明神岳東稜~涸沢岳西尾根 5月1日~4日


三谷 和臣

<参加者>中島
<行動記録>
5月1日
 山口から参加の中島さんの車で、途中児島さん、私を乗せて、13:00頃広島を発つ。高速道路はGW中とは言え、平日なので空いて順調である。経費削減のため、中津川で高速道を降りる。しかし、それが裏目に出て、予想外の大渋滞に見舞われる。23時頃沢渡着。すぐ駐車場にテントを張り、仮眠をとる。
5月2日 天気快晴
 4:30起床、素早くパッキングをすませ、始発の上高地行きバスに乗り込む。
 バスターミナルで計画書を登山届け用ポストに落とし、登山開始。明神岳主稜の岩壁は黒々として全く雪が付いていない。河童橋で児島さんと別れ、我々は足早に明神に向かう。梓川に沿って歩くと、辛うじて東稜の稜線上には雪が付いているようだ。
 尾根末端より取り付く予定にしていたが、雪が少ない故に相当な藪こぎが予想されるため、通常ルートを取ることにした。視界の開けた宮川のコルに着く。コルからひょうたん池への雪の斜面は、デブリがあるがそれほど大きな物ではない。GW前半に付けたと思われるトレースに沿って、ひょうたん池に到着。
 大休止していると、2人パーティが登ってくる。関西から訪れたそうだ。彼らもひょうたん池に止まる予定にしていたが、時間が余りにも早いのでラクダのコルまで足を延ばすそうだ。彼らとは頂上までほぼ同時の行動となる。
 ひょうたん池からの雪稜は、既に雪は腐ってソフトクリーム状となっている。足を取られて思うように進むことができない。雪稜をしばらく登ると、第一階段と呼ばれる草付きの岩壁が現れる。FIXロープが張ってあるので、荷重をかけないようにそれを使ってノーロープで越える。夏の時の微妙なトラバースは雪に埋まって問題なかった。草付きは、アイゼンとピッケルを効果的に使って登ることができた。
 バットレス手前のラクダのコルと呼ばれる小ピーク前には、テントを数張り設営可能である。小ピークでは明神岳バットレスの全容を把握できる。天気も良く、そこで長めの一本をとる。関西のパーティは小ピーク手前の幕営跡にテントを張っている。我々は、ナイフリッジを渡りバットレス手前の平坦な雪面を切り出してテントを張る。
 16時の無線交信では、児島さんと交信することができた。聞き取りづらいが、なぜかぜいぜい言っている。後から聞くと、交信時間が近づいたため、安全地帯まで駆け登ったそうだ。
5月3日 天気 晴れ
 4:00起床、5:50出発。6:00登攀開始。
 1P 記録によると、通常ここでアンザイレンするらしいが、草付きの階段状の岩場で、足場は凍って安定しているので、ノーロープで行く。
 2P 階段を上りきると一枚岩が現れる。雪は全く付いていない。アンザイレンして凹角を登る。三谷リード、せいぜいⅢ級程度だと思うが、重荷でのアイゼンワークで、非常にぎこちない。中島さんが、「そこで落ちるとグランドフォールですよ」と脅しをかけられる。スラブから凹角のクラック沿いに、最後は浅いバンドを右に1mトラバースしてフェースを直上する。アイゼンをガリガリさせて落ちそうになりながらも、支点やFIXロープを使って這い上がる。
 3P 以後つるべで登る。ルンゼを右上気味に登り、大岩目指して直上する。雪壁で腐っていると悪そう。ほぼ50m一杯に伸ばし、ハーケンのある露岩で切る。
 4P 同じような雪壁で既に雪が緩んできている。トレースは左上しているが、右のテラスを行けそうなので、浮き石だらけのテラスで一旦ピッチを切る。
 5P 右のルンゼをのぞくとトレースらしきものが見えたので、中島さんを誘いにかける。どうもミスルートだったらしく、やけに時間がかかっている。いざフォローすると、腐った雪と浮き石だらけで、クラック尾根の悪夢を思い出す。落石すれば、後続に直撃する。テラスから右のルンゼを直上し、途中から脆いリッジに出る。中島さんは、「ロープを外さなくて良かった」としみじみ言う。
 8:20登攀終了。
 頂上に出ると、丁度南西稜から2人組の男女のパーティが現れ、すぐに東稜を懸垂で下降していった。続いて関西のパーティが現れる。
 明神岳岳沢側をクライムダウンし、前穂への稜線に向けてトラバースする。コルまでは、クライムダウンの連続で、時間がかかる。随所に懸垂支点があるが、我々はコルへ降り立つ1Pだけロープを使う(夏は使わなかった)。ハーネスを付けるのは面倒なので、肩がらみを試みる。慣れないことをすると、首や股間が痛い上、非常に怖い。
 前穂手前の岩峰は、直上するか、トラバースするか迷ったので、ザックをおろして偵察する。
 前穂高岳から吊り尾根への下降点は、指導標の所から数十m岳沢側のガレ場を下って、吊り尾根の稜線へ雪渓をトラバースする。吊り尾根は、雪のトラバースが随所にあるが、腐っていて滑落すると止まりそうにないので、結構神経を使う。
 奥穂高山頂の祠の脇を切り出してテントを張る。数張りは設営可能である。360°の大展望でジャンダルムから西穂高の稜線、槍ヶ岳への稜線をのぞむことができる。
5月4日 天気 晴れ
 4:00起床、6時出発。
 白出のコルに降り立つ梯子場は、斜度70°位の雪壁で、バックステップで下るが、一般ルートにしては酷である。滑落者が出ない方が不思議である。
 穂高山荘前は我々の世界とは少し違うので、すぐに涸沢岳の登りにかかる。涸沢岳西尾根の下降点は明瞭で、標識のある南峰を10m位歩いた北峰、飛騨側に延びるはっきりとりた尾根を下る。雪は既になく、平凡なガレ場を下る。蒲田富士へは、急な雪のルンゼを下るが、まだクラストしているので特に問題なかった。
 蒲田富士からは急な岩稜になっており、ルンゼに沿ってFIXロープが何本も張ってある。 岩稜を過ぎるとやがてハイマツからうっそうとした樹林帯に入っていき、倒木や地を這う木の根に悩まされる。
 中島さんが、「あっ、人が歩いてる」と叫ぶ。やっと新穂高牧場に続く遊歩道に出たようだ。ほっと一息くつろいでいると、見覚えのある髭のおじさんがこちらに向かって手を振っている。児島さんが心配して迎えに来てくれたのだった。
 観光客で賑わう新穂高温泉に到着した。二人は中崎荘の露天風呂で、余韻に浸りながら疲れと垢を十分に落とす。帰りも見事に渋滞にはまり、12時間かかって広島に到着した。
<コースタイム>
5/2 沢渡バス停5:30-6:05上高地6:25-7:10明神養魚場7:20-8:15宮川コル下1

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