個人山行 名越の慰霊を兼ねて北アルプス


亀井且博

個人山行(上高地―槍沢―氷河公園・天狗池―横尾尾根―南岳―槍平―新穂高温泉)
2017年8月11日(金)~15日(火) 吉岡好英、亀井且博、新山まゆみ(会員外)

名越が横尾尾根で逝ってから3年が経った。いつまで近くまで行けるか分からないので、行ける時にと思い、ブータンから帰って初めての北アルプス山行で名越に会いに行った。
8月11日 老トルには夜を徹して車を運転し、寝不足での山歩きは体に堪えるので、明るいうちに車を走らせることにして朝、廿日市を出発。お盆前で高速道路があちこちで渋滞しているので、渋滞を避けて山陽道―中国道―舞鶴道―北陸道経由で飛騨清見ICに走る。明るいうちに高山市内を抜けて今夜の泊まり場所を物色。あった!あった!平湯の少し手前の朴の木平駐車場。ここは乗鞍岳行きのバスターミナルで冬はスキー場の駐車場。無料で広々として、トイレ、水道、ベンチ、屋根付き喫煙場所も完備のわれわれにはうってつけの場所。はっしこにはテントも張れる。
8月12日 朴の木平駐車場から平湯に移動し、タクシーで上高地に入る。上高地で朝食後、登山届を提出して、さあ出発。バスターミナル、河童橋、小梨平付近は人が多くさながら街の雑踏である。順調に明神を通過し徳沢に。「名越なら必ずここでソフトクリームを食べるよな~」とのみんなの意見が一致して、美味しいソフトクリームに舌鼓。合宿では考えられん行動。3年前に何日も何回も滞在した横尾を過ぎ、一ノ俣出合を通過し槍沢ロッジに着く。ロッジでテント設営の申し込みと今夜のビールを仕入れ、発見地点を見ながら3人でしばし3年前の思いにふける。
前回、慰霊ケルンまで結構な時間がかかったと思っていたけど、ロッジから約5分と近かった。冬の雪のためか、あるいは歳を重ねると人間の背が低くなるのと同じ現象か、ケルンの背が少し低くなっていたので3人で積み直す。その際、今回の山行の吉岡さん、新山さんのもうひとつの目的である故大前会員の分骨と、吉岡さんの生前分骨(蜂窩織炎で膿と一緒に骨のかけらが出てきたので手に入れていた。)、新山さんの生前分骨(抜歯した歯。)を一緒にケルンに収めた。名越も賑やかになって喜んでいるだろう。酒とお花と線香とロウソクとタバコ(名越は私からしょっちゅう貰いタバコをねだっていた。)を供えて慰霊する。
その後、ババ平に向かう。ババ平のテント場はトイレ、水場が綺麗に整備されていた。しかし、テントが多くて張る場所に一苦労する。結局トイレへの通路傍に張ることになった。これで今回の最大の目的は果たしたので「明日もしも雨ならここから帰ろう。」などと、心にもないことを話しながら早めに就寝。
<コースタイム>上高地7:45―10:40横尾11:13―12:38槍沢ロッジ―13:04名越ケルン―13:59ババ平テント場
8月13日 朝から晴天で絶好の登山日和。槍沢ロッジから早めに出発した人たちも含め、槍沢の登山道は人また人で行列の状態。数年前に来た時に比べて登山者が多いのにビックリする。大曲を過ぎたところに雪渓が少し残っている。「例年この時期にはここで雪渓を見ないがな~。今年は雪が多かったのか、融けるのが遅いのかな~」と思いながら、少しずつ傾斜が増してくる登山道にガタッと歩くペースが落ちる。老トル3人組は平坦道や緩い傾斜ならなんとか誤魔化してそれなりに歩くけど、傾斜がきつくなるとペースが落ちる。歳を感じて情けなくなる。氷河公園天狗池への分岐点で人混みから別れて池へ向かう。こちらに向かう人はほんの少ししかいない。池へのトラバース道は高山植物のお花畑が綺麗な中を行く。槍沢全体が見渡せ、槍ヶ岳の穂先も綺麗に見えていて、気持ちの良い登山道である。

天狗池へのトラバース道から槍ヶ岳の眺め
天狗池へのトラバース道から槍ヶ岳の眺め

 

