島本、川本
比婆では、屋根から雪が垂れ下がっていて、今にも家が潰されそうである。お年寄りが一人雪かきをしていた。除雪されていない空き家もたくさんあり、地域の維持が危機的な状況になっている。
道路事情はさほど悪くなく、予定通りに溝口に着く。神庭家に集まり、第一部の机上講習会を実施する。前半の部は、神庭講師に、スライドを使って雪崩の発生条件を中心に説明いただく。主な講義の内容は、雪崩の種類、雪の層について、雪崩地形、地形の罠など。スキーヤーが起こした雪崩事故の映像を交えて、雪崩発生のメカニズムについて分析していった。面発生表層雪崩の発生の瞬間を第三者の目で見ることはないので、この映像は大変参考になった。
雪崩を最も引き起こしやすい斜度は38°。例え雪崩が起きる可能性があったとしても、心理上、人は楽観的方向に考えがちである(正常性バイアスという)。スキーヤーが最も快適さを感じる斜度らしいので、滑降意欲の方が勝ることがあげられる。しかし、雪崩地形に入り続け、いつか雪崩に遭う確率は1/20である。統計的に19回は大丈夫でも20回目には雪崩に遭うことになる。
後半の部は、雪崩事故の事例を紹介する。各々の経験を語りながらディスカッションした。尾根上を登っている場合も、トラバースしないといけないケースが多くあると思う。特に、登攀は危険地帯の通過を避けられない。一つ言えることは、スラブが安定しているうち、つまり、早朝に取り付くことである。

朝5:30に出発し、仁王茶屋に向かう。放置された車が雪に埋没していた。
先月とは打って変わり、除雪された桟道は深い溝が掘られていた。大神山神社からは、林道の下を通って元谷へ向かう。神庭くんに要所でルート取りについて注意を受ける。安全見える地形にこそ罠がある。急斜面の延長にある平坦地は、もっとも危険な場所である。
堰堤を越えたところで、別山に続く小さい尾根に入って行く。例年だといくつかの沢筋にはデブリが確認できるが、今回は見られない。一度に積もった雪のため、一時的に安定した状態を保っていると考えられる。
七合尾根の対岸付近で雪質のチェックを行う。スノースーを使って雪を柱状に切り出し、コンプレッションテストを行った。手首、肘による打撃ではビクともしなかった。腕の力でも層がずれることはなかった。1m以上が同じ層である。引き続き尾根を登っていく。標高が高くなると、雪質に変化があるかも知れない。

コンプレッションテスト

雪面に霜柱のような結晶が見られるようになる。表面霜が日射により融解したものではないかという。表面をなでると、さらさらと流れていく。標高の高く低温なエリアでは、霜の層がいつまでも保たれ、その上に雪が積もると弱層となる。
そして、尾根の延長に別山が迫ってきた。疎林帯の白い斜面で二回目の雪質のチェックを行う。コンプレッションテストでは、弱層を見つけるための有意な情報は得られなかった。続くルッチブロックテストでは、20㎝下にあられの層(弱層)が認められた。雷をともなった降雪の際に、時折あられを降らせたと考えられる。同じ降雪でも降り方によって、多様な層を形成する。切り出し面や表層の雪の結晶をルーペで注意深く観察する。
また、雪の温度を計測する。温度勾配が、10㎝1℃であったため、霜が形成されやすい状態を表していた。
最後、別山直下まで登る。やはりデブリは見られない。弥山尾根、八合尾根に1パーティーずつ取り付いていた。冬シーズンにしては、降雪後数日経過し珍しく安定した状態である。
雨が降りそうなので、下山しようとしたところ、北壁の滝沢を滑走しようとするボーダーが目に留まる。下部には滝があり、とても降りられそうにないのだが。しばらくして、また稜線に向けて登り返していった。
元谷小屋近くで小休止する。その間、川本くんのリクエストでスノーボラードによる支点の強度を確認した。強固に見えた支点も、ピッケルの支えを失うと、簡単に切れてしまった。あまり使いたくない。やはり、埋め込み式のアンカーが安心である。
帰路につくと、本格的に雨が降り出した。
<コースタイム>
1/28(土)
広島→伯耆町(神庭邸)、15:00~18:00 机上講習
1/29(日) 5:10神庭邸→5:45~6:20仁王茶屋→7:15~7:25大神山神社→8:15~8:25元谷小屋上部→標高1100m地点にて弱層テスト→9:35~11:00標高1230m地点にて弱層テスト→11:20 標高1310m地点→11:55~12:25元谷小屋下部にて休憩、支点テスト→12:55大神山神社→13:30~13:55仁王茶屋→神庭邸→広島