谷川岳 万太郎谷遡行(個人山行)


宮本 博夫

日程:2011年8月11日~13日
参加者:菅野、坂口、宮本
←写真:三ノ滝の登攀

<行動記録>
 関東支部(自称)の今夏休みは3年連続の上越方面で、谷川岳の万太郎谷。一言でいえば沢登りの楽しさを集めた秀渓だった。ここは本来1泊2日の沢であるが、最近の遡行ペースを考慮して2日半(2泊)山行で計画した。

 8月11日 坂戸駅9時集合、関越道に乗り、谷川岳真下の関越トンネルを通って越後湯沢で降りる。コンビニで買い物を済ませ、入谷地の土樽・吾策新道登山口を14時過ぎに出発。さっきまで予報通りに雨が降っていたが、出発時には止んで晴れ時々曇り。今日は雨で入谷出来ないと思っていたので、上々のスタートだ。
 初日最初の見せ場は広い滑帯、というか岩床帯か。複雑な浸食を見せ、一部で甌穴も見られる。次に関越トンネルの換気塔。これが予想を遥かに上回る巨大な建造物であった。ガイド本でも目障りだ、興ざめだと散々罵倒される代物だが、以外にも関心だったのは建設廃材が全然見当たらないことだった。だいたい、谷沿いに林道や橋が建設されると廃材が谷の中に転がっているものだが…。環境保護気運が高まってからの建造物だからなのか。(もしかしたらどこかの新幹線みたいに埋めてたりして?)
 最後は本日のクライマックス、オキドウキョウの瀞場。3度の泳ぎで越していく。最初の瀞は問題なく通過し、次の瀞もへつりと飛びつきで通過。斜めで不安定な棚に一旦上がり、最後の白濁したさらし場の突破を試みるが水勢が強く滝に近づけない。真っ白に泡が立っているので浅いのかと思いきや、私の首までの深さがある。何度も水勢に引きはがれそうになりながら側壁の僅かな手掛かりにつかまり、どうにか滝の下まで到達。ロープでザックを引き寄せる。最後の滝は遠目には楽勝に思えたのだが、以外につるっとしており、強い水勢に阻まれて滝に安易に足を置くことも出来ない。残された道はあきらめて戻るか、急な側壁を登るかしかない。側壁はかぶり気味でぬめっており、ザックを背負ってはとても登れない。しかしザックを降ろせるところがなく、仕方なく側壁の中段に持ち上げてから空身で登るが、ザックが邪魔でこれも楽ではなかった。壁の上に横に伸びた枝をつかんでどうにか棚の上に這い上がる。最後は進むにつれて悪くなってしまい、もう、「よい子はマネをしてはいけません」という感じで、2つ目の瀞を通過して待機していた坂口さんには、更にその手前で待機する菅野さんのところまで引き返してもらい、お二人ともそこから巻いてきてもらう。
 オキドウキョウのゴルジュを出た後は幕場探し。時間も18時前と遅く、次の滝が出てきたのでそれ以上進むのはやめて、明るいが増水が怖い河原に寝るか、暗くて快適な感じではないものの安全な森の中にするか考えたが、安全をとって森の中を今晩のねぐらとした。時間が遅くて薪を集められず、またもや焚火なし。最近はすっかり焚火と縁遠くなってしまった。焚火がないとすることもなく就寝も早し。

