高岳~天杉山縦走


松林

3月1日~2日  (係)松林
参加者:吉村、平本、徳永、保見
<行動記録>
前置きは長くなるが、ある時、宇部山岳会の小五郎山~高岳を一週間かけて縦走する記録を読んで思い付いた。自分も長い稜線を縦走してみたいが、長い休みは高山帯での合宿が優先だ。それならば少しずつ歩いて地道に軌跡を繋げようか。南ルートは羅漢山、北ルートは阿佐山を過ぎて江の川に落ちるまで延ばせるだろうか?などと考え始めると欲が膨らみ、大万木山あたりから道後山までの稜線も意識してしまう。これはたぶん20年、30年の計画になりそうだ。
今回のコース選定は、まずは宇部山岳会のルートと重なる部分を、と考え、アプローチやエスケープの問題で虫送峠~高岳~天杉山とした。虫送峠~高岳は登山道が無く、記録が少なく面白そうだ。だが現場の様子が気になって11月に下見に行き、迷いながらも笹を掻き分けて高岳に到達し、一人で充実してしまった。1月、2月にも登山道の無いルートでの山行は例会で何度かやっていたし、当日の山行中に、こういった山行での下見は不要だと気付いた。
さて、本題の山行報告に入ろう。奥匹見峡への回送を済ませ、10時過ぎに虫送峠から入山する。天気は良くも悪くも無いが、気温が高く、歩き出すとシャツ1枚でも暑さを感じる。「このままでは夏の登山など無理だ」などと言っていると、吉村さんから「体が冬仕様になっていて暑さに慣れていないだけ」と言われ、納得する。他のメンバーもヤッケやカッパが暑いと言い出し、早速衣類調整する。
ルートファインディングは平本、徳永、保見さんの3人に任せて、吉村さんと僕は後方で見守る(?)オーダー。雪は腐れ雪で、先頭はワカンを履いて15~20cm程度埋まっているようだ。新雪とは違って腐れ雪は足に体重がかかってからストンと落ちるため、ふくらはぎには悪いが、前の3人には頑張ってもらうしかない。
911.3mピーク付近を過ぎ、先頭は尾根の形、県境に沿って西へ進んでいる。傾斜の緩い尾根線から傾斜のきつい斜面を下り、沢に出くわす。ここで「なんで稜線を歩いているのに沢に出るんだ?!」となるはずだったが、皆はそれほど疑問に思っていない様子。ここは県境を匹見側の谷が割って入っていて、県境と分水嶺が一致していないのだが、これは地形図を良く見ないと分からない。忠実な稜線歩きをするなら920mピーク手前まで遠回りして進まなければならないが、沢は大股で渡れるほどで、僕の解説など聞かずに早く行きたい人のほうが多かったため、渡渉して先へ進む。
先ほどの分水嶺と県境の不一致は県境を手短に繋げたいためだったのか、もしや過去に河川争奪の歴史があったのでは?と思い調べていると、昔、八幡原は湖で、湖の水は今の虫送峠から匹見側へ流れていたが、柴木川の浸食が深くなり流路が変更されたことを知った。歩きながらそのことについて吉村さんと話していると、吉村さんから前の3人に「君達も学術的なことを考えながら登山しなさい。」との言葉が飛ぶ。多面的な山の楽しみ方も必要だ。そういえば、お馴染みの「東屋とは?」がこのときも出てきたが...
いくつかのアップダウンを経て左手に緩い地形を見ながら南西へ進む。聖湖の西から伸びて来ている谷、登山道(?)と鞍部でぶつかるはずだが、地形が緩いために鞍部を見つけにくい。下見の際も鞍部を少し過ぎて左手の底が下がり始めているのに気付いたのだが、先頭につられて4人が尾根の形に沿って先へ進んでしまう。少し放置して気付くのを待ったが、なかなか気付いてくれないので呼び戻し、水が流れる方向を考えるよう伝えた。尾根は水の流れを分ける線であり、今回のような分水嶺は流れを大きく分ける線だ。今回の山行では進行方向を向いて左側に降った水は全て柴木川へ、右側に降った水は全て匹見川へ流れているはずだ。
