丹沢 鳥屋待沢右俣


宮本博夫

日程:2012年6月30日
参加者:宮本 (会員外)宇田

関東支部(自称)よりお邪魔いたします。先日行った丹沢の沢で印象深いというか記憶に残ることがあったのでご報告。
会社同僚と一緒に鳥屋待沢という沢に行った。この沢は丹沢山地の前衛の三峰山にあり、我が家から最も近場の山(沢)で自宅から30㎞未満、1時間もかからずに着く。にもかかわらず今回が初めての遡行だった。丹沢は近年、山ビルが大発生して深刻な被害が出ているが、鳥屋待沢のある清川村は特にヒルが多いとされるところだった。そこでこの沢ヒルが活発ではない春先や秋に計画していたのが今まで流れ続け、結局初夏に遡行となってしまった。

 初めに登山口(煤ヶ谷)に寄ると山ビルファイターというヒル避けのスプレーが置いてある。上下の服にたっぷりとスプレーする。遡行準備をするが、だいたいこういう動きが止まった時にヒルがくっついてやられてしまうので気が気でなく、落ち着かない。幸いこの時はまだヒルは見なかった。
 最初は沢沿いの作業道を進む。湿っぽい草むらで落ち着かなく、急いで歩く。すぐに大きな堰堤の上の広い河原に出る。ヒルはいそうもないところで気持ちが落ち着く。ここは緑がかった石がたくさん落ちていて、きれいなのはないか探すが形が整ったものはなかった。河原は大丈夫と思ってたら足元にヒルがくっついている。え~ここでもう?先が思いやられる。
 一方、沢のスケールは意外に大きい。やや散漫な間隔で小滝が出てくる。こじんまりとした釜や渕(丹沢では貴重)があるが、通過に問題はない。遡行中はヒルがくっついていないかしょっちゅうチェックし、取り除かなければならない。途中10m強の大滝あり。下部は頑張れば登れるかもしれないが上部はツルツルなので草付きに逃げないとならない。草むらに入るとヒルにやられてしまい危険なのであきらめて巻く。もうヒルが気になって遡行に集中できない。大滝以外はほとんど登れ、3時間ほどで二俣に着くが休むとヒルにくっつかれそうで、そのまま左俣を進む。
 左俣は水量少なく涸れ沢に近い。小滝が出てくるが、ちょろちょろ水流。その割に滝はよく浸食されている。すぐに右岸側がコンクリート壁のように真っ平らな壁になったところに着く。マク岩と呼ばれ、この沢の名物のひとつになっている。マク岩見物後、二俣まで引き返して右俣に入る。
 右俣は出合いから滝が連続し、水量も豊富で左俣とは比べ物にならないほど立派。上流に行くほどゴルジュが深くというか鋭くなり、その中にC.S滝が点在している。この頃になってロープの出番。ビレイをして動きが止まるとヒルにくっつかれそうで気になったが、上流部では不思議とヒルを見かけなかった。何度か沢が分岐するがだいたい右をとり、水も無くなる。源流部のC.S滝はA0を要し、本日の核心部。これを越してまたやっかいなC.S滝が出たら面倒だなと思ったが、そのまま詰めになり登山道に出る。
 ここで靴の履き替えをして虫よけスプレーをたっぷりかけるが、登山道に出たとたん、すぐにヒルがくっつく。三峰山頂上方面に少し登って三峰山を確認後、下山にかかる。下山といってもしばらくは稜線上で高度が下がらず以外に長い道。登山道はヒル密度が高く、年中ヒルチェック。とってもとってもまた足元にくっついている。下るにつれ、ヒル密度は濃くなっていった。登山口付近は凄まじく、道にばら撒かれているかのようだった。ず~っと気を付けていたが一匹かまれた。同僚は何か所か吸血されてしまった。ヒルにくっつかれても吸血されるまで多少の猶予があり、だいたい取り除けたのだが、虫よけ薬が少しは時間稼ぎの役に立ったのかも。

 鳥屋待沢は丹沢としては秀逸で特異な存在の遡行価値の高い沢だという感想である。ヒルのおかげで相当神経をすり減らされたが、ヒル以外はなかなかよい内容。丹沢といえば滝登りは多くても釜などほとんどない荒削りなガラガラ感があるが、ここはよく侵食され磨かれた谷で、流程も比較的長く全般にスケールも大き目、ゴルジュもそれなりにあった。苔や壁に生える緑も美しく、奥多摩のようでもある。これが丹沢の奥山でなく、下界に近い前衛の山というのが非常に興味深いところ。入渓地点の標高は185mしかなく、終了は800mくらい。
 にもかかわらず遡行者がいないのはヒルのせいでしょう。この時期の丹沢で遡行者がいないのは考えられないことである。この日のみならず、人の踏跡がなくて最近遡行された形跡が見られなかった。登山道に出ても誰も会わなかった。煤ヶ谷登山口から登り始めたら、あまりのヒルの多さに大抵の人は撤退するものと思われる。

<コースタイム>
駐車地出発 8:30~二俣12:00~稜線登山道15:20~駐車地帰着 18:30

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