Re:2003冬・槍ヶ岳 2002.12.29~2003.1.3


田房美穂

去年の冬合宿では,天候の悪化が予想されていたために,目指す槍ヶ岳は奥丸山から眺めただけだった。それでも,十分満足したことを覚えている。冬の初めてのテント生活。重い荷物を背負っての歩きにくい雪道。入山日は吹雪の中歩いた。今年も同じ場所に来て,去年の冬と比べていた。今冬,ここにくることは,去年から決まっていたことなのだ。槍平から先に進むこと,3000mの稜線を吹く風にうたれること,できれば槍の穂先に立つこと,今回の合宿の目標は3つだ。
12月30日。新穂高温泉の夜明けは神秘的だった。薄暗い蒼色の中に,白い山々が迫ってみえる。冷たい空気の中でピリピリしたものを感じた。天気がよくなるといいな。それだけ思った。槍平までの道のりは4ピッチ。晴れた中歩く。去年はとにかく小泓さんの後を追っかけただけだった。今年も状況はあまり変わらず,やっぱり小泓さんの後をついて行くだけ。槍平までラスト1ピッチがしんどかった。
2日目,4時起き。天気は小雪。急いで朝食を取り支度をして,6時過ぎに槍平を後にする。ここから先は,未知の世界。とにかくついて歩く。去年話しに聞いた「宝の木」を目指す。小泓さん先頭で黙々と雪道を歩いていく。途中1本立て,宝の木でもう一本。だんだん斜面が急になり,大喰岳の西尾根の岩稜帯に入ってアイゼンをつける。斜面は大きな岩と雪の塊に見え,先にその塊がいくつあるのかわからない。時折強い風雪が打ち付け,稜線に近づいていることだけがわかる。手先がじんじんし,顔がピリピリする。岩を無心になって登るとわずかな雪の切れ間から,青い空と槍の穂先が見える。もう少しだと思うとほっとするものの,寒さと風はだんだん厳しいものになる。「もう,3000mは超えたかなぁ。」こんなことばかり考えながら重たい足を運んでいると,広いところに出た。大喰岳山頂。白い雪面に時折光が射し,きらきら輝いている。でも,相変わらずの風。青空にどっしりとした槍ヶ岳と槍の肩の小屋がまだ遠く見える。飛騨乗越までの下りはすぐ終わって,最後の一登り。帰りに大喰岳から下るとすると,下った分だけ登り返さないといけない。そう思うと,足がますます重たくなる。もう少しとわかっていても最後の一登りが一番しんどかった。槍の肩の小屋で温かい飲み物を口にする。穂先まで登って,帰るだけの体力があるのかと考えた。帰りのルートは西鎌尾根経由らしい。ということは大きな登りがない。そう思ったら,ここまで来て槍の穂先に登らないわけにはいかない。あまり宿題は増やしたくない。吉岡さんとザイルと組んで穂先を目指した。梯子や鎖の連続で緊張したが,よく見るとホールド・スタンスともにしっかりしている。天応でアイゼンを履いたときより楽に見えた。しかし,滑ったら終わりなので慎重に登る。ルートを考えながらただ岩をよじ登っていると最後の梯子に着き,ひょいと上がったら頂上。相変わらず祠があった。夏に続いて2度目。冬に来ることができてとても嬉しかった。夏合宿のルートを上からのぞき込むと,ちょっと下りたくないような所だった。夏から進歩したんだろうか?少し自問自答。頂上で写真を撮ってすぐ下山。ザイルワークを教えてもらいながら慎重に肩の小屋まで下りた。大前さんが用意してくれていた温かいミルクがおいしかった。そこから西鎌経由で一気に下った。岩稜の下りではアイゼンを引っかけないようにそれだけ注意した。新雪の中をどんどん下るのはおもしろかった。
3日目。10時までに戻ってくることを条件に,奥丸山を目指す。天気は快晴。薄暗い中登り始めたが,だんだん周囲が見えてきて,目の前に一大パノラマが開けてくる。急登ではあるが,雪がふかふかしていて楽しい。去年はよくわからず必死についていったのを思いだした。今回は途中でゆっくり立ち止まって,景色を楽しんだ。登るにつれて開ける視界。昨日登った槍が小さく見える。大喰岳,中岳,南岳,大キレット,北穂高岳,雄大な滝谷のドーム。夏に歩いたことが信じられない。写真を撮りながら,山の名前がだいぶんわかってきている自分に気がついた。やっぱり行ったことがあると覚えるのだなと実感。奥丸山の山頂での感慨深さは去年以上だった。山頂での眺めと北穂からのご来光を眺めて,一気に下山。途中で黒川さんと中島さんに滑落停止の初歩を教えてもらい,楽しみながら下りた。あとはテントを撤収して下山。相変わらず雪上を歩くのは下手くそで,何度も尻餅をつき,途中悔し涙なんか流しながら下りた。重たいのに持ってあがったスキーはビンディングがあわず,使えなかった。スキーの不調もあり皆さんを思いっきり待たせて下山となった。中崎山荘で素敵な湯につかり,広島へ。あっという間の5日間だった。
今回の冬合宿は最高の天気に恵まれ,3つの目標達成という結果で終わった。山の宿題に提出期限はないけれども,早めに提出することができてよかったと思う。例会山行の度に体力のなさを感じ,それでも参加を認めてくださる先輩方がいて下さった。そのおかげで,本当に山の楽しみ方がグンと広がった1年だったと思う。まだ,連れていってもらうばかりだけれども,その中で少しずつでもいいから成長していきたいなぁ。今冬のシーズンは始まったばかり。次の課題は何だろう?。素敵な新年の始まりに感謝しつつ,今年1年,皆さんと一緒に頑張りたいと思います。

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