個人山行 富士山(富士宮ルート) 三谷和臣


三谷

参加者:吉村
月日:5月18日~20日

<行動記録>
静岡県側の富士宮ルートから富士山を登った。ニ年前のレーニア山のトレーニングのときから一度は雪の富士山に登ってみたいという思いが、今回やっと実現した。もともとは、今年予定していたカナディアンロッキー遠征のためのトレーニングが目的だった。
最初は冬富士を目指していたが、相次ぐ事故により危険な山であると認識を改めて、春富士を計画することにした。
計画を立ててみたものの、週末は雨予報である。何度も予想天気図を確認しながら検討した。単純なことだが雨ならば中止。あとは、雨でも期間内に天候回復の見込みがあるかどうかである。幸い朝には前線が通過しそうなので、前線の通過に合わせて登山を開始することにした。春合宿に続き、今回もギリギリの選択だった。
吉村さんの車で金曜日昼に広島を出発。新東名の掛川パーキングエリアで車中泊とした。深夜になってかなり激しく雨が降り、不安な一夜を過ごす。
翌朝、雨は上がっていた。時折晴れ間がのぞくものの、寒冷前線の影響で雨雲に覆われている。天気の分かれ目である気団の境が見られる。とりあえず、富士山五合目へ向かうことにした。濃い霧に覆われた富士山麓を走る。視界は十数メートル。天気は回復傾向のようだが、雨上がりの森は湿気が飽和状態になっている。現在位置もよくわからず、ナビに導かれて有料道路へ誘い込まれしまった。富士山麓のドライブが今回の核心だった。
標高が上がるに従い、雲が切れて富士山の全容が現れた。何とか五合目の駐車場に着く。シーズン中は交通規制により、シャトルバスでの移動になる。
さほど寒くはないが、風は強い。見える範囲では登山道に雪は無さそうだ。登山口のゲートを越えて歩き始める。
赤茶色の石ころの散らばった道を歩く。この時季は落石の恐れがあるため、ヘルメットをかぶっておく。
あまり面白くない単調な道である。それ
だけに精神に応える。宝永火口の縁には、数名の登山者が見える。時間に余裕があれば、そちらにまわってもよかったかもしれない。来年にも噴火すると予測する専門家もいて、今回がラストチャンスになるかもしれない。この規模の噴火が起こると東海、関東地域は大変なことになる。
円錐状に見える富士山も、顕著ではないが、尾根と谷がある。谷は風よけになるが、尾根に上がった途端に強風にさらされる。果たして頂上まで行けるだろうか。突風によろめきながら不安が尽きなかった。
覆われていた雲が徐々に晴れてきた。眼下に駿河湾や伊豆半島まで見渡せて気分を紛らわせてくれた。
意識してゆっくりしたペースで進む。ちょうどよい間隔に小屋があるので、こまめに休憩をとる。昔は山に行く度にしんどい思いをしたが、きっとオーバーペースだったに違いない。
小屋の看板などはすべて取り外してあるため、何合目かはわからない。高度計だけが頼り。唯一看板のある8合目までやってきた。すでに3,200mは越えている。頂上は見えているが、あと500m以上登らなくてはならない。
溶岩流の固まった岩場を登り詰めると、9合目の小屋がある。風も収まってきて、群青色の空の下に鳥居が見えている。
そこへ、トレールランナーが駆け下りてきた。9合5勺目で引き換えしたそうだ。雪の残る頂上までは難しいと判断されたようだ。雪山装備のない単独行者も引き返していった。

9合5勺目の小屋で、雪上歩行に備えてアイゼンを装着する。ここより上、ルートは判然としないが、雪の斜面をトラバース気味に登り、最後岩のルンゼに入って行くようだ。
傾斜が急なので、雪が凍っているときは要注意である。残雪期とは言え、アイゼン・ピッケル必須である。雪は柔らかいが、慎重にステップを切りながら登る。遮るものがないので、滑ると止まりそうにない。なるほど、ここが富士山の恐ろしい罠なのであろう。
ペースを押さえて登ったが、3500mを越えると、脈が速く心臓の鼓動が高鳴っていた。特に雪上歩行は負荷が高くなる。しかし、この感覚が心地よい。夏の富士山とは違って、今回は良い経験をした。何とか頂上のお宮までたどり着いた。鳥居が雪で半分隠れている。火口の縁から見るすり鉢は絶景だった。しばらく景色を楽しむ。時間の関係で剣ヶ峰は省略した。

夕方までに下りる必要があるので、早々に下山を始める。気温は思ったほど上がらず、雪は安定していた。あとは、石と砂の道を足を痛めながら下る。
無事駐車場に戻る。標高差にして1300mくらい。しっかり歩いた気がするが、地元の人にとっては日帰り登山の範疇だろう。
登山口から頂上まで数珠つなぎのシーズン中とは異なり、静かな山歩きを堪能することができた。
地酒とアテを買って新静岡サービスエリアに向かう。サービスエリア内にあるコインシャワーでスッキリして、ささやかな打ち上げをした。地ビールは二人の口には合わなかったが、静岡の地酒はおいしかった。帰路では、すでに次の構想も浮かんでおり、山旅は尽きることがない。

<コースタイム>
5/19 富士宮五合目登山口9:20→13:00九合目→14:10浅間大社奥宮→17:30