No.3546 大山(川床~阿弥陀川~剣谷~三鈷峰~ユートピア~野田ヶ山~大休峠~川床) 9月13日~15日 (係)三谷


三谷 和臣

<参加者>大前、岡本、坂口、神庭、蒲田、西田
<行動記録>
 台風の影響が心配だったが、今回はかつて雨で流れたこの計画が実現できそうだ。
9月13日
 まだ台風の余韻が残る広島を15:00過ぎに発つ。比婆から道後山の峠にかけては、土砂降りに見舞われるが、局地的なものだろう。広島組は19:30頃ホテル・バスストップに到着し、しばらくして岡本さんが到着された。神庭君より、仕事を終えて鳥取を出たと連絡が入る。遠く京都から参加の坂口さんを、米子道の大山Pで拾ってもらい、22:30にみんなが揃う。距離や仕事の壁を乗り越えて参加してくれたことがうれしかった。各々の近況を聞きながら夜が更けて行く。
9月14日
 6:30起床し、8:00前には川床に向けて出発する。連休とあって、下山キャンプ場などの駐車場は満車である。川床の駐車スペースも一杯で、強引に路肩に止める。
 川床から阿弥陀川に取り付く(8:30)。地獄谷に比べて水量は少なく、石飛びに神経を使うところも少ない。しかし、早くも西田さんと○○さんが水浴びをしている。西田さんは、プライドを捨ててジャブジャブやってる。所々ブッシュがあるものの、テープを探しては踏み跡を辿る。二股に分かれる谷の右股を進む。左股は無名の滝のある谷である。水量が乏しくなった沢をブッシュをかき分けて進んでいくと阿弥陀滝(45m)が現れる。滝壺はなく水量も少ないが、落差があり迫力がある。過去に登ったことのある神庭君が階段状だと言うので(下から見た限りではそう思えた)、下手な私にでも大丈夫と思い取り付く(10:30)。
 1P目は、最初は階段を上り、徐々に傾斜が増してくる。残置ハーケンをハンマーでガンガン打ってチェックする。いざヌンチャクをかけて引っ張ると、スポッと簡単に抜けてしまって唖然(あごの部分を軽くたたき、跳ね返るものはOKらしい。一つ勉強になった)。厳しい自然条件下で効いていないものが多い。中には手で抜けるものもある。最近打たれたリングボルトは心強いものの、少々疑問。最後は、外傾したスタンスに恐る恐る足を乗せて、テラスにはい上がる。テラスといっても3人くらいが限度だろう。残置ハーケンは信用できず、ハーケンを打ち足して支点を作る。ザイルをFIXし、続いて神庭君が登ってくる。
 2P目は、少し登るとすぐに傾斜がきつくなり、いかにも滑りそうな草付きになる。泥壁に靴をけり込むが、軽登山靴ではエッジが効かない。背中が重く、掴むと剥がれる草付きでホールド・スタンスもなく、この上ない恐怖を味わう。手がはなせないので、支点も作れない。既に10mくらいランナウトし、ここで落ちると小指の怪我どころではない。大股開いて、何とかブッシュ帯にうつる。後は木登りし、滝の落ち口目指してクライムダウンする。ギア類を下げていたカラビナなど全て使い果たした。支点を作ってザイルをFIXする。久しぶりに冷や汗をたっぷりかいた。阿弥陀滝だけにあみだくじの当たりを引いた気分だ。
 引き続き坂口さんが登ってくるが、何度か落石が発生する。その落石は下のテラスを直撃していたらしい。続いて神庭君は、落石が危険なので、滝を直上するルートに取り直す。さすがの神庭君も、息を切らせながら登ってきた(荷物が重すぎるのでは)。続く蒲田さんも、核心部の乗越しにかなり躊躇している。岡本さんもぶつぶつ言いながら登ってきた。西田さんには厳しいのではないかと心配する。ラストの大前さんが、西田さんにはプルージック登攀は難しいと判断し、上から引っ張り上げることにした。「引けー」とか「アップー」のかけ声に、二人がかりで綱引きした。全員揃ったのが、13:45である。みんなの顔は心なしか疲れが見える。「厳しかった」とか「久しぶりに本気で登った」とか本音を言い合った。ちなみに、大前さんは自作の簡易ハーネスだった。神庭君の食べ物の「おいしい」とか、山の「大丈夫」とかは、基準が狂っていることがあるので、これからも気をつけよう。
