個人山行感想 大峰山脈七面山 十津川・旭ノ川中ノ川 5月2日~5日


田房美穂

 例会山行の高見川アイゼンワークのときに、大前さんから個人参考のことを聞いた。春には残雪を追っかけるべきだと思ってはいたけれども、今まで「南紀の沢はいいよー」と洗脳されていた部分もあったので、あっさりこのゴールデンウィークは沢にいくことに決定。やっと念願かなって大前さんと沢に行くことができる!とうきうきしていた。
 出発当日の昼まで仕事をしていたこともあり、車に乗っても気持ちが切り替わらない。お柳さんと合流。途中警察とご対面をしたりしながら一路奈良県へ。峠の道の駅で宮本さん・菅野さんと合流した。初めてお会いする方なので緊張したけれども、いい人そうなので(実際とってもいい人だった)安心。特に、会報などから宮本さんはブチ年をとっている人だと勝手に思っていたのであまりの若さにびっくり(口にはださんかったけれど)。
 翌朝、ガスの中目覚めるときれいな緑の山中にいて、「あー山に来たなぁ。」とここに来て始めて実感する。この日は遅い出発となった。車で取り付きまで移動している間にガスも晴れ、青空の中に新緑が映えるすばらしい天気に。車が河床に近づくにつれ、切り込んだ谷と深い山々が私たちを迎えてくれた。車の回送を終え、つり橋を渡って素行開始。初っ端に川原の石ですべってこけてしまい、ビビリモードに入ってしまう。すべての石が田房を拒絶しているように感じて足が動かなくなってしまった。あまりに遅れ気味になったので、宮本さんが心配して荷を少し取ってくれた(まじめに軽量化してなくて後悔)。なんか悔しいような気分にもなったが、荷が軽くなった分体も軽くなりだんだん調子がでてきた。最初の滝は落ち口のところが滑りそう。宮本さんが突破してロープを頼りにじんわり渡る。その後地獄滝(40m)。落ち口の釜のところが不思議な形をしており、水量も多く圧巻。到底近寄れない。高巻きをして進むと次は極楽滝(35m)。地獄滝と比べて明るい感じ。ガリーを高巻く。ワンポイント落ちるとやばそうな所があるのでロープを出す。その後、滝・十字峡を越えると牛鬼滝。滝と滝に続くゴルジュを高巻く。下り口で5m程懸垂。河原を歩くとモジケ小屋へ。予定の1/3もいっていないのに既に5時。もう一時間残業をすることになる。きっちり1時間あるいて適当な河原で1泊。河原を整地して、たき火・食事の準備をした。夕食は大前さんスペシャルタイ風チキンと親子丼、広島県産イワナ。たき火の火に囲まれながら川のせせらぎと夜の静寂さに身を浸し、おいしいお酒をいただきながら夜はふけていった。
 遡行2日目。昨日標高にして200mしか登っていないことに皆さんショックを受けている(なにしろ、取り付きと山頂との標高差が約1000m以上!)。この日初めて腰までつかって淵をへつり、人がやっとくぐれる隙間を大前さんが窮屈に感じたのか外にでてどぼん。これは冷たそう。小さくて良かったと思ったのもつかの間、これに続く廊下を超えるのにはどうしてもリーチがいる。大前さんは足の長さとバランスをいかして軽々クリア。お柳さんは果敢にチャレンジしてどぼん。田房は宮本さんに手を引いてもらって何とか突破。やっぱり足は長いに限ります。その後、滝やナメを越えて進むと40mの黒滝へ。まるで大きなホールにいるよう。これを作った時間を考えるとなんだかうっとりしてしまう。滝を右手に巻き、小滝をさらに巻いて斜瀑半分巻きつつ登ると緩やかな流れの黒ナメ八丁。ナメはいいぞと聞いていたので「このことかぁ」と感慨深く歩く。実に楽しい。軽快にナメを抜けると水量が少なくなり、傾斜がきつくゴーロ帯となる。途中の水場で休憩をした後、最後の登りにかかる。岩がだんだん大きくなり、崖なんだか岩の隙間なのか分からないところをあがる。途中可憐なピンクのサクラソウに慰められながら少しずつ高度を上げていく。本当に岩登りなんだか木をつかんだジャングルジムごっこなのだか分からなくなるが、着実に詰めている感じ。気温も上がり水分もとれず足場も悪くうんざりする。ぼーっとしながら登っているとガレ場になる。その後シャクナゲの枝の間をくぐって登り切ると丈の低い笹の草原にでる。風も当たるようになり、景色も良く、体温の上がった体には実に気持ちがいい。縦走路にでると、装備をはずして笹の絨毯に横になる。しばしぼーっと日の中で佇んだ。七面山山頂はすぐそこにあり、七面山のピークの一つである大ノ頭は本当に地の底に落ちるように切り立っている。2つのピークを踏んで大峰山山脈主稜線までの道をすすむ。広島の山とは違う感じ。明るいカラ松の林に苔の絨毯が広がり、その間を緑の植物が置物みたいににょきにょき生えていた。道もあるようでなく、テープを頼りに植物の上をやんわり踏みながら進んでいく。景色を楽しみながら、遠い道のりをのんびり歩いていくと小ピークを越えてコルについた。テントが数張りあり、主稜線の道に入ったようだ。少し進んだら立派な山小屋があったので、そこで1泊とする。水も何とか涸れずにでており、宮本さんの特製ミートソースビーフンとサラダなどをおいしく頂いた。外国人カップルの邪魔をしつつ、小屋中に響き渡る音楽にもめげずに、小屋でぐっすりと眠った。
 3日目。あとは主稜線をたどって下山するのみ。東京組がいるため、どうしても昼には下山しなければならない。朝6時出発。縦走路はとてもよく整備されておりまるで高速道路みたいだった。たくさん人と(沢と比べるとだけれども)すれ違いながら、昨日山頂を踏んだ七面山の断崖絶壁をみた。「名越に教えんとなぁ~」とつぶやく大前さん。孔雀・釈迦ガ岳などを踏み、昼に駐車場へ降り立った。
 天気も良く、「3日間山三昧」と言う感じで、本当に山の中で、文句なしに何も考えず、山しか感じずにいた幸せな3日だった。沢はいろいろあって実に楽しい。この一言に尽きるなぁ。ご一緒して頂いた、大前さん・宮本さん・菅野さん・お柳さん、ありがとうございました。また、連れて行ってください。
(追伸)奈良県のイモリ君達は広島のイモリ君達と仲良く元気に水槽の中を泳いでいます。

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