槍ヶ岳北鎌尾根GT


田中

2020年9月19日(土)~22日(火)  係:吉村

参加者:安藤、上田、堀田、田中

当初、南アルプス光岳~聖岳を計画していたが、登山口へのアクセス道路が通行止めのため中止とした。 代替え案を考案中に北鎌尾根からの槍への要望があり北鎌尾根を実行することとした。

上高地、皆さんお久しぶり~

9/19 朝7:15に新宿バスタ発の上高地行に乗り込む。10日ほど前までは雨予報で半分諦めていたが、先週末には曇りと出た。夢の北鎌に行けると勇んで早朝に出発したが連休ということもあり大渋滞。山梨に着くまでに2時間以上遅れ、正午に到着予定が結局本隊とほぼ同じ時刻に上高地到着。夏合宿から一ヶ月で仲間に再会出来、嬉しく思う。共同装備を分け、2時間弱でテン場着。井上靖が氷壁を書いた宿とのこと。また読んでみよう。連休ということもありテントでいっぱい。やや密度の低い川沿いでテントを張る。初日なので吉村さんの用意してくれたカツ丼にビールで乾杯。山で食べると本当に美味しい。

徳澤到着
威嚇してくるニホンザル、けっこう怖い

9/20 生うどんを平らげ1時間半で出発。今日は時間に余裕あり、ゆっくり歩いているとニホンザルが朝ごはんを食べていた。写真を撮ろうとすると威嚇してくる。横尾や槍沢ロッジで適宜ビール・酎ハイを仕入れる。ロッジから少し登った所だけは山々の間から槍が見える。この周辺で正月に遭難した会員の遺体が見つかったと早春の捜索の苦労話を聞きながらババ平まで登る。昼前なのに結構テントが残っていたが、どうもここをベースキャンプにして2時発・軽装でスピード重視の北鎌アタックもいるとのことで、実際翌日にそんなパーティーに出会った。大曲から急な坂道を水俣乗越まで一時間強で登りきる。

本日の核心、水俣乗越の下り
水俣乗越よりババ平方面を振り返る

左手に東鎌を眺めながら、登山客が入らないようにしているロープをくぐる。秋らしくカメノキの実が真っ赤に色づいていた。天上沢のカールが広がり、北鎌の全容が目に入る。否が応でも期待は膨らむ。明日は晴天になりそうだ。酷いガレガレを下るが思ったよりパーティーが多く数珠繋ぎ。こういう砂利っぽい下りはホントに苦手で何度もバランスを崩しながら落石に当たらないよう固まって注意深く歩を進める。早朝組は暗闇でこんなところを降りれるのだろうか、、(翌日聞いてみるとここが核心だったとか。)30分強で急傾斜を下った後は広い涸河原を歩む。

テン場直前で槍がチラリ、敢えてここでテントを張るパーティも
本日のテン場到着、既に10パーティは超えている感じ

思い思いにテンバを見つけているらしく、だんだん人もまばらになってきたが、北鎌沢出合周辺では既に焚火を始めているグループもあった。出合い直ぐ右岸に小さな平らなエリアがあったので早速陣地を広げるべく徹底した土木工事を始めた。涸れ沢なので15分ほど登ったところから湧き出した伏流水を取り、酒を冷やす。周辺には女性の単独行もいたようだし、長老に連れてきてもらっている若人のグループもいた。戻ってからは30分弱で薪を大量に集める。少しテントから離れた大岩の脇で焚火を始め、ご飯を炊く。シマ腸のホルモンの野菜炒めは相変わらず美味しい。夕日で一瞬、空が桃色に染まる。相変わらずダケカンバはよく燃える。随分と流木が片付いたと思う。こんな時間になってもパーティーは断続的に降りてきてテントを張りだす。他人事ながら明日早いのに大丈夫かなと心配になる。雲の合間の星を眺めながら8時前には明日に向けてライトを消す。

だいぶ手際が良くなりました
北鎌沢の登り

9/21 興奮していたせいかよく寝られず気付くと2時過ぎで大急ぎで朝食を終える。1時間半ぴったりで撤収し出発。昨晩水を取りに行ったルートを黙々と登る。後ろを振り返ると蜘蛛の糸よろしくヘッドランプの縦列が続くので何となくプレッシャーも感じる。再度水を補給しながら暗闇を1時間余り歩くと徐々に薄明りに包まれ大天井側の貧乏沢に朝日が射した。脆い岩を注意し草を掴みながら急坂を登らなくてはならないが朝日の美しさが力をくれる。2時間半ほどかけて北鎌のコルまで上り詰めた。狭い鞍部では2人組のパーティーがビバーク明けでコーヒーを飲んでいた。体力温存も良いが折角前日にここまで進んだのにもったいない、、

北鎌のコルから貧乏沢を望む
独標手前、吉村「GO、なんでお前はヘルメットを脱ぐ?」、GT「…」

今日の登りの核心はここまでで、後は頂上まで尾根歩きが始まる。ルートファインディングが困難ということで本日は経験者でリーダーの吉村さんがずっとリードとなった。ロープが必要な場面は無かったが雨やガスで見晴らしが悪かったりすると足元も悪くなり相当危険を伴ったであろう。コルを越えると渋滞もそれ程ではなく休憩場所の取り方次第で抜きつ抜かれつといった感じ。ただハーネスも付けていない若者たちもいて何かあったらどうするのだろうと少し心配になる。天気も良く眺望は非常に素晴らしい。天狗の腰掛を越えたところで独標の全貌が見える。横から見たのとは違ってかなりの山塊である。左肩に穂高も姿を覗かせた。何だか中腹で10人弱が停滞している。渋滞が無ければよいが。

