那須連峰 阿武隈川・一里滝沢遡行(個人山行)


宮本 博夫

日程:2010年6月12日~13日
参加者:坂口、宮本
←写真:核心部入り口の滝
<行動記録>
 今回本来のメンバーは菅野さん、坂口さん、宮本の3人であり、行き先は阿武隈川本谷であった。天気も上々、予定通り出発して順調に思えたのだが、本谷遡行開始後1時間ほどでアクシデント発生。菅野さんがごくありふれたゴーロ岩の乗り越しで足を何かにひっかけて転倒して、河原の岩に頭から突っ込んだ。この際、指があさっての方向に折れ曲がってしまい、一見して骨折と考えてすぐに引き返し、町の医者に行き診察を受けた。結果は脱臼であり、当然、軽症ではないものの心配していたほどの重症ではなく、不幸中の幸いであった。当初は骨折に違いないと思ったが、脱臼というのはあそこまで曲がってしまうのかと思った。治療後、菅野さんには誠に申し訳ないのだが、せっかく福島まで来ているので、坂口さんと二人で規模を縮小して再度山行することにし、菅野さんは新白河駅に送って新幹線で帰っていただいた。

 あらためての行き先は本谷支流の南沢に行くことにした。行程は本谷の半分以下だが、滝が多くて阿武隈川ではポピュラーな沢コース。午後2時過ぎに再出発。南沢は出発してまもなく出合う沢で、林道の木の間からも沢筋は確認できていた。下降点が谷底より少し遠かったので、もう少し谷底が近いところから降りようと上流から戻ってアプローチしたのが間違いで、南沢のひとつ上流に出合う、一里滝沢に間違えて入った。出合いは南沢と同じ規模の10m滝があり何も疑わなかった。
 その後はやけに散漫にしか滝が出てこないなと思いつつ、一時間半も遡行した頃に何かおかしいと思い始め、明確な二俣地形が出てきたところで間違い確実と判明した。遅い出発で急ぎ気味だったので、地形図も方角も遡行図もろくに見ないで進んだのが間違いのもとであった。朝に往復した道のりで一度見ていたせいか、思い込みに加え、目的地特定に慎重さを欠いていた。行程は長くなるがたいした問題にはならないと思い、そのまま一里滝沢を遡行することにした。
 話しが少し戻るが、一里滝沢では遡行開始早々に右岸側に残雪が現れる。遡行を続けると徐々に残雪が多くなる。雪が消えて間もない部分はフキノトウやゼンマイがあり、サンカヨウの花も見られた。ところどころにウドがあって、若芽をもらって天ぷら用にお土産にした。
 しばらくは沢に入らなくても両岸歩けるような地形が続いたが、前述の二俣通過後は両岸狭まってきて、すり鉢上のゴルジュの中に滝が現れる。たいした高さではないが、壁はぼろくて登ることはできない。仕方なく右を巻くが滝の高さの割にはかなり高く巻かされる。次の滝もその次の30m大滝も登れるものではなく、潅木少なく草付き気味の不安定な急斜面に高く追い上げられて苦しいトラバースを続け、次の25m滑滝上部でやっと沢に戻ることができ、核心部を抜けた。高巻き途中ではピンクのツツジ(名前不明)、シロヤシオツツジ、シャクナゲが咲いていたが、時間的にも地形的にもあまり余裕がなくて十分には鑑賞できなかった。
 18時を過ぎて核心を抜けたところでよいテン場があった。目の前には雪渓があった。この日の焚き火はすぐに火がついて大変よく燃えた。薪の湿り具合によって、さっぱり燃えずに寝るころになってやっと調子が出てくることもあれば、何の苦労もなく盛大に燃えることもあって、おかげ様でいつも楽しい夜が過ごせます。
 翌日は雪渓がだんだんと多くなり、この先、沢を埋めるようになった場合は通過が問題になると心配された。しかし沢筋の向きが変わってきたのか上部に登ると雪渓の量は逆に少なくなり、心配には及ばなかった。最後は雪渓を登って稜線に達するものと思い込んでいたが、笹薮を掻き分けて稜線に出た。
 稜線ではシャクナゲの花があったが、残念ながら盛りを過ぎていた。珍しく時間も早く、気持ちの良い稜線をのんびりと歩いた。途中、坊主沼に非難小屋があったが、新築で素晴らしくきれいだった。中の板張りはピカピカで布団も通気性が十分考慮された吊り天井に保管されていた。機会があれば是非泊ってみたい小屋だった。
 13時に下山し、値段が高いせいか空いている甲子温泉で汗を流した後に坂口さんと解散し、それぞれ帰途についた。今回の一里滝沢は平凡な前半部と手に負えない後半部(核心)の構成で登攀具の出番はなかったが、草花、山菜、ツツジ類や残雪がよいアクセントだった。遡行と下山の距離も結局南沢だと短過ぎだったので、一里滝沢に間違えたのは丁度よかった。

 その後、菅野さんからは治療に3週間位要するが、8月には復帰見込みとの連絡をいただいた。一日も早い回復をお祈りしたい。今回の教訓・反省として、事故は何でもないところで起こるということ。よく言われる話しであるが、思い知らされた。また、結果的には何も問題はなかったが、沢の間違いは軽率な判断だった。ほとんどの沢は初めていくところなので出合いはわかり難いことも多く、いつも沢への下降点確認や出合いの判断はかなり慎重にやっているのだが…。何事も基本を怠ってはならんということでしょう。以後十分に気を付けたいと思います。

<コースタイム>
6月12日;奥甲子温泉再出発14:20~核心部抜けた幕営地18:15
6月13日;出発6:50~稜線8:30~甲子山11:30~奥甲子温泉帰着13:00

コメントを残す