道後山(1,269m)
瀬戸内から見える山々が初夏の装いを始めようとするころ、県北の野山には、まだまだ春がいっばい残っています。グリーンの絨毯をしきつめて、360度の展望を楽しませてくれる山、道後山にも春がたくさんあります。お椀を伏せたような山の頂上からは、目線の高さで中国山地の穏やかな山並みと、遠く北東に大山の勇峰、あとは青空に流れる初夏の雲と、風に運ばれて来る草原の香り、時折山の蝶々たちも遊びに来ます。
道後山へは、中国自動車道を庄原インターで降りて、国道183号線を米子方面に走ります。JRの芸備線ぞいに、のどかな山里風景が広がり、青葉の山稜を映す水田には、今植えられたばかりの稲苗が整然と並んでいます。備後落合の駅を通り過ぎ、やがて急な坂道を上るようになると、道後山入り口はもうすぐです。標識が有るのでそれにしたがっ国道を外れ、道後山への車道に入ります。始めは狭く急な登りですが、しだいに展望も開けるようになり、二車線の快適な道路になります。二車線道路の終点には山の家や、山荘が数軒並んでいます。ここから狭い車道に入り、どんどん登って行くと月見が丘の駐車場に着きます。ここからの眺めもなかなかのもので、つい芝生の上に当を広げたくなりますが、せっかくだから頂上まで持って登りましょう。
駐車場から見える山は岩樋山(1260m)で、道後山(1269m)はその奥に有ります。岩樋山に向かって登山道を歩いて行きますが、道はしつかりしていて、道標も要所要所に有るので迷うことはないでしょう。駐車場から約20分で休憩所に着きます。ここから岩樋山の中腹を反時計回りに歩き、右手に月見が丘や比婆山連峰、猫山等を見ながら登ります。やがて道後山と岩樋山の鞍部に出ます。この辺りは両国牧場と呼ばれ、鳥取県との県境ぞいに、石垣が約1Kmに渡り積まれています。牛の放牧が盛んだった明治の末ごろに、牛の越境を防ぐ為に造られた石垣だそうです。今はもう放牧は行われていませんがこの延々と続く石垣を見れば、当時の繁栄がしのばれます。石垣を越えて右手に行けば道後山の頂上に達します。月見が丘の駐車場から道後山頂上まで、のんびり歩いて約1時間ぐらいです。
天気さえ良ければ絶好のハイキングコースなので、時間に余裕をもつて出発して周辺の大池や多里大山、岩樋山等も散策してみましょう。なお地図とコンパスは必ずもつて行くようにして下さい。
岡本 良治