小豆島拇岳クライミング


松林

11月21日(土)~23日(月) 係:松林
参加者:平本、吉村(太)
<行動記録>
11/21(土)
 始発便で土庄港に着き、土渕海峡を渡って小豆島に初上陸。南周りの国道を進んで内海の平野部に入ると、左手に寒霞渓が見え始め、正面左に岩峰が見えてくる。それが拇岳だ。トンネルを通って橘の集落に近付くと、公営アパートの上に巨大な岩壁が現れる。異様な光景。
 登山口となる神社の階段へ続く車道は民家の前で行き止まりとなっており、住民に案内してもらった、堰堤側から神社に車で入れる道を進み、空きスペースに車を停める。奈良ナンバー、多摩ナンバーの先客がいる模様。
 装備を準備し、石垣の間から延びるアプローチ道に入る。20分ほど歩くと岩壁にぶつかり、同時に東京からのパーティーと出くわす。ここはルンゼの下山路らしい。別の先行パーティーがダイレクトルートを登っている最中で、東京のパーティーは2人×2パーティーで赤いクラック、ダイレクトをそれぞれ登るという。我々はそれを待って赤いクラックを登ることにする。
 吉村(太)くんリードで登攀開始。1ピッチ目は、ルート名にもなっている赤茶けたクラックから始まる。向かう終了点には先行パーティーがまだおり、クラックを抜けたところで1度ピッチを切ってもらう。クラックと言っても幅が広く、半身は外。岩はところどころ脆い。瀬戸内海なので花崗岩。と思っていたら全然感触が違い、後で調べると安山岩だった。終了点はフリー化の波を受けてか良く整備されており、ハンガーボルト、ケミカルボルトにラッペルリングが掛かっていて心強い。2ピッチ目は“区切った分”だけだったので短い。リッジを右巻き、左巻きと2通り取れるが、左巻きを選んだ(右巻きが正解らしい)。3ピッチ目はアブミで棚に上がり、左上してブッシュの間をトラバース。距離は短い。終了点はリングボルトなどだった。4ピッチ目は凹角を直上(やや右上?)する。出だしで少しルートミスしてフォールするが、出直して登る。
 次の終了点からは右上と左上、双方のラインの支点があり、右上のラインはエスケープ用だろうと思い、左上のラインを行かせる。トラバースしてテラスに登り、そこから傾斜の強いフェースを登って行く。最初は順調だったが5mも登るとA0の連続になり、10mほど登ったところではアブミを出して手こずっている。右上の比較的新しいリングボルトを使っていたが、それがラインから離れているために戻りにくく、次の支点も一つ下の支点から遠く、移りにくくなっている。一旦テラスに降りるという選択肢もあったが、「あともう少しで終了点。」と言うのでそのまま進ませてピッチを切る。後続も同じ箇所で手こずった。ここの終了点は貧弱だった。
 6ピッチ目はテラス(バンド)を左へトラバースするが、先の支点が見つからず、戻って来る。ここで係と交代。ビレイ点上、横並びの錆びたリングボルト2つにアブミを掛けると次のボルト(RCCだったか?)に手が届き、スラブ帯に乗る。左上していけば先へ行ける可能性はあるが、支点が視界に入ってこない。それよりも「早くエスケープ」の頭になっていたので、右手、樹林帯の手前に見えた強固な終了点へ向かう方法を探る。トラバース出来れば着くが、ホールド、支点が取れそうになかったので、数メートル登ってからポケットにカムを挟み、下り気味に終了点へ到達する。ロープを引き上げるが、絡まっているようでなかなか上がって来ない。2人を迎えると16時半。樹林帯はロープ無しでも歩いて進めそうだが、念のため再度ロープを延ばして進み、頂上から下りてくるFIXロープが見えたところで安堵する。しかし「解除」のコールを忘れていたり、声が聞こえ難かったりで意志疎通が出来ず、無駄に時間を要してしまった。鞍部に下りて装備をまとめ、ヘッドライトを点けて右のルンゼを下る。滑り易いところもあったが、FIXロープを使いながら壁下まで下り、アプローチ道を下って登山口に着く。内海へ買い出しに出て神社に戻り、駐車場のスペースで泊まった。

