大菩薩嶺 小金沢本谷~大菩薩沢


宮本 博夫

日程:2012年8月14日~17日
参加者:坂口、宮本
←写真:小金沢本谷の渓相

<行動記録>
 今回の夏休み、関東支部(自称)は南ア大井川倉沢で計画、例年お盆は天候に悩まされているので天候不良に備えて山域違いの北アも上越も計画を用意していた。しかし連休初日から不順な天候が続き、出発を3日も遅らせてもどの沢にも入れる天気にならない。仕方なく天候が安定している近場の大菩薩の山で計画し直した。この辺りではスケールの大きな谷でそれなりに充実した沢登りになった。1泊2日で計画したが丸3日かかってしまう。

 8月14日 天候不良でなかなか出発できなかったため、坂口さんにはあらかじめ茨城から神奈川の宮本の家に来てもらっていた。菅野さんは休みが合わずに残念ながら今回は不参加。14日昼過ぎに計画見直しを決断して、資料や計画書を作り直して夕方やっとこさ出発。買い物込み3時間くらいで現地に着き、遅い晩飯をとる。ゲート前の小金沢公園泊。

 8月15日、晴れ。出発準備をしていると次々と車がやってくる。ここ葛野川(小金沢)は釣り名所でもあるので、まさか釣り人(いや、釣りはもっと早いです)と思うと、工事の作業員を乗せた車だった。地図によると大菩薩沢出合い付近に「葛野川地下発電所」と書かれている。後でわかったが、東京電力の大規模な揚水式発電所があって、拡張建設中のようだ。
 出発地の公園横のゲートをくぐり林道に入る。すぐに山腹にでかいトンネルが開いていて作業員を乗せた車が次々に入って行った。トンネルからは非常に涼しい風が吹いてきて気持ちがいい。このトンネルが遥か先の地下発電所に通じている。林道を20分ほど歩いたところで沢支度を整え、小沢を下って小金沢本谷に降りる。ネットの記録にもあったが、この谷は工事の残置物、廃材が非常に多いのが残念。
 しばらく河原歩きし、最初の滝;鶏渕が出てくる。巨大な釜を持つが大量の砂利でほとんど埋まり、写真で見る往年の迫力はない。左壁に簡単に取り付いて越す。その後もやや散漫な間隔で大淵と小滝が現れ、泳ぎも交えながら進んでいく。遡行図では50m淵、40m淵があるのだが、50mのほうは埋まったらしく、どこだか全くわからなかった。40mのほうは部分的に泳いで越す。7m,6m滝と続く滝場は巨大な淵と釜と側壁を従え、登れないので巻いていく。
 次に側壁なしの明るい4m滝が出て登れる。このあたりで夕刻になってきて幕場を探しながら進むが、基本ゴルジュ地形で泊まれそうもない…と思ってたら、右岸少し登ったところが樹林の中の広い台地上になったところを見つけ、この日の幕場に決めた。特に悪いところはなかったが、今日は目標の2/3くらいまでしか進めなかった。