天狗池に映る逆さ槍を楽しみにしていたが、池はまだ半分ほど雪渓に覆われ、おまけに池畔に着いた時には槍ヶ岳の穂先はガスがかかっていた。これまで2回この地に来たけどまだ1回も見れていない。残念!!また次の機会に・・・(あるかどうか分からんけど)天狗池から横尾尾根のコルに向かう。横尾尾根のコルから見下ろす横尾本谷右俣最上部はとてもスキーで降りられるようなところではない。3年前の春に吉岡さん、新山さん他何名かが搜索のためこれを滑ったというが、アドベンチャースキーの領域だ。よく事故がなかったものだと思う。2人の山スキーの腕前は相当なものなのかな?横尾尾根のコルから主稜線までの標高差は約250mだけど、岩混じりで所々ハシゴや鎖のある登山道は危険ではないけど老トルにはきつい急な登りだ。テントを持っての山行はこれが最後かもとも思いながら、休み休み登る。体力の衰えを思い知らされて情けなくなる。3年前の冬にここを登ることができなかった名越を思いながら「お前は同い歳なのに気力は若かったな!」と感心する。ようやく主稜線に到着。
ここで3人での相談になる。「今は丁度昼、これから槍ヶ岳に行くと、肩の小屋近くのテント場は既に満杯で設営ができないだろう。その際は殺生ヒュッテまで下る必要があり、槍平に下るには明日また肩の小屋まで登り直す必要がある。かなりアルバイトになるけど、そうするか、またはここから南岳小屋のテント場に行ってテントを張るか、どうしよう???」「槍平にも久しぶりに行きたい。南岳の西尾根も通ってみたい。」「槍ヶ岳を越えて殺生ヒュッテまで行くには体力的に相当辛いものがある。」「槍ヶ岳に行かないと日和った気がする。」などなど相談の結果、今回のリーダーの吉岡さんの決定で南岳のテント場に向かう事にする。南岳のテント場には比較的早めに着いた。テントを張り終えてからドンドンと人がやって来る。しばらくすると既にテント場は満杯状態で、傾斜した石だらけの場所にテントを張らざるを得なくなっている。早めにテント場に着いて大正解、大正解!!
<コースタイム>ババ平6:43-8:12天狗池分岐-9:07天狗池9:41-10:19横尾尾根のコル10:30-11:54主稜線-12:30南岳-12:45南岳テント場
8月14日 深夜から未明の雨で今日は雨具がいるかな?と思ったが、朝には雨も止んで、笠ヶ岳、黒部五郎岳、双六岳、三俣蓮華岳、鷲羽岳、薬師岳、白山が綺麗に見えている。今日は南岳西尾根を槍平に向かって下る。出発して少しすると、槍ヶ岳、中岳、北穂高岳、北穂滝谷、奥穂高岳、西穂高岳、乗鞍岳、御岳まで綺麗に見える。久しぶりの北アルプスの眺めを堪能する。西尾根は結構急な下りで長い。中部には所々悪い場所もあり、膝が弱っている老トル達はゆっくりと下る。雷鳥に出会いながら急傾斜を慎重に下る。下部は木の根っこと少し薮まじりでだんだんと暑くなってくる。ようやく槍平に着いた。ここも結構な人がいる。冬には何回も来たけど、夏に来たのはほとんど記憶にない。

南岳テント場下から槍ヶ岳を背に
南岳テント場下から槍ヶ岳を背に

 

新穂高温泉まではまだまだ遠いので早々に出発。滝谷出合、白出沢出合、穂高牧場と下りの道は花を愛でながら、写真も撮りながら順調に飛ばし、新穂高温泉に到着。到着5分前に雨がやって来た。雨具を使うこともなくなんとか下山できた。新穂高温泉からバスで平湯に移動し、温泉で汗を流した後、帰路に着く。途中東海北陸道のPAで寝て、翌日15日昼ころ廿日市に無事帰着。
今回の山行は天候に恵まれて、合計年齢200歳の気のおけないメンバーで、和気藹々としながら、当初の目的をなんとか達した楽しいものだった。それにしてもテントを担いでの山行は老トルにはきつい。とは言っても、小屋泊まりの山行にはなんとなく抵抗があるしで、複雑な心境を感じさせる。年齢とともに体力の衰えをおもいっきり思い知らされた山行であった。
<コースタイム>南岳テント場6:54-10:42槍平11:31―12:12滝谷出合-13:30白出沢出合-15:16新穂高温泉

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