あっそーのワシ


ドゥック名越です

26日夕方廿日市を出発。北熊本のサービスエリアで寝て、27日早朝阿蘇の内輪を北側の阿蘇市から高岳の仙酔峡へ向かう。
仏舎利のすこし上がケーブルの駅で広い駐車場がある。朝霧か火山のガスかでかすむ鷲が峰は穂高や槍にもまけない峻岳の風情がある。

駐車場発=8:07~関門=10:00頃通過
~第2ガリー=10:30~第1キレット=10:50-11:10~赤カベ=11:30~鷲が峰=17:00~第2キレット=17:20~高岳稜線=18:50-19:00~仙酔峡駐車場着=21:05(13時間行動!)



駐車場の東にある小山(公園)には20ばかりの遭難碑が建てられている。九州の谷川岳と言われているとは後に聞いた話しで、そのときはまだやや危険な一般道くらいに思っていた。鷲が峰への道はその小山を越えて行くような感じである。立派な橋を渡り、公園までスロープと階段が続いているが、向こうに下りる道には「鷲が峰は登山禁止にします」という立て札が立っているではないか。日本登山大系には、北稜ルート3級ホールド豊富1時間、とか書いてあるので楽勝な縦走なのに岩がもろいから禁止にしたんだ、と思った。しかし立て札から20mも下ったら急に道が無くなり、茅の藪こぎ?となる。楽勝ムードにやや暗い影がさしたのであった。
赤ガレ谷は堰堤工事をやっていて未舗装の道路が関門の下まで来ているので、車が2台なら1台をこちらに回せば仙酔尾根の藪こぎをしなくてすむ。溶岩の沢は見た目よりは堅くしっかりしている。しかし第2ガリーがどこなのか何処から取り付くのかさっぱり分からない。キレットの見えるところまで谷を登って適当な所でキレット方面に斜面を上がり込んで偵察すると、ガリーの末端は滝となって赤ガレ谷に落ちておりその少し下の草付きを登ればよいことが判った。第2ガリーはガリガリの岩盤で登りやすいが、石ころが至る所に溜まっているので油断は出来ない。
着いた鞍部が第2キレットで、ここからは稜線歩きとなる。“3級1時間”を信じてヘルメットもクライミングシューズも持ってこなかった僕は先頭を歩かせてもらう。
踏み後の草の被り様から(最近は)めったに人が来ないのが判る。鷲が峰の手前から後ろの北尾根を振り返ると虎が峰に白い塚が立っている。えーあれ何ねー?(と知らんふりをしながら心の中で手を合わせる・・)



虎と鷲の鞍部から赤壁(1ピッチ)を登ると広い草付きバンドでここから北稜の登攀が始まる。
ちょうどお昼の太陽が鷲の頭にあって壁は完全な逆光となり、まったくルートが読めない。
岩の堅そうな右側壁から取り付き、ゴボゴボだが所々浮いているランぺ状の所を40mで腐ったハーケンや芯しかないボルトの仰山あるテラスに着く。たぶん硫黄による腐食と思われるが、ハーケンを叩くと層になって剥がれ落ちてしまい、とても墜落を支えてはくれそうもない。
こりゃーえらい所に来てしもうた。
2本のロープを回転して、フィックスとリードで使う。トポには「ハングの下を左に大きく回り込んでゆく。右に上がりすぎないように」と書いてあったのだが、左へのトラバースがとても3級には見えなくて、つい右上のカラビナにつられて登ってゆくと、そのカラビナの先はスパー!と切れて捨て縄が幾重にも掛かっており、明らかにそこからラッペル(アップザイレン)して敗退しているのがわかる。
そしてそのカラビナはクライムダウンの支点に使ったこともすぐに判ったが、ロープの流れが悪くなるのでフリーでクライムダウンし、トラバースにかかる。
たしかに技術的には3級だが、只何となくくっついているホールドと腐ったハーケンだけの支点の上で高度感抜群のトラバースはさすがに顔が引きつってしまう。被り気味の馬の背を乗っ越すとこんどはガリーを下って草付きテラスに上がり込むが、全く支点が無いのでV字ハーケンを2本叩き込む。(この壁はV字のみ有効)



ここが北稜の核心部で、次のピッチは斜度の落ちたランぺを50mで広いテラスに出る。
最後はスラブを20mで稜線に飛び出し、ブッシュ30mで鷲が峰の頂上直下5m。
頂上には大きな登頂記念碑(遭難碑ではなく)があり、よくこんな物を持ってきたなぁと感心する。



もう午後5時なのに行く手には馬の背らしき岩稜が続いている。大前リーダーは「広い所があったらビバークも考えーよ」と恐ろしいことを言っている。“3級1時間”と信じていた僕はなーんも持ってきとらんもんね。いやだもんね半袖の着の身着のままビバークは。駐車場まで下りてビール飲むもんねー!
鷲が峰のピークから少し下ると第2キレットの懸垂で、その先に馬の背が待っている。
もう僕の頭の中はビールのことしか考えてない。なんぼ夜間登攀の名越と言われていても、こんな所で寝たくない、とにかく先へ行くのだ。
幸い馬の背はそれほどでもなく1ピッチで終わり、あとは快適な岩稜歩きで軍艦のような高岳稜線に着く。

はや7時、暗くなり始めた中をビールいや仙酔峡へと急ぐが、だだっ広い稜線でけっこう迷って時間を食う。阿蘇市や熊本の夜景が美しい。
道は石ころをコンクリーで固めたようなひどいデコボコで歩きづらいことこの上ない。きっちり2時間かかって駐車場にたどり着く。
風呂と餌を求めて街に下りるがすでに風呂は10時で終わるところだった。

28日:
起きると雨。朝食を作っているとだんだん強くなってきたような・・・
今日は根子岳の予定だったが、ラッペルのある岩稜歩きと取り付きの長いブッシュには今日の天候は向いてない。
ということで今日は、阿蘇火口見物と温泉と地鶏と馬刺し巡りの一日となったのであった。

コメントを残す