2月19日~20日
<参加者>武田、赤井、中島、神庭、三谷
<山行記録>
神庭君を除く4名は夕方広島を出発する。北上するに従って雨模様となった。県境でも気温が下がらず雨、奥大山でも雨、コンディションは最悪と思われた。快適なはずのトイレもスキー客が訪れ、落ち着きのない宴会となった。公共施設を占有するのは気がとがめ、駐車場にテントを張った。夜半から雨が雪に変わり、積雪は駐車場で10㎝ほどであった。
本日は、ここ大平原から烏ヶ山にダイレクトに登る予定である。神庭君が春にトレースしたという。雪崩が心配だったが、エスケープ覚悟でスキー場に取り付く。飲み過ぎた神庭君は反省中で、中島さんは体調不良で何とか歩ける状態で先が思いやられた。スキー場は雪上車が整備中であった。ゲレンデに穴をあける我々に対し、従業員に「ゲレンデの端を歩くように」と警告された。スキー場を勝手に歩いている方が確かに悪いので、素直にいうことを聞く。
スキー場から見える斜面には雪崩の破断面が露出しており、広い斜面には気を付けるよう促した。リフト終点でワカンを装着し、地図の確認と高度計をセットした。そこから顕著な尾根に取り付く。気温の高い状態から一気に冷え込んだため、ステップを切っても簡単にザーッと流れてしまう。しかし、全体的に風の強い尾根で、吹きだまり以外はクラストしている。東側には2m~3mの大きな雪庇ができており、注意して樹林の際を歩いた。
先週の教訓を生かして、1201mのピークでは地図の確認を行った。そのピークから「東へ」という意識が強すぎて、方向転換を早まってしまった。急激に下っているのですぐに気が付き引き返す。しばらくなだらかな稜線を歩き、尾根の分岐らしい場所に突き当たので、東に方向を変え後、広い尾根を一旦下る。鞍部で一本立てるとともに、アイゼンを装着する。再び登りにはいるが、すぐに尾根は北に方角を変え、やがて烏ヶ山の頂稜が見えてくる。ガスの切れ間から見える稜線は切り立った岩壁状に見え、「これを登る(登攀する)のか」と思うず叫んでしまったが、取りあえず基部まで近づくことにする。
最上部は見えないが、約100mにわたってブッシュ混じりの雪壁が続いている。ロープを出すか否か難しいところだが、ブッシュ沿いに行けば何とか登れるだろうと思いロープ無しで登り始める。まずブッシュ帯を避けて雪壁を登るが、10m位登ったところで、危うくシュルントに落ちそうになる。表面を崩すと深さ数メートル、幅数メートルにわたって空洞ができている。雪の下には草付きの岩肌が見えており、木が映えていない雪壁がどういう状態になっているのかを納得した。春の北アルプスではこういう地形に何度か遭遇している。ステップ切ろうとするが段差が大きくなるばかりである。中島さんに尾根状のブッシュ帯を先行してもらう。最初ブッシュがうるさかったが、上部はすっきりした雪壁になっている。雪の表面は堅く、けり込んでもつま先しか入らない。中島さんが頑張ってステップを切り、ジャスト南峰の頂上に出た。稜線は風が強い。東側に張り出した雪庇に気を付けながら北峰を目指す。北峰は標識の頭がわずかに出ている状態である。岩陰で風をしのいで行動食をとる。天候が悪いので、登ったところを引き返すことにした。
南峰からは懸垂下降をする。約3ピッチの懸垂で基部に戻ってきた。頂上は気温-5℃だったが、寒気が流れ込み尾根上では-10℃まで下がった。トレースは消えかかっているため、迷わないように慎重に下り無事スキー場へと出た。
時折太陽が出たり、激しく雪が降ったりと不安定な天気だったが、なかなか美しい尾根でワンポイントもあり良い山行だった。帰りはうどんを食べる余裕もあり、割と早く広島に着くことができた。
■「大山道」
冬はスキー客が訪れるものの、夏はひっそりとしたこの地域は一体何があったのだろうか?かつて、岡山からの参拝者や博労(牛馬の仲買人)は、大山環状道路ではなく「大山道」を利用していた。大山へ通じる道には、「坊領道」「尾高道」「溝口道」「横手道」「川床道」があり、これらを総称して「大山道」とよんでいる。岡山県からは、大山道のうち「横手道」を通って、多くの人々が大山にやって来たようである。「横手道」は標高800m前後を大山寺から桝水高原、文殊堂へ横断し、さらに鍵掛峠を通り御机→内海峠→川上村→湯原町の三坂峠→久世町→岡山市まで続いたとされており、道端には往時を偲ばせる道標が現存している。山陽方面からの大山道の主流であり、行政的には近世の大山寺と京都や比叡山を結んだ公用の道でもあった(鳥取県観光連盟HP他引用編集)。
以前の例会で「横手道」で見た「溝口」の道標はその名残だろう。合併により「溝口」という地名は失われてしまったが、そのような歴史的背景を知る人はどれだけいるだろうか?
<コースタイム>
駐車場7:10→8:00リフト終点→9:00 1201m→10:00烏ヶ山南峰基部→11:00烏ヶ山北峰11:20→12:00烏ヶ山南峰(懸垂開始)→13:00烏ヶ山南峰基部→15:00駐車場