 12日、晴れ時々曇り。出発するとまず昨日見た滝。2条滝で深く美しい釜で、昨日の勢いでなんだか泳いでみたくなった。釜を泳いで滝を登ってと最初からお遊び(宮本のみ)。その先の井戸小屋沢の出合いにはよく整備された幕場があり、もう少し進めば出会えたのだが、縁がなくて残念(あとでガイド本を読むとちゃんとその存在が書かれていた)。
 その後は白い花崗岩の美しい滑、釜、小滝が連続するようになり、例によって宮本は有頂天に。さっぱり進まなくなる。いい谷だなあとしみじみ思える癒し系のところ。特に美しい大釜を持つ滝で滑り台をしたら、水の中に岩があっておしりを強く打ち、その後尻が痛くて苦しむことに。皆さん、不用意に水に飛び込んではいけません。
 やがて立派な一ノ滝(20m)。記念撮影後、右から巻く。一ノ滝の上でがらっと岩質が変わり、滑床帯も無くなってよくあるゴーロなどの渓相になる。二ノ滝(10m)を登って、次に三ノ滝(2段30m)。ここは本流の他にも2本の沢が滝で流入していて、壮観であった。三ノ滝はまず立った下段を右から登る。上段は斜滝で、右からか左からか迷ったが、乾いた岩が階段状に続いて見える左壁を登ることにした。水流を渡ってバンドを左にトラバースするが、この部分がぬめっていてよくない。適当なところから直上する。ここからは快適だったがマイナールートだったのか、ハーケンが先のバンドに1つしか見当たらず、打ち足したり、キャメロットで支点をとった。それにしてもキャメロットは便利な道具で、沢登りでも大活躍である。
 三ノ滝を登り終えた後、幕場を探しながら進む。すぐに笹藪の中に昔整備されたと思われる幕場を見つけるが、もう少し上まで進んでおきたい気持ちがあり、適地が全く見つからないまま結構上まで登ってしまい、二俣に着く(約1400m地点)。この上は益々谷が細くなり、幕場はまず望めない。しかし先の三ノ滝上に戻るには登り過ぎた感がある。皆をここまで来させてしまった責任からも何とか幕場を見つけねばならぬと辺りを探すのだが何もない。あそこまで下って他パーティが使っていたら終わりだなどと思いながら下方を眺めていると右岸側の笹藪の中に何となく平らっぽい感じのところが見える。調べに行ってみると深い笹藪だが以外に広く、笹を倒せば寝られそうだった。他に選択肢はなく、今夜のねぐらはここに決定。まるで熊さんの寝床だ。入口が滝の真上を通らなければならず、暗くなると出入りは不可能になるので、その前に食事を済ませる。笹は倒しても倒してもすぐに起き上がって、ツェルトを張っても形が整わずいやになってしまうが、横になってしまえばクッションが効いて寝心地抜群の寝床だった。
 さて今日のクライマックスは癒し系滑釜帯か、あるいは熊の寝床か?

 13日、朝6時頃に一人通過していったという(挨拶もなかったので坂口さんしか見ていない)。本日の天候は晴れ(但し夕刻雷雨)。出発して二俣の右に入る。とたんに細い沢になった。目立たぬ小滝をいくつか通過し、左岸よりすだれ状滝が落ちるすぐ先で奥の二俣。素直にガイドに従い、ここも右に入る。あたりは背の低い笹の斜面となり、すっかり源流の趣き。とても滑りやすい滑床が散発的に出てきて、注意して登る。この辺からお花畑が多くなり、多種の花々が私を楽しませてくれ、またもやさっぱり進まなくなる。先行する坂口さん、菅野さんをだいぶ待たせてしまった。最後、踏み跡を登り詰めると肩の小屋直下に出る。すぐに大量の登山者がひしめく谷川岳に着く。
 ここからは土合駅に降りて電車(上越線)で土樽に向かうか、茂倉新道を土樽に降りるかの選択肢があるが、上越線は非常に本数が少なく、茂倉新道を降りたほうが早く下山できると思われた。しかしこれは誤算であり、疲れた足はペースも落ちて、だんだんと電車に負けそうになってきた。そしてあと30分で下山というところで激しい雷雨に見舞われて登山道は泥水の濁流となり、更にペースダウンし、完全に電車に負けて18時過ぎに登山口に着き、車回収は19時過ぎとなった。雷雨の影響で、最後坂口さんとはぐれてしまい、無線交信により1時間後くらいに無事に合流、ああよかった。おとなしく土合駅に降りていればこんなことにはならず、濡れ損であった。稜線から一ノ倉沢を覗いて一ノ倉岳、茂倉岳を踏んだことぐらいが取り柄であった。
 ちなみに一ノ倉岳の避難小屋はほとんど犬小屋並の小ささで本当の緊急避難用。茂倉岳の避難小屋は大変立派なもので水場も近く、機会があれば是非泊まってみたいところだった。
 下山後はまず土樽の温泉に向かう。風呂が閉まる前に入らねば。その後、コンビニによって高速に入ってすぐの土樽P.A.にて打ち上げをして翌明け方までごろ寝し、坂戸駅にて解散した。

感想;万太郎谷は谷川岳周辺では湯檜曽川本谷(一昨年遡行)と並び人気の谷で規模も似ているが、瀞の泳ぎ、滑釜連続帯、滝場の連続と登攀、詰めのお花畑の多さなど、万太郎のほうが場面切り替えがはっきりしてメリハリがあったため印象に残る谷と感じた。(まあ、昨年の釜川のインパクトには及びませんが)

<コースタイム>
8月11日;吾策新道登山口出発14:15~関越トンネル換気塔16:10~オキドウキョウの瀞場上ビバーク地18:00
8月12日;出発7:00~一ノ滝下10:00~三ノ滝下12:10~二俣ビバーク地15:30
8月13日;出発7:30~肩の小屋直下稜線10:45~一ノ倉岳13:15~矢場ノ頭16:00~茂倉新道登山口18時頃~出発地帰着19時頃

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