11/22(日)
 今日は我々が先客だ、と日の出直後に壁に向かうが、ダイレクトルートのチムニーの前に近付くと先客のパーティーがいる。だが我々が準備しているとちょうど良いころになり、あまり待たずに登り始めることが出来た。係がリード。逆層の岩壁にポッカリと溝が空いており、チムニー特有の登り方を強いられる。残置支点だけでも数は充分だったが、いくらか不安なところでカムを効かせて登った。2ピッチ目は、一部A0しながらクラック沿いを右上する。出だしでロープがジャムしてしまい、解いて出たつもりだったが、またジャムして戻り、出発が遅れる。後続の兵庫パーティー(2人×3パーティー)が、「これでは日が暮れるので、2パーティーだけ登って1パーティーは中止する」と言っている。非常に申し訳ない。このピッチは終了点のテラスに乗る前の立木スリングを掴むところが厳しかった。終了点が2セットあったので、ここで待機して後続の2パーティーに先に登ってもらう。待っていると、吉村(太)くんが「腕が疲れているので降りたい」と言い、どうするべきかと迷ったが、「50mで下まで届く」と言うのでラッペル1本で降りてもらう。係のアプローチシューズも一緒に持って降りてしまっていたため、頂上まで登って来てもらうことになった。
 兵庫の後発パーティーが3ピッチ目の途中まで進み、我々も登攀を再開する。右上の被り岩とのコーナー沿いをA0で休み休み登って行く。数手おき(もしくは核心部)にハンガーボルトや新しめのリングボルトがあり、有り難い。終了点のテラスでは先行パーティーがビレイしていたが、“2セット”あったので隣に入る。4ピッチ目はテラスから左に出て、凹角沿いを先ほどと同じようにA0で登る。やたらと支点が多く(それらを使わなければ登れないのだが)ヌンチャクが足りなくなるので、良い支点にヌンチャクを掛けたら一つ下を抜く。という手法を交えながら次のテラスに辿り着いた。5ピッチ目くらいは平本さんに代わろうか、とも考えたが、腕を使ってきたばかりで疲れているかと思い、自分でリードする。ビレイのスリングを使って上の棚に乗ったら左の稜線へ移り、稜線通しで頂上へ抜ける。今までは支点に守られ続けていたのに稜線に出たら急に支点が無くなり、これを受け入れるのに勇気が要った。頂上で吉村(太)くんと合流。少しばかり景色を眺め、片付けをして吉村(太)くんが登ってきた左(西)ルートで下山する。
 翌日の天気があまり良くない予報だったので、この日のうちに寒霞渓へ行き、内海で買い出しを済ませ、吉田のキャンプ場で泊まった。

11/24(月)
 クライミングをするモチベーションが無いので、「吉田の岩場」を偵察した後は、大阪城の石垣石切丁場跡、田浦の映画村、苗羽の醤油屋、などを観光して12:00の便で本州へ戻った。

 後日、初日の「赤いクラックルート」について、吉村(光)さんに「A0数ヶ所程度のはずなので、派生ルートに入っていた可能性がある」と言われ、良く調べてみた。すると、他会の山行記録に「赤いクラックは3Pから右上に行くのがそもそものルートだったようだが、左上するのが一般的になっているようだ。」という表現があった。ピッチ数は異なるが、その記録で言うところの「左上ルート」の写真を見て、同じルートに入っていたことが分かった。「左上ルート」が本当に“一般的になっている”のかは分からないが、「左上」は「右上」よりも難しく、派生ルートである可能性が高い。ここでの「右上」がオリジナルのルートで、スムーズに進んでいればトップアウトできていた。と予測できるので、完登させられなかった吉村(太)くんには申し訳なさが残った。
 今回の2日間の登攀をまとめると、初日は、“行ける”と思っていたルートで難しい派生ルートに入り、開始時刻が遅かったことも影響して時間切れ。2日目は、3,4ピッチ目は人工の区間が長い。と分かっていたが、時間を多く費やし、他のパーティーとの実力差も感じた。このことからアルパインクライミングでは、ルートファインディング能力、システムの確実性やスピード、手足やギアをどう使って登るのかを判断するスピードが極めて重要である。ということを再認識させられた。また、今回のような傾斜の強い壁でA0の連続だと、腕の筋持久力も必要になる。そこで、腕が疲れてレストを挟んだりもするA0(ウサギ)を選ぶのか、動作時間は多いが疲れは少なく済むA1(カメ)を選ぶのか。一手一手異なる状況でこういった判断スピードが試されている。限られたトレーニングの回数でこういった能力を向上させるには、知っていることの繰り返しばかりではダメだということが分かった。

<行程>
11/20(金)
23:05 小谷 → 23:15 河内IC →
11/21(土)
0:10 玉島IC → 0:50 新岡山港(仮眠) → 6:20 出港 → 7:30 土庄港 → 8:15橘 → 8:52 拇岳登山口 → 9:14 赤いクラックルート取付点 → 10:25 登攀開始 → 11:06 1P目終了点 → 11:41 2P目終了点 → 12:37 3P目終了点 → 13:27 4P目終了点 → 15:27 5P目終了点 → 16:24 頂上直下終了点 → 17:05 裏側鞍部より下山開始 → 17:49拇岳登山口 → 内海 → 橘・荒神宮(泊)
11/22(日)
6:55 拇岳登山口 → 7:12 ダイレクトルート取付点 → 7:41 登攀開始 → 8:29 1P目終了点 → 9:33 2P目終了点、待機 → 10:46 3P目登攀開始 → 11:59 3P目終了点 → 13:24 4P目終了点 → 14:02 拇岳頂上 14:25 → 15:05 拇岳登山口 → 寒霞渓 → 内海 → 吉田キャンプ場(泊)
11/23(月)
吉田 → 田浦 → 苗羽 → 12:00 土庄港出港 → 13:10 新岡山港 → 15:10 小谷