夏合宿を終えて


田房美穂

入会してから2度目の夏合宿。前回剱の下りでバテたので,今回は余裕をもって登りたい!そんな気持ちで,岩登り教室や三倉の山行などできるだけ参加して体力と技術の向上を目指していました。しかし,今回の合宿は「北鎌尾根」。一筋縄ではいかないぞと思っていました。HPなどをみると,なにやら大変そうな予感・・・。出発前の仕事のばたばたもあり,やっぱり今回も不安を抱えての出発となりました。
朝10時に横川駅集合。車で一路長野へ。車の中ではほとんど寝てました。順調に豊科へ到着。車から見える常念岳がきれいでした。中房温泉までタクシーで移動。テン場でテントを張り,食事を済ませ早々に就寝。途中,暑くてシュラフが耐えれなくなりましたが,皆さんシュラフを下敷きにして寝ていらっしゃったので,見習って寝ることにしました。
翌朝,川沿いをうろうろしていると地面から湯気と硫黄の香が。やっぱり温泉ですね。河原で田房には素晴らしい拾いものをしました(何かは内緒です)!
朝も早くから続々と登山者が。さすが表銀座。みんな山に登るのですねぇ。合戦尾根は三大急登ということで心配でしたが,名越さんのゆっくりだけどすたすたペースで,きれいな登山道を快調に登ります。合戦小屋に到着して休憩。そこには冷たいスイカが・・・。おいしそう,でも合宿・・・。あんまり見ないようにしていましたが,吉岡さんの「ワシ500円だすけー買ってこい」で結局購入。赤いところは全部おいしかったです。しっかり休んだので,燕山荘までまた黙々と登りました。稜線に出るとくもって何も見えません。風もふいており寒くなったので上着を着て,また稜線を黙々と歩きます。この辺で寒さの影響か,少し頭痛と意識がぼーっとしてきました。1時間経っても休憩なし。いつ休むのかなぁと思いつつ,どんどん歩いてしまいました。やっと1本取り,行動食を口にしてちょっと元気になったところで,また歩きます。大天井ヒュッテをこえて,貧乏沢の入り口に到着。短い藪の後に長いガレ場が。どこを歩いても崩れそう。ビビッて下りていると,名越さんが「わしの友達がガレ場で岩なだれを起こして死んだ。」などと言われるので,これは一つも石を落とせん・・・と思い,ますますビビッてへっぴり腰になりながら下りました。今回の怖いところ第2位ぐらいの緊張感がありました。何とか石も大きくなり,ちょっとは安心して下りれるようになると,余裕がでたのか,石の種類がいろいろあるのを楽しみながら下りられるようになりました。緑や赤の岩があり,広島では見られない貴重な石もあるなぁと思いましたが,拾って運ぶ余裕は無し。しっかり目に焼き付けておきました。長い緊張する下りが終わると,やっと天井沢に到着。1日の行動が終わりました。
2日目,今回の山行のメインとなる北鎌です。北鎌沢右俣の岩場をどんどん上がっていきます。階段を上るようにおもしろいほど高度を稼ぎ,3時間ほどで稜線へ。ここまで雨がぱらついていたのですが,やっと晴れ間が。遠く大天井岳や常念岳,反対側には水晶岳や硫黄尾根,野口五郎岳などがみえました。進行方向にはたくさんの凸凹が。独標がひときわ大きく見えます。先はまだまだです。去年の池の平山から小窓のような道をどんどん歩いていきます。途中から岩稜帯になり,道のような道でないような所を名越さんについてひたすら歩きます。これがおもしろい。去年なら怖いばかりだったと思うのですが,きわどいところをしっかりスタンスとホールドをきめて通過しました。岩登りをちょっとやっていてよかったと思う瞬間でした。そうこうするうちに目の前に大きな槍ヶ岳が。近いようで遠い。やっと北鎌平に到着。あたりはすっかりガスって何もみえません。ガラガラだった石がだんだん大きな岩塊になり,どんどん登ると槍ヶ岳へ。名越さんが先に行けというので,5メートルほどの岩の塊を登ると,ほこらがあり,槍ヶ岳山頂です。誰もいないし,風も強い。寒い。何も見えない。写真を撮ってもらって,即下山でした。冬合宿の時に登りたいと思った槍ヶ岳,寒いという印象だけになりました。これで景色がよかったらなぁ。楽しみは次回にとっておくことにします。でも,一日歩いてきた行程を思うと,しみじみするものがありました。寒い中,槍ヶ岳山荘ではテン場がなく,殺生ヒュッテまで下りることに。テントを張って食事。いつもよりたくさん食べることができました。
翌朝,曇りの中テントを撤収して出発。今日は穂高まで縦走です。天気は霧と風。寒い中黙々と歩きました。飛騨乗越,大喰岳,中岳,南岳と起伏のあまりない緩やかな縦走路を行きます。とにかく風が強い。南岳をこえると大キレット。看板があり「悪場です!」と主張されています。気を引き締めて雨が降らないよう祈りながら黙々とキレット下部まで下りていきます。途中の鉄はしごが冷たい。でも手を外すともちろん落ちてしまいますから,慎重に。岩も湿っており,滑らないよう気を使いながら歩きました。稜線は切れ落ちており,天気が良ければものすごい景色と高度感があるのでしょうが,よくわかりませんでした。飛騨泣きでは,風に吹き飛ばされないようにだけ考えました。ここを通過したら,後は北穂高岳への登りです。あまり人もおらず,ずんずん登っていきました。1時間ほど格闘したところで,「北穂高岳200m」の文字が。これは標高なのか,水平距離なのか?悩みながら登っていくとひょっこり北穂高岳山荘へ。これで今日の登りは終わりです。山頂で写真をとって後は南陵を下りました。雨が降ってきたので,滑らないように気を使いました。涸沢のカラフルなテントをみると,穂高にきたなぁと感慨もひとしおでした。引っ張ってきてくださった吉岡さん・名越さんに感謝し,よく歩いた自分にも感動しながらの下りとなりました。
翌日は雨で沈澱。合流した皆さんと歩く機会がなくなってしまいました。次回に期待です。最終日,皆さんを見送った後,パッキングをして下山です。吉岡さんととにかくとばして黙々と歩きあっという間に下界におりました。途中,屏風岩・明神岳などを横目に見て,これにいつか登りたいと感じました。
今回の合宿は,とにかく荷物を軽くしたことで体力的に余裕も生まれ,楽しいものとなりました。食料係も前回より知恵を使ったので,少しはおいしいものを提供できたのではないかと思います。児島さんが合宿までのプロセスを大切にしたいとおっしゃっていましたが,実際,合宿までに積極的に山行に参加したことが全部生かされたような気がします。穂高のやまなみを見て,次に行ってみたい山のイメージが広がりました。またみんなで穂高に来たいと思います。その時は天気がよいといいなぁ。皆さん,お疲れさまでした。

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