奥秩父・笛吹川東沢の沢歩き(金山沢・釜の沢)個人山行


宮本 博夫

日程:2007年10月20日~21日
参加者:菅野、宮本
←写真:金山沢15m滑滝

今年最後の沢登りに関東雨男組(宮本・菅野)定番コースの笛吹川東沢に行ってきた。前回9月にやっと埼玉側に進出したのだが、紅葉見物も兼ねて今回また山梨側笛吹川に逆戻り。

目的の金山沢は東沢の最奥にあり、東沢本流沿いに河原を歩いたり、大ゴルジュ帯を大巻きしたり、途中の支流より流れ落ちる美しい滑滝や大スラブ壁を眺めながら出合いまで4時間くらいかかる。今日は遅めの出発に加えて紅葉見物、撮影もしながら歩いたので、金山沢に入ったころには夕刻となり、そこで泊る。前日の気温が元々低めの上に天気がよかったためか、強い放射冷却が起こったようで、翌朝は氷点下の冷え込みとなり、ツェルトの露やコッヘルの水気が凍った。装備を片付けるにも手がかじかんで仕方ない。長年沢登りをやっていてこんなに冷え込んだのは初めてだった。11月にもっと高度の高い所で寝たこともあるが、凍るなんて初めての経験で驚かされた。(今日の幕場は標高1500m弱、信じられません!)

翌朝出発するとすぐに滑滝が現れる。直後に金山沢のハイライトとされる長い滑滝(高さ15m、長さはかなりあり)があり、見事。特に色が白、というよりはクリーム色なのが特徴。この岩肌に水の青が重なると何とも不思議な色合いを見せてくれる。この滑床のクリーム色は大分祖母山の川上渓谷(九州の奥秩父と言われている)の滑と同じである。この後も緩傾斜の滑床、滑滝が連続し、滑が好きな私は久々に有頂天になってしまった。写真も撮りまくったのでさっぱり進まない。やがて大きな滝か?と思うと巨大な堰堤が現れ、そこで菅野さんがお待ちかね。この先も堰堤が続いて、先の方に一応の目的地にしていた二俣らしき地形が見えるが、堰堤だけ越していっても仕方ないのでここで打ち切って引き返す。戻って今度は釜の沢に立ち寄る。ここは何度訪れても飽きず、渓谷美を堪能する。適当なところで引き返し、さらに東沢本流を引き返して下山した。

今回の山行内容は沢登りというより美しい渓谷の探勝、といった程度で遡行記録というほどでもないので、代わりに笛吹川東沢についてあらためて紹介しよう。
笛吹川は西沢と東沢に別れている。東沢はありふれた名前だが、笛吹川とは響きのいい名前だと思う。西沢のほうはこの辺りでは超有名な観光渓谷。遊歩道が付いているが結構発達した渓谷で、奥のほうに「七つ釜五段の滝」という、名前の通りの滑滝と釜の連瀑帯があり、たいへん見事な渓谷美を見せてくれる。
東沢は部分的に昔の登山道が残ってはいるが、れっきとした沢登りコース。東沢流域はこの辺りの他の山域にはなかなか見られない圧倒的なスラブ帯が特徴で、遡行価値の高い多くの支流を有する。中国地方から遠路遥々遠征していく中級山岳の沢登りでは、紀伊半島(大峰・台高山地等)の沢は非常に遡行価値が高いことは行ったことがある人はお分かりだと思う。奥秩父も広大な山地に数え切れないほどの沢登りコースがあるが、渓谷のダイナミックさ(猛烈なゴルジュ帯、大瀑布、それ故の遡行の困難さ…)は紀伊半島の谷のほうが断然格上で奥秩父の名立たる秀渓達も及ばないと私は思うのだが、東沢流域については大スラブ帯とそこを流れる滑滝群が一見の価値があり、推奨できる。
主だった沢コースを紹介する。

①東の滑沢;出合いに広大なスラブ帯を流れる300mの大滑滝。これを登るのが遡行内容のほとんど。スケールが大きくて気持ちよい。山岳会の人には最も推奨できるコース。(03年10月遡行)
②西の滑沢;出合いに30mの美しい滑滝。周囲のスラブも発達している。(05年10月遡行)
③釜の沢;出合いの魚留滝から滑滝と釜の連続、千畳の滑を経てまた滑滝と釜の連続。更にクライマックスは両岸から滑滝、両門の滝。釜の沢は私を沢登りの虜にした超絶美渓。(93年以降、今回含めて4回遡行)
④金山沢;真っ白な、というよりクリーム色がかった滑と滑滝の連続が大変美しい。今回遡行。
⑤乙女の沢;出合いに傾斜の強い50mのスラブ滝(乙女の滝)、その後も大きな滑滝が連続。アイスクライミングでよく登られているが、夏期は登攀要素強く、あまり登られていない様子。(未遡行)
①~⑤は広大なスラブ、滑滝と滑床帯が発達して、スケールの大きい特徴のある景観。
⑥鶏冠谷;数多くの滝、滑滝を有する秀渓だがスケールは下がる。アプローチがよく、手頃なので人気あり。右俣、左俣があり、更にスラブの支流あり。(06年9月右俣、07年6月左俣遡行)
⑦ヌク沢;下流は堰堤群にがっかりさせられるが、上部に三段260mの階段状大滝あり。(05年5月遡行)
⑧ホラの貝ゴルジュ;東沢本流下流域の猛烈に発達したゴルジュ。泳ぎ+ゴルジュ突破のエキスパート向け。通常は谷底よりかなり上部の巻き道を通って通過する。(未遡行)
⑨番外、鶏冠尾根;東の滑沢や鶏冠谷遡行後に下山に使う、やせた岩尾根。途中の鶏冠山は東沢各支流群が見渡せて、素晴らしい眺望。(03年10月、07年6月下降)
以上

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