 8月16日、晴れ。今日もゴルジュ中に淵と小滝が続く谷を水にどっぷり浸かって進んでいく。次のポイントは「六人移り」というところで、一体なんだろうと思っていたが、やがて見事なインゼルが現れ、どうやらこれが六人移りらしい。インゼル(中州)はだいたいゴーロ状だが、ここは岩床になっているのが珍しい。
 次に深い釜を持つ不動ノ滝7m。不動ノ滝はあちこちの谷で見られる名前だが、ここもいかにも難攻不落といった感じの豪壮な滝で右を巻く。大きな滝以外は淵と小滝の連続で、泳ぎの連続で越していく。やがて当初予定より半日遅れて13時頃大菩薩沢出合いに着く。ここで大菩薩沢から釣り終わって戻ってきた釣り師に会う。彼らはマミエ沢のほうに行き、うまいことすれ違いになった。
 大菩薩沢は今までと違い水量が非常に少ない。しかし両岸非常に高いゴルジュが続く。側壁が深くえぐれた魚留滝7mは右から大きく巻き、最後は懸垂で降りる。少し進むと両角が付いたままの鹿の頭蓋骨が落ちていて、記念写真を撮った。次に2段15m滝。登れそうもないのが実は流水中を登れるらしいが、寒くなってきてしまい、通常ルートで巻く。右から大きく高く小尾根の上まで巻くが、急斜面でよくなかった。ここも最後は懸垂下降を要する。
 結構時間を食い、谷に降りたらもう17時半。幕場を見つけねばならないが、すぐに次のゴルジュ帯が出てきてしまう。ここに突入すると途中で日が暮れてしまうので、この辺で何とか泊まり場を見つけなればならない。ちょうど砂利堆積台地があるのだが、高い壁の真下で落石リスクが高過ぎる。他は釜の真横の雨が降れば直ちに水没しそうな1人用河原、斜面を少し登って座ってビバークなどまともな場所なし。色々考えた結果、砂利堆積台地の一部は低い壁が張り出して高い壁からの落石を避けてくれそうな格好になっており、覚悟を決めてそこに寝ることにする。二人が十分に寝られるスペースで、結果的には快適に眠れた。この日は流木が豊富にあったため、久しぶりに焚火をした。信じられないことに2年ぶり。やっぱり焚火はいいです。

 8月17日、晴れ後雷雨。相変わらず遅い出発。まず目の前の釜を泳いで小滝に取り付き、釜と小滝が連続するゴルジュ帯に突入していく。楽しいところだ。最後の4m滝はでかい倒木が釜にささり、ルートをふさいで邪魔だったが一方で手掛かりにもなり、とにかくも無事に越せた。この先でゴルジュも終わって両岸開けて、この辺であれば泊まり場はいくらでもあった。途中5mの滝を登って二俣に着く。
 本流は右だが、我々は下山する林道に出るため、左俣に入る。右俣を少し登って偵察するが何も出てこない。左俣は出合いから小滝が続いてなかなか楽しい。高度100m登ったら更に左の支流に入る。地形が緩いところを調べると踏み跡を見つけ、これをたどって間もなく林道に出る。
 目の前に小金沢山トンネルという新しく長いトンネルが開いている。この頃雨も降り出したのでトンネルに入って雨をしのぎながら靴を履き替え下山の支度をする。林道に出たとたん、例によって小アブの猛襲で非常にうるさいが、幸いトンネル少し奥に入ると寄ってこなくなった。
 この後は長い長い林道歩きで出発地に戻る。一旦雨が止んだが再び雷雲がやってきて土砂降りになった。1時間もすると雨足は弱くはなったが止むことはなく、最後までずっと降られた。途中東電の発電所施設のひとつを通過するが、どこかレトロな感じでウルトラマン時代のレーザービーム発生装置か何かを連想させた。暗くなる頃ようやく帰着。朝、遅出なのも悪いのだが、それにしても2日のつもりが丸3日になってしまい、最近ペースダウンがひどくなってきたと思い知らされた。

 小金沢本谷、大菩薩沢は比較的近場にありながら、下山ルートがないのがネックで今まで見送ってきた。しかしそれは30年前の話しであり、調べてみれば現在では林道が延びてトンネルも建設されたため、車まで戻るのは容易になっていた。電源開発など進んでいるものの谷沿いには自然林が残り、スケールが大きく泳ぎが十分楽しめる良い谷である。

<コースタイム>
8月15日;小金沢公園出発7:50~入渓9:00~4m滝の上・樹林帯幕場16:30
8月16日;出発7:40~大菩薩沢出合い13:05~ゴルジュ帯前・壁下台地幕場17:45
8月17日;出発8:00~二俣(右俣偵察、休憩)10:55~11:55~1330m地点沢離れる12:40~林道・トンネル13:50~出発地帰着18:40

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