この鞍部で昼休みして、再び稜線に取り付く。似通ったジグザグカーブとアップダウンを経ていると、ピークの数え忘れで840mピーク付近で僕は現在地不明になってしまったが、保見さんはちゃんと数えていた。次の961mピークへの登りは一辺倒なのでここは明瞭だ。下見の際はこの急斜面を笹を掴みながら登ったが、今回は楽勝だ。いやいや、平本さん、徳永さんが前で歩きやすいステップを切ってくれたので非常に歩きやすかった。
961mピークから先は急斜面も迷いやすい個所もなく、14時前に高岳に到着。曇り空だが、凍結した聖湖とその先に臥龍山、深入山、南には聖山、天杉山、恐羅漢山まで良く見えた。今晩はこの辺りでの幕営を考えていたが、時間が早いので先へ進むことにする。山頂からは少し西へ進んで南西へ折れるが、僕はもう少し先ではないかと尾根の高いほうへ進み、右前にV字谷が見えたところで間違いに気付く。以前、地図を見ずに(未確認のまま)しゃべる人に困惑した経験があるが、実はときどき自分もそうなっている。気を付けなければまた無駄を生じてしまう。
聖山への分岐を過ぎて15時を回ると、吉村さんに「そろそろテン場を考えながら進まんと」と言われ、目ぼしい場所を見つけてテントを張った。晩のメニューはオリンピックで活躍した羽生結弦選手にかけて、“ユズ”鍋。料理は苦手だが、レシピのサイトを見て自分なりに具材を準備すると、鍋だからか何とか上手くいった。
2日目の朝は行程に余裕があるため、5時起き。ここ何回かは出発まで2時間を超えていたが、食事が質素だったためか、久々の2時間切りでの出発となった。朝はまずまず冷え、動くにはちょうど良いくらいの気温だ。出発地付近もカーブやアップダウンが多く、常に把握していないと現在地不明となってしまう。登山道にはテープがあるから、とテープに安心して歩いているのだが、999.1mピークからの下りでは尾根の形に沿ってテープが無い方へ4人が下ってしまう。後ろから原色の4人にコンパスを合わせると向きがおかしいのが分かる。保見さんは「絶対に間違えたくないところで間違えてしまった」と反省しきりだ。確かにここはテープが無ければ、どこから南西方面へ下るのか見極めるのが難しい。三段峡側に落ちる斜面の縁が分かれば良いが、とりあえず南西へ進みながら軌道を探るのが上策だろう。
下った先の奥匹見峡の分岐は平坦な地形で、一帯は樹高が20mを超す松が他の針葉樹とともに群生している。吉村さんによると「この先に“野田原の頭”があり、聖山の分岐が“野田の百本松分岐”ならば、野田という地名があり、ここがおそらく“野田の百本松”だろう」とのこと。
この分岐で少し休んで出発する。分岐から延びていたトレースは最初のピークを過ぎるあたりで消えていたが、ルートファインディングには問題なく、順調に野田原の頭へ到着する。途中、後ろを振り返ると樹間に聖山の山体が見え、遠く雲海の上に高岳がちょこんと頭を出していた。野田原の頭から鞍部に下り、天杉山へ登り返す。天杉山は近くに1190mピークがあるが、山頂および三角点の場所は1173.8mの位置となっている。
休みながら景色を堪能していると少し風が出てきたため、カッパを羽織って復路を進む。奥匹見峡分岐からは足早に尾根伝いに登山道を下り、登山口へ。さらに除雪されていない道を500mほど進むと、駐車地の小学校跡に到着。
<コースタイム>
3/1(土)
08:25戸河内道の駅→09:08虫送峠、車回送10:10→10:54 911.3mP→12:00聖湖からの登山道分岐→12:45 840mP→13:50高岳→14:45聖山分岐→15:20右カーブ屈曲部、幕営

3/2(日)
05:00起床→06:50出発→07:52奥匹見峡分岐→09:28 1136mP→10:10天杉山→10:52 1136mP→11:44奥匹見峡分岐→12:49奥匹見峡P