大山(船上山~大休峠~三本杉)


神庭 進

10月22日(金)~24日(日)

<参加者>
(係)大前、岡本、吉村、宮重(直)、三谷、赤井、神庭

<行動記録>
楽しみにしていた秋の大山、紅葉、キノコの旅。天気にも恵まれ、大休峠から三本杉へ至る古道や三つの滝も訪ねることができた。家に帰っても、しばらくは幸せな気分が続く山行となった。
金曜の朝、今夜の焼き物(七輪で)を何にしようか思案しながら職場へ着くと、作業班長が「神庭ぁ、猪もって帰れやぁ」とニコニコしながらやってきた。軽トラには確かに猪が一頭、吐血して乗っている。これで焼き物の悩みが解消された。昼休みに解体して、大山へ持参した。
広島組は19時に横川出発、22時に日野町の根雨に到着。閉店後の丸合で買い出しをして岡本・神庭の山陰組と合流。鏡ヶ成経由で船上山の手前、大父木地親水公園へと向かう。公園では、猪・鳥・鰻・にんにく等の焼き物を囲み、馬鹿話をして深夜まで盛り上がった。場の熱さとは裏腹に、外を吹く風は冷たかった。
土曜の朝は三本杉林道まで車の回送。「三本杉のカツラ」を過ぎたあたりから道が荒れるので、その辺りに1台デポした。公園に戻って全員乗り込み、船上山登山口へ移動して登り始める。神社へ着くまでに茸取りの人や月夜茸と出会い、キノコシーズンを予感する。神社と杉の古木を通り過ぎて勝田ヶ山への緩やかな登りへ入り、いよいよ縦走路が始まる。ブナ林の中、眼の効く人はナメコやブナシメジを、眼の効かない私は道端のホコリ茸を採る。キノコ主任の二人(大前・吉村)は出力50%。勝田ヶ山では、甲ヶ山を間近に見ながら休息をとる。赤井さんは無雪期の大山が初めてで、当然このコースも、ここから見る大山の姿も初めてのようだ。そういう人と歩いていると、こっちまで嬉しくなってくる。
当初計画は甲ヶ山から甲川源流へと考えていたが、夕暮れが近づくので矢筈ヶ山経由のコースを選んだ。矢筈ヶ山を越えたところで、吉村・三谷・赤井・神庭は、甲川方面へ少し遊びに行くことにした。枯れた立木から倒木へと渡り歩く。吉村主任とその手下たちは出力120%。ここで赤井さんが会心の一撃(ナメコ)をみせ、それを持って大休峠へと下った。
小屋では先行の大前さんたちが火と食事の準備をしてくれている。今夜は当然「きのこ鍋」。食べきれないほどの秋の味覚を堪能した。小屋に入ると、十年前にお世話になった恩師二人と偶然にも再会した。前に会った地元の山岳会の方も一緒で、「また今度一緒に行こうねぇ」と話をした。その夜は4人が外で寝た。

翌朝も好天。今日は、一度行ってみたかった山川谷の古道を行く。廃道になって久しいが、日本山岳会山陰支部出版の「美しき伯耆の滝たち」によれば、大山寺へ至る道として、特に急登もないのに近道で、博労たちにも人気の道だったということである。
中国自然歩道の三本杉別れから飯盛山への尾根状をしばらく行くが、笹に覆われて踏み跡が失われている。そのまま鞍部まで行ってみたが、道はもっと手前から左の沢に向かって降りているようだった。沢に下りてから道を探してみるとすぐに見つかった。最近人の通った気配はないが、さすが古道だけあって、しっかりと残っている。ここからも笹に覆われた所で道が分かりにくくなるが、どうにかトレースできた。この辺りは大山でも一番の原生林ではないだろうか。ブナや広葉樹の巨木が静かにたたずんでいる。途中で横切る小さな沢には、丁寧に石積が築いてあり、川床からの石畳道と同様に思えた。しかしその古道のたたずまいも、杉の植林地へ入ると失われる。

山川谷コースには三つの滝のオマケが付いている。上流から「飯盛滝」「三本杉滝」「二児滝」である。今回の山行にあたって、「美しき伯耆の滝たち」が重要な資料となり、とても助けられた。登山道から滝まで距離があるため、この資料がなければ下り口がわからなかったと思う。
まず「飯盛滝」は、原生林と植林の林分の沢を下っていき、下りきったら目の前に2段の滝が現われる。上下段の滝が絶妙の距離・角度に位置していて、まさに絶景。
次の「三本杉滝」は「二児滝」と近接しているので、先に下流側の「二児滝」へ向かう。植林地内を横切る何本かの沢があるが、ひとつ明確なナメ状の沢があるので、それに沿って植林地内を下っていく。ナメ沢と山川谷の合流点に「二児滝」はある。これも2段滝で、1段目が造る釜が美しい。この辺りは谷の中が広い空間になっているように思った。
二児滝の見物が終わったら、ナメ状の沢を30mほど引き返し、その右岸へ上がりこむ。そこから山川谷上流へトラバース気味に下ると、二児滝の竜頭へ出る。林業用だろうか、古いトロッコの車軸と車輪が水流の中に埋まっていた。ここから約50m溯ると、右側から支流の滝が二本落ち、次いで正面に「三本杉滝」が現われる。今度は癖のない気持ち良い滝で、滝風が強い。支流の滝を含めて三つの滝が見渡せる変わった地形で、岩盤の存在がはっきりと理解できる場所だった。三本杉滝の見物が終わったら、再び植林地内のはっきりした道をたどり、廃小屋を過ぎれば林道に出る。
山川谷の滝はどれも、木登りが苦手でなければロープ不要で、今のところ沢靴もなしで滝の直下まで行くことができる。しかし、「わざわざ急な斜面を下ってまで見に行かなくても」と思われるかもしれない。私も以前はそうだったが、会員の宮本さんから「沢登りは滝の見学会」と教わってから考えが変わった。今回は沢登りではないけれど、やはり見学しなければ。

一向平への道が通行止めとなっている今、琴浦町(旧 東伯町)方面へ通じる道としての山川谷は、危険箇所もなく理にかなった道として、再び利用することを考えてもよいように思う。笹刈りと倒木の処理だけで立派な登山道に復帰させられるのにもったいないという印象が強く残った。帰り道、次回は山川谷を溯行してみようという話が浮かび、また楽しみがひとつ増えた。

最後に、この記録を読んで「山川谷は通行できるのか。」と思われるかもしれませんが、それは間違いです。踏み跡は背丈の笹で寸断されています。地形の複雑な所もあり、一般路としての通行は今のところ不可能です。また、滝への下降も転落の可能性があるので、十分な注意が必要です。

<コースタイム>

23日
9:30船上山登山口→10:00船上山→12:00勝田ヶ山→13:30甲ヶ山→14:30矢筈ヶ山→17:30大休峠

24日
9:00大休峠→9:30三本杉別れ→10:30山川谷源流→11:30飯盛滝→12:30二児滝・三本杉滝→14:00林道終点