利尻山


吉岡 好英

以前から利尻山に興味があり、時間が取れたので行ってみることにする。一人で行く予定だったが、恐羅漢の山小屋で計画を話していると、石田さんが「利尻なら参加する」という。そこで高年二人旅となる。出発は6月8日午前0時30分、舞鶴発のフェリーの予約が取れたので決行する。利尻岳と、もう二つの山に登る予定だが、これは船に乗ってから決めることにする。
6月8日 20時45分、穏やかな日本海を20時間航海の後、小樽港に到着。小樽から道央道で深川に向かい、ここから一般道で日本海沿いに車を走らせ稚内に向かう。留萌からの道路は広く、また車も少なくスピードも出がちだ。前方にパトカーが停車しているのを確認するが、通り過ぎるとついて来た。ミラーで見ると赤色灯が点滅している。停車すると25kmオーバーだとか、切符を切られる。
6月9日 利尻山(1721m)
稚内フェリー乗り場には3時ころ到着。利尻島行きの東日本海フェリーの駐車場前に車を止めて仮眠する。5時ころには係員が来て駐車場も開く。利尻山登山は、できれば稚内から日帰りの予定だが、テントや寝袋、一泊二日分の食糧をパッキングして、朝一番の6時30分発利尻島・鴛泊行きのフェリーに乗り込む。稚内港を出て岬を回ると利尻岳が見えてくる。登山者らしきグループも何組かいるようだ。空は快晴でデッキに出て利尻岳やカモメの写真を撮る。まだ利尻山には残雪が多く見られる。8時10分、利尻島・鴛泊に上陸。さっそくタクシーの運チャンが客引きに来る。登山で来たことを告げると、「今年は残雪が多く、沓形からのコースは頂上直下のトラバースが危険なので登山禁止」と言う。このコースから登り、フェリー桟橋に近い鴛泊コースへ下る予定なので、ダメなら引き返すと言って登山口に向かってもらう。タクシーで30分くらい。見返台園地駐車場では3人が準備をしている。聞いてみると、写真を撮りに来たそうで頂上には行かないらしい。準備をしているうちに、彼らは出発。10分くらい遅れて、駐車場から少し下ったところにある登山口で石田さんと別れ、登山道に踏み入れる。5分も歩くと先行者に追いつく。登山道はしっかり踏まれているが、火山特有の土で濡れていると滑りやすい。振り返ると礼文島が見えるはずだが、礼文島は雲に覆われ見ることができない。利尻山も時々だがガスで隠れる。一人の女性が登山道沿いで写真を撮っている。彼女も頂上には行かないらしい。あまり花には興味ないが、今まで見たことのない花は写真に収める。7合目の標識のあるところから少し上がると尾根に。タクシーの運チャンにこのコースは行くなと忠告されるし、ガスが晴れないならどこにいても同じなので引き返そうかとの思いがよぎるが、とりあえずトラバース地点までは行ってみることにする。しばらくするとガスも晴れてきた。尾根上からはコースの概要が手に取るように分かる。馬の背と書かれた標識を過ぎると急登となり、上りきると三眺山のピークに着く。ここには祠がある。ここから少し下るが、崩れやすく悪い。鞍部から100mくらい登ると、トラバース地帯だ。例年なら崩れやすいガレ場だろうが雪がべっとりとついており、4人の登山者が下ってきた。彼らはピッケルを持っている。広島を出る時、ピッケル、アイゼンが必要なのではと思っていたが、忘れてきてしまった今となっては仕方ない。せめて救われることは軽登山靴でないことだ。トラバースは下ってきた登山者のトレースは使わず、自分で蹴り込みながらステップを作り慎重に進む。落ちたら怪我では済みそうにない。悪いことに昨夜は一睡もしていないので、漢方68などで予防したにもかかわらず足が引きつって痛い。蹴りこむたびにピリッとくる。150mくらいあるトラバースの中間地点で腹ごしらえと漢方68をとり、一休みする。礼文島がよく見えるようになってきた。ここから頂上が見えるが人影を確認することはできない。さらに雪渓を横断し、いやらしいところは無事通過する。通過地点からは急登となるが、上部の雪解けで滝の状態。やがて鴛泊コースへ合流し、頂上への登山道を25分くらい上ると利尻岳頂上へ到着。上ってきた沓形コース、それに下山する鴛泊コースには人影は見えない。今日中には稚内に帰りたいので、早々に下山開始。コース上の利尻山避難小屋の上部で、一人の登山者が小屋に荷物を置いてきたのか空荷で上がってきた。小屋の先にある小ピーク・長官山を過ぎると下りだけだ。石田さんから無線が入り、下山予定を聞いてくる。稚内行きの最終フェリーは17時30分。16時30分を目標に下ることを告げて先を急ぐ。登山道は滑りやすく、捻挫でもしたらと思うとゆっくりとしたペースになる。ポン山の西に位置する甘露泉を過ぎると利尻北麓野営場に着いた。石田さんがタクシーを待たせており、
何とか最終フェリーに間に合った。19時10分、稚内へ。今夜は最北端の宗谷岬でキャンプをする。
コースタイム 
稚内(6:30)――(8:10)利尻島・鴛泊(8:24)–(8:45)見返台園地・沓形コース登山口(9:00)—(10:03)7合目—(11:45)三眺山—(13:40)分岐点(13:45)—(14:05)利尻山(14:06)—(14:52)避難小屋—(16:43)北麓野営場–鴛泊(17:30)――(19:10)稚内-(20:20)宗谷岬

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