この尾根全体を通して思ったよりアップダウンがあり、直登は難しいか、、というところは安全を取って右側に巻いたが却ってガレ場で危なかったのではと思われた箇所も幾つかあった。正解は分からないが自分がリードだったら何処を攻めるべきかと色々検討しながら歩く。奇岩を幾つか乗り越えると独標の右肩に小槍が見えてきた。この角度から見るのは初めてということもあり随分と立派に見える。先ほどの渋滞が見えたところは中腹で足場も狭く少し仰け反って横ばいに進まないといけないルートだった。確かに重い荷物を背負っているとキツい、、乾いていてよかった。

槍を初めて北方面から、吉村「GO、なんでヘルメットを脱ぐ?」、GT「…」
吉村「GO、なぜヘルメットを…」、GT「ん…」

岩肌には多くのアイゼン跡があり、結構冬季に登っていることが伺われた。トポを見ると尾根に着くまで雪中渡渉を裸足で繰り返さないといけないようだ。最低4日で下手すると一週間以上。吉村さんも流石に行ったことはないとのこと。そんなこんなで面白いところを幾つか抜けて、とうとう独標山頂へ。何と狭い大岩の横にツエルトを張っているパーティーを発見。夜は風が強そうだが、、小槍、孫槍、曾孫槍と綺麗に見え、随分と黒ずんでいて表と裏で岩質も違うように見える。東・西鎌と違って頂上まで尾根が繋がっている姿が非常に美しい。ゆっくりしたかったが昼過ぎには頂上に着きたかったので先を急ぐ。

独標の核心を越える安藤さん、御年72歳
独標の核心を越えたが、まだまだ難所は続く

ここまでが核心と聞いていたが頂上までも意外と厳しいポイントがあった。ゴジラの背を直登と右巻きを繰り返し北鎌平に到着する。ここからが最後の急登だ。チムニーが幾つかあり、それなりのクライミングが楽しめる。じゃんけんで勝ったので一番乗りをさせてもらった。

北鎌平付近
山頂まであと少し
山頂直下のチムニー

山頂はやはり、登山客でてんこ盛り。写真だけ撮って早々に鉄梯子を降りる。昼を過ぎて段々と雲が上がってくるし流石に9時間歩き詰めで集中力が途切れる。久々の槍沢カールをダラダラと下る。もう5~6回目だろうか。殺生ヒュッテのテン場横には播隆上人が1月以上籠っていたという岩屋があった。そういえば上の廊下の帰りに泊まった折立・有峰口の公園に像があったっけ。ヘロヘロで大曲まで3時間もかかって下る。そのわきの沢を猿の大群100匹ほどが登っていく。夜は寒くても森林限界を超えると敵が少ないのか?親子連れもたくさんいた。ババ平を越え槍沢ロッジに着いた頃は既に真っ暗になっていた。ビールとウヰスキーを買い込み暗闇の中テン場へ、、行動時間15時間は流石に初体験。痛い足をさすりながら非常食を平らげる。長い長い一日がやっと終わる。

サルの集団移動

9/22  9時過ぎのバスに乗るべく早朝に起き朝食は抜き。朝日に燃える穂高や焼岳を眺めながら下る。広島組はアカンダナに向け9時半のバスに乗り込む。私は新島々行が昼だったのでザックを置いてフラフラと田代池から大正池へ。観光客は多かったが綺麗な湿地帯であった。風呂はコロナで閉鎖されていたため体は相当臭いはず。このため帝国ホテルでのコーヒーは諦め、河童橋の麓の山荘で唐揚げカレーを食べたが、たった3日でもシャバの飯はえらく美味しく感じられた。4連休の最終日だったのでバスで新宿まで出ていたら結構遅くなっていたかもしれない。今回は天候にも恵まれ非常に貴重な機会を頂いた。引き続き東方面の山行には家庭の事情を勘案して積極的に参加したい。

朝日に映える焼岳
風呂に入れないので帝国ホテルは断念

(文責)田中

【コースタイム】曇り時々晴 9/19大町駅5:10→ アカンダナP14:00→ 上高地バスタ14:30(田中合流)→ 徳澤園16:45 泊 9/20 5:00起床6:30発→ 横尾8:00→ 一ノ俣8:40→ 槍沢ロッジ9:30→ ババ平10:10→ 大曲出合10:40→ 水俣乗越12:00→ 北鎌沢出合14:00 泊 9/21 2:30起床4:00発→ 北鎌ノコル6:40→ 天狗の腰掛7:30→ 独標9:20→ 北鎌平12:10→ 槍ヶ岳頂上13:30→ 頂上小屋14:00→ 大曲出合16:40→ 槍沢ロッジ18:00→ テン場18:50 9/22 4:30起床5:00発→ 横尾6:00→ 徳澤園7:00→ 上高地9:00 解散

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