春合宿剱岳


吉村

月日:5月1日(日)夜~3日(火・祝) (係)吉村
参加者:三谷、松林、川本
<行動記録>
当初の計画では出発は4月29日であったが、三谷君の勤務の都合で2日ずれ5月1日となった。
高速道路は少し渋滞もあったが、夕方4時には馬場島に着いた。山岳天気予報では3日の後半から4日にかけて低気圧を伴った気圧の谷が通過し、暴風雨を告げている。剱岳北方稜線で登山活動は無理と判断した。赤谷尾根~剱岳を、2日・3日で早月尾根による剱岳往復することに決めた。山岳警備隊の駐在所に行き、登山届の行動変更を告げる。
馬場島のキャンプ場は、がら空きで好きな所に無料(この時期だけ?)で使えるのがうれしい。共同装備のパッキング分けを行い、一番乾いていて水場・トイレに程近い所にテントを張り、夕食の後そそくさと寝た。
2日、朝5時前に歩き出す。早月尾根はいきなり急坂が始まる。その急坂の喘ぎも道端にはカタクリの大群落が、花いっぱいに咲かせてくれて癒してくれる。中国地方のカタクリより赤紫色が濃く、花も葉も大きくどっしりしている。松尾平からはイワカガミが薄紅色の花を咲かせ、ショウジョウバカマも白花をつけている。
1500m位からようやく残雪が現れる。雪面、シュルンド、笹薮、登山道と変化するルートを登っていく。ヘリがやけに尾根近くを飛んでいる。もう一台上空に別のへりが、遭難事件?
天気は晴れて日差しが暑い。休憩の度に水を飲むので用意した1?では足りそうにないので、ボトルに雪を入れて、ザックの中で溶かしながら水にしていく。先頭は新人の川本君なのだが、結構速いペースで歩くので、私はしんどい。遅れ気味になる。60歳を過ぎて25歳の若者と一緒に山に行くのはもう無理なのかと自問してしまう。
喘ぎながら登っていると、ジップロックに入った計画書を川本君が拾う。関東地方の山岳会の女性2人のもので、剱岳~室堂へ抜ける行程であった。立派な実力と見受けた。これからの行動中に出会うかもしれないので川本君に持たせた。
10時半ころ早月小屋に着いた。小屋前でビールを飲んで休憩している単独の男性に話しかけると、今日頂上往復をしてきたとのことで、ルートの様子を聞かせてもらう。それにしても早月小屋から6時間位で往復するとはなかなかの力量と思う。
2400mでアイゼンを装着し雪氷の世界へと入っていく。ここからは先頭を松林君に代わりルート取りをしてもらう。元気印の川本君の歩みがゆっくりとなり、「何しとるん?」
上部からロープを使いながら下降してくる女性2人のパーティーと出会う。下で確保している女性に「計画書を落としませんでした?」と声をかけると、それは私のものです、困っていました、と感謝された。室堂に抜けていては荒天に捕まりそうなので、頂上往復に変えて、今下山中とか。お互いの健闘の挨拶を交わして別れ、2600mの台地状に到着する。
幕営装備をデポし軽荷にて、速攻で頂上往復しここでビバークする予定である。
下降してくるパーティーから、今朝2800m地点でヘリで救助された遭難事件があったことを聞かされた。また別のパーティーが関西弁だったので、小屋前にあった泉州山岳会のテントより、会報交流している泉州山岳会ですかと尋ねると、会報発送している担当の方だった。
我々は荷が軽くなったので、スピードが上がるはずなのに、のろい。アイゼンを蹴り込め、足を置くだけじゃなく体重を掛けろ、と教育的指導を川本君が受けながら。シシ頭の岩峰は左の池谷側をトラバースし、カニノハサミは凍ったルンゼを直上したら核心部は終わり頂上稜線に出る。指導標のポールを過ぎるとやがて頂上だ。
源次郎尾根を登ってきた6人のパーティーが記念撮影をしている。頂上の祠は一部屋根が出ているだけで、雪の中だ。6人パーティーと写真を撮りあい、周囲の山並みを展望したら直ぐに下山に掛かる。
先程のルンゼは60mロープ1本で懸垂下降する。シシ頭のトラバースでは川本君が半歩足を滑らす。ここで落ちたら池谷にはまって帰ってこれんぞ。気を抜くな!足を蹴り込め!
13時間行動の18:00ころ一人だけよろける様に2600m台地に着き、「もうだめです」と倒れこむ。
今から雪面を整地し、雪ブロック壁を作りテントを張り、雪を溶かして水作りじゃ。倒れとる暇はない。疲れ果てた新人には可愛そうだが、やってもらわなければテント生活は成り立たないのだ。そうこうしている間に赤い夕日が富山湾に沈んでいく。
テントの中で水を作っていると、手が止まっている。おい寝るな、手を動かせ。とうとう食当の川本君は横になってしまい、夕食は先輩が作ることに。食欲もないけど、カレー飯を少し食べて、スープを流し込んでいた。朝からの13時間行動に緊張連続の雪氷登攀で、疲労困憊なのだろうが、危険回避のためには止むを得ない。明日は天気が大荒れになるのだから。
これがアルパインクライミングなのだ。広島山岳会の合宿なのだ。
3日、安全地帯の早月小屋まであと2時間の行程なので、ゆっくり目の起床とした。2500mの急雪壁で懸垂下降を1回入れる。バックステップの下降で、また川本君が2mずり落ちる。しっかりせいよ。
早月小屋前で休憩していると小屋の方が、雪を大鍋に入れている。GW中は営業をしているようだ。
長い下降を終え11時ころ馬場島に着き、駐在所に下山報告に行ったが不在であった。
上市のアルプスの湯で汗を流し、北陸道経由で広島へ。途中暴風警報の出る中、強風で車を煽られながら、午後10時ころ広島に帰った。
天候の件、メンバーの力量の件を考えてみて、赤谷尾根~北方稜線~剱岳~早月尾根を剱岳往復にして正しかったと思う。
<コースタイム>
5/2 馬場島5:00⇒松尾平5:45⇒早月小屋10:40⇒剱岳15:40⇒泊地18:00
5/3 泊地5:45⇒早月小屋6:45⇒松尾平10:10⇒馬場島11:00