2004年夏合宿(剣岳登攀) 2004.8.11~15


神庭 進

メンバー:三谷(CL)、中島(SL)、溝手、吉村、神庭

 今年の夏合宿は、お手並みは別にして足並みが揃い、何事もなく無事に終えることができた。雨による敗退までもが自然にできたことは、「少しは成長したのでは」と思わずにはいられない。でもやはり、そこにはベテランの影があった。どの合宿も、このように無理なく無駄なくできればいいのだが。

8月11日
 出発にあたり、私は鳥取にいるので広島まで行かなければならない。7時に出て横川の吉村産業へ11時着。すぐに乗り換え、目指す富山県へ出発。全て順調で20時過ぎには立山駅到着。ホテル「砂防パーク」へチェックインして東屋で軽く前祝を行う。

8月12日
 高原交通機関を乗り継いで室堂へ。歩き出すと、さえぎる物のない宇宙からの太陽光線を浴びて、ジリジリと皮膚が焦げていく。今日は真砂沢まで移動するだけなので、中島さん以外はゆっくり歩く。「どこか一本登ろうか」という提案もあり面白そうだったが、中途半端になるので計画通り真砂沢にベースを張った。まわりは大学生でいっぱいだ。時間をもてあまし、吉村さんが野菜を下ごしらえしているのも知らずに、沢で行水や昼寝をして明日からの行動に備える。いや、ただのんびりしただけ...。食事をしながら、「トップの荷物を軽くして、速く確実に登ろう」というような会話をする。

8月13日
 3時起床、4時半出発。今日は八ツ峰Dフェース富山大ルートを登るつもりである。急げ急げ取り付きへ。まわりの登山者がみんな富山大を登るように見えてきて、長次郎雪渓に入ってからは苦しくてもノンストップで登り続ける。でも結局、それらの登山者は一人もDフェースへは来なかった。取り付きでは2組ほど登り始めていたので、「これが富山大ですか?」と聞くと、そうだと答える。こりゃ難しそうだ。先行パーティ1組目が断念したとき、溝手さんがルート間違いを指摘、長次郎雪渓に面したところは左方ルートで、それをすぐ右へ回り込んだところが取り付きだった。ようやく先行パーティが本来のルートを登り始める。ああ、これなら楽勝で登れそうだ。こちらも準備を始める。今日は私がリードなので、昨日の会話どおり「この共同のコッフェル持ってもらえませんか?」と言うと、「えぇ、もういっぱい。」...そんな殺生な。
 三谷中島ペアが先行し、続いて登る。楽勝に見えたのに、なぜか冷や汗あぶら汗。思ったよりも荷物の重さがこたえる。今回の合宿ではこの1ピッチ目が一番苦しかった。あとはルートを若干外れたり戻ったりしながら気持ちよく登る。12時には全員がⅥ峰へ集まった。ここから懸垂して稜線を行き、クレオパトラニードル・池の谷ガリー経由で三の窓へ。三の窓にはテント2張り。とりあえず挨拶すると、「あっ」と返事が。坂口さんだった。う~ん、盆休みとなると、考えることはみな同じ。私たちはその隣、一番高いところにツエルトを張る。風除けに石が少し積んであった。僕の仕業ではないですよ、赤井さん。水は池ノ谷ガリーをだいぶ下って確保する。夜は昨日に続いて寒かったが、我慢することには慣れた。

8月14日
 3時半起床、5時出発。今日は「難しくはないが、一度は登っておこう。」というチンネ左稜線。登攀終了後は、三の窓まで一人が残置装備とツェルト撤収に下りてくるという計画である。5時20分取り付き到着。取り付きに関してちょっと揉めたが、溝手さんの言われる場所が正しいようなので、吉村・神庭ペアが先行する。ルート図どおり、ピッチをとばして快適に快適に登っていく。ギアの数もちょうど良い。しかし雲行きが怪しくなり、冷たいものが落ち始める。ハーネスを外し、カッパを着込んでさらに登る。7ピッチ目(ルート図では9ピッチ目)で後続パーティから中止との声が届く。登るだけなら登れそうだが、あとが面倒になるので懸垂下降モードにシフトチェンジ。10時半には取り付きに戻った。ツェルトを撤収してパッキングしなおし、坂口さんと記念撮影して三の窓をあとにする。明日には武田・宮重・赤井の、「レディース・リハビリ隊」がくるだろうか。池の谷ガリーを登り、長次郎雪渓を下る。雪渓上部は切れている箇所があるが、軽アイゼンの人は別にして、特に問題はなかった。重くても12本爪を持ってきてよかった。下降途中に熊の岩の横を通ったが、翌々日のニュースによると、そこには遭難された夫婦の遺体があったそうだ。雪渓を下りきり、2人が真砂沢のベース撤収に向かい、剣沢に幕営する。手痛い(停滞)前線の影響で雨がザーザー降っている。テントの3人は水かきで忙しそうだが、中島さんと私のツェルト組は、地面そのものの上に寝ているので水かきの必要はなく快適だった。今晩も寒さを誤魔化しながら朝を迎えた。

8月15日
 3時半起床。雨なので他パーティは起きてこない。5時過ぎには雨の剣沢をあとにした。以後は来た道をたどって順調に帰広した。鳥取まで帰るには遅いので、ビジネスホテル「三谷」に泊まり、記録をまとめてからショーン・コネリーの映画を観て眠った。今年の夏合宿は、こうして終わった。
今回の合宿で課題としていた「落ちない」は達成された。こんなことが課題では困ったものだが、最近の岩登りは落ちることばかり考えていて、ビクビクしっぱなしだったので、今回は「岩って楽しい」と思えて良かった。これからもこの調子で行きたいものだ。
最後に、私は装備担当だったので参考に登攀装備を書いておきます。時間の記録はリーダーに任せます。

共同装備(1パーティ)
ジャンピングセット、リングボルト3、キャメロット3(0.5、0.75、1.0)、ハーケン各種5、50mダブルロープ2

個人装備(1人)
カラビナ12、スリング10、クイックドロー1、エイト環1、ATC又はルベルソ1、アブミ1(片方)、バイルorハンマー

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