 開放的な河原で遅い昼食をとる。剣谷に入ると沢の水は枯れて、ガレ場歩きとなる。元谷の砂滑りのような悪場を予想していたが、意外にも道がつけられたように歩きやすい。時折ガスが晴れて、鋸歯のように荒々しい阿弥陀尾根が姿を現す。思い出のピナクルも見える。今にも崩れ落ちそうなルンゼを登ったかと思うと、改めて恐ろしくなった。
 中宝珠越への分岐点を通過した辺りで、何度か地図を確認する。大休峠は無理と判断し、ユートピア小屋に泊まろう思っていた。大前さんの手には既に薪が。岡本さんも何か訴えかけている。気のせいか見えない圧力により、剣谷でキャンプすることにした。滝は元より初めての阿弥陀川も新鮮だった。心ばかりの充実感を噛みしめる。綺麗に整地して、テント一張りと、西田さん専用と合わせてツェルト二張りを設営する。焚き火係は、当然岡本さん。みんな手慣れた作業で、一時間も経たないうちに焚き火の周りに集結した。遠くには、夕焼けに染まる主稜線が神々しかった。熟成された焚き火というと変だが、ちょうど良い火加減になっている。地獄谷のようなせせらぎがなくて物足りないが、その代わり賑やかな満天の星空の下、ゆっくりと時が流れていく。
9月15日
 夜は冷え込みが厳しく、シェラフカバーだけでは寒かったようだ。6:30に起床し、焚き火で暖をとりながらゆっくりと朝食をとる。素早くテント撤収・パッキングを済ませ、火の始末をして、8:00に出発する。
 剣谷を忠実に詰めると、程なくして上宝珠越えからのトラバース道に出てきた(8:30)。なかなか良いコースだった。残雪期にはさらに趣のあるコースになるだろう。
 主稜線に着いたが、ガスに覆われて何も見えない(9:00)。しかし、三鈷峰の辺りが明るくなったかと思うと、我々を待っていたかのように、大山北壁が姿を現す。まるで映画のように感動的なシーンだった。大山が実質初めての新人二人も感動している。分岐に荷物をデポし、三鈷峰まで足を伸ばす。三鈷峰の崩壊壁に驚きながら、高く積み上げられたケルンがある頂上に着くと、船上山へ続く縦走路や烏ヶ山も見渡すことができた。これだけでも大山に来た甲斐がある。頂上で景色を十分堪能した後、ユートピア小屋に向かう。振子沢へ向けて下っていると、槍尾根を歩く登山者が見える。我々が満足した頃、恥ずかしがり屋の大山は、いつしかガスの中に隠れてしまった。
 大休峠では、各方面への登山者が休息している。早くもキノコを収穫した登山者もいた。我々も長目の休憩で、行動食をとる(11:30)。ここを起点に甲ヶ山を周遊する予定だったが、そのまま川床に下ることにした。計画通りにいかなかったという物足りなさは感じなかった。鮮やかな緑からの木漏れ日とさわやかな風を全身に受け森林浴する。適宜休息しながら川床に戻り、三鈷峰周遊の旅を無事終えた(14:00)。
 皆さんのバックアップにより、楽しい例会にすることができました。ありがとうございました。新人二人は満足しただろうか?大山が久しぶりの坂口さんは何を感じただろうか?激務続きの神庭君は、少しは自分を取り戻すことができただろうか?今回の山行を通じて、どんな山を登るにしても、自然に共感できるメンバーあるいはパートナーが大切だと思った。