<参加者>
名越、吉村、武田、宮重(直)、神庭、中島、高田、三谷
<行動記録>
当初、中島さんと私の二人で、弥山尾根を登る予定であったが、名越さんが案内してくれるという事で急きょ三鈷峰阿弥陀尾根に変更した。阿弥陀川の阿弥陀滝を末端とするこの尾根は、山岳会では通称阿弥陀尾根と呼んでいるが、一般的には三鈷峰より北に伸びる尾根のため、北稜あるいは北尾根と呼ばれているようだ。昔は西壁を含んで、この尾根は良く登られていた。ポピュラーなルートであるが、未だにここからの登頂は果たせていない。チャンスは何度かあったが、あの出来事により、ここ3年はなんとなく登るのに躊躇していた。
神庭式特急ラッセル車は、ノンストップ中宝珠越終点の折り返し運転であった。ラッセルは非常に助かったが、後方車両が付いていけずオーバーヒート気味であった。中宝珠越で宝珠尾根隊(横山、武田、高田)と分かれる。
中宝珠越より剣谷を少しだけ下り、正面に見える西壁のルンゼを登る。度重なる崩壊により従来のルートはほとんど取り付けなくなっているが、ここだけは唯一すっきりとしている。知っている人にしか安易には取り付けないだろう。中島-三谷、名越-吉村-宮重のオーダーで登る。ルンゼの出合にて登攀具を身につけ急なルンゼに取り付く。登攀開始10:00。ここからは、中島式が脅威的なスピードでステップを刻んでいった。あの時より雰囲気が随分違っているので分からなかったが、後から考えると神庭君と間違えて登ったルートそのものであった。ルンゼをそのまま登っても稜線にたどり着けそうだが、岩の露出した尾根の手前でロープを着け、ちょっとした登攀を交えて稜線に出る。あの懐かしいピナクルを巻いて、左手の広大なルンゼをコンテニュアスで登る。激しい雪が降り天候は不安定であったが、時折ガスが晴れては迫力ある岩峰群や大山の北壁が青白く輝いてきれいであった。残念なことに、カメラを忘れて今回の写真はない。もちろん、撮る余裕もなかっただろうが。下を見下ろしてもなかなか険しく美しい尾根である。山の形状といい荒々しさといい、小剣岳といったところだろうか。忠実に尾根をたどると充実するそうだが、夜間登攀になることは間違いない。
長いルンゼを抜けて再び尾根上に出ると、小ピナクルが現れる。よく凍って岩と岩は接着されているのだが、何せ西側はスッパリと切れ落ちているので緊張した。念入りに釘型ハーケンを打ち込み乗り切る。ここを越えるとしばらく薄く雪の乗ったナイフリッジを登る。地熱によって所々落し穴ができている。ロープをたたんで傾斜の緩くなった尾根を歩くと、頂上らしいところに出た。しばらくして、名越さんたちもやってきた。登攀終了14:00、不本意にも早々と終ってしまったが、長い間の課題を終えて感無量であった。夏道との分岐点で装備の整理をしていると、宝珠尾根は多くの登山者が取り付いていた。我々は、剣谷を駆け下りる。元谷小屋では宝珠尾根を登り終えた横山さんたちが立派な雪胴を掘って待っていた。元谷着16:00。雪の多い春先には、川床から北西稜を末端から詰めるのもおもしろいかもしれない(九州の山岳会がトレースしている)。しかし、登る箇所が壊れやすいので、気温が低